表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/155

91話 ACT19-21

 強さとは。


 強さの捉え方は定義や価値観によって様々だろう。


 だが大枠で皆わかっている。強者が得られるモノは多い。生態系においては強ければ強いほど状況が大きく変わってくる。自分が理想とする環境を選べる機会が増える。だから、人間はおろか、生物の誰もが願うのだ。


 強くなりたいと。


 だが、強さを得るにはそれ相応の行動も求められる。強さの上で得られた環境は満足度が高いが、合わせて依存度も高くなる。なぜならその環境を気持ちよくないと思う生き物はほとんどいないからだ。


 そして人に限っては、強さで得られる環境が手を伸ばした先にすぐあるのであれば、さらに高みの環境を目指したくなり、行動する傾向は高い。


 よって強さの代償となる行動への負荷は、強さから得られる満足感と常に比例する。


 そこには時間との兼ね合いも発生してしまう。誰も一生を賭けてまで短期的には気付かない成長だけで満足する人間はいない。だからこそ努力と言う行動や言葉には、時間制限付きの環境変化や達成の見返りが必要となってくる。その見返りの結果に精神がついてこなければ、それまでの行動や努力をしてまで高みを目指す必要がないと判断し、向上心に対する行動は制御される。


 達成から得られる高揚とは別に人間を快楽に引き込む堕落は、逆に今まで高みを目指して制御していた者にとって反動となり、際限がなくなる可能性もある。


 マリアは純粋な力を求め続けていた。アイデンティティを兄に求めた彼女もまた依存型のタイプなのかもしれない。その依存性と焦りが環境や信念を選ばずに強さだけを求めてきた結果が、潜入や大胆な作戦への本人を導いているように見える。


 帰化プレイヤーまでなってしまったマリアは強さを求める本質があるからか、自分の意思や精神を支配される事を拒否反応として争った結果、今までの自分を完全に忘れてしまったサラとは違う。


 強さを得られるならと帰化プレイヤーへの変化をまさに進化として捉えるのであれば、それはマリア自身の意思となる。そう考えればマリアが過去の全てを覚えていて、サラが覚えていない違いに関しても理解はできる。あくまでシキが想定する仮定の域でしかないが。


「だからお前は、ガインにキルされた後に帰化プレイヤーになる事を受け入れたのか?」


 シキの指摘にマリアの表情が一変する。自分に何かを言い聞かせるように話していた表情は、痛いところを突かれ、その対象者に怒りの矛先を向けているような表情になった。


「言いますね、シキさん。シキさんから見て私は堕ちたように見えるのですか?」


 質問に質問を返すマリアだが、表情を見ていれば一目瞭然、シキが出した仮説の答えを導いているように思えた。


「ただの仮説だよ、マリア、お前は行動が直球すぎる。セリカやサラと比較しても帰化プレイヤーとしての受け入れ方が全然違うように見えるぞ。そう、それこそ純粋な力を求め、其の為の手段であれば選ばないムキムキ男の思考と同じだな」


 茶化すようにシキは、微笑を絡めてマリアに指を指す。


「シキさん、これ以上は余計なお世話です」


 その言葉を最後を再び目の前から姿を消し、シキの頭上現れたマリア。


「【速度上昇】(スピードアップ)2nd」


 【速度上昇】(スピードアップ)を2倍かけてきたマリア。振り抜いたマリアの右腕の鉤爪はシキの頭上を切り刻まんと迫る。だが、シキは右腕についている籠手でマリアの鉤爪を防ぐ。少しばかりの風圧を発生させて、再びマリアの詠唱が耳に響く。


「【速度上昇】(スピードアップ)3rd」


 シキの頭上から消えたマリアは目の前に現れ、両腕を外側から中に交差させシキを挟みかける。もちろんシキはこの攻撃も両腕の籠手で防ぎ、前蹴りでマリアを突き放そうとする。


 そこでも再び


「【速度上昇】(スピードアップ)4th」


 さらなる【速度上昇】(スピードアップ)にマリアのスピードは、シキですら安易に捉えられないほど上がってくる。前蹴りはもちろんマリアに当たりはせず、姿を消したマリアは再びシキの目の前の頭上に現れ右腕を振りかざす。


 だが


 シキはマリアの鉤爪目掛けて垂直に右足を蹴り上げる。その威力たるや、またもや大きな風圧が大空の雲をも突き抜けて、マリアの右腕の鉤爪は破壊された。そしてマリア自身もその反動で宙に放り出される。


 このシキの攻撃には、マリアはもちろんの事、ガインも驚かされる。


「小童めが、どこまで底が知れんのだ」


 ガインは思わずこ言葉が漏れた。


 ブーストにブーストをかけたマリアの【速度上昇】(スピードアップ)のパッシブと対等しうるシキのパワーとスピードには限界が見えない。


 しかし、シキも今回の攻撃に関してはそこまで余裕があったわけではない。自身のパフォーマンスを探りながら戦っていたのは確かだが、マリアの【速度上昇】(スピードアップ)4thパッシブスキルからの攻撃は、瞬間的に危機を感じ本気で反応をしたのは確かだ。


 このままマリアが【速度上昇】(スピードアップ)をブーストをかけ続けると、シキにも当然と余裕がなくなってくる。だが、そもそもパッシブスキルの掛け合わせはそもそも体への負担が大きいはずだ。瞬間的なスキルを増幅させる最大出力が及ぼす体調パラメーターへの異常よりも・・・。下手すれば、継続するスキル発動のパッシブスキル掛け合わせの影響の方が後々大きく響くと思われる。


 ただ冷静に考えてみれば、帰化プレイヤーが最大出力に近いスキル発動をしていても、その後何か体調不良を起こしているような姿を見ていない。何度も目にしているはずだ。


 シキは状況整理の中である一点の疑惑にたどりつく。帰化プレイヤーに体調パラメーターは存在しないのか?


 盲点だった。

次回も月曜日19時に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ