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89話 ACT19-19

「何をって?」


 圧を受けても何を動じないシキ。そのような小さな小細工に反応する領域にシキはもういない。自身に起きている状況を理解しているのか、いないのか、不敵に笑うシキにガインは苛立ちを隠せなかった。


「とぼけるな!!分かっているんだろう。貴様に起きている今の状況が、我々の状態とは明らかに違うのだと」


 想定外の状況にその答えを早く求めたく感情を露にするガインとは打って変わり、シキは高揚を穏やかに保つ不思議な感覚を全身で感じながら、溢れ出るエネルギーや浮き足出すような力の漲りに自分を抑える意識を向けた。


 ガインはそんなシキの変化を答えあわせするようにステータス確認する。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

シキ


キャラクターレベル ××


種族 ヒューマン


ジョブ 魔法拳士


ステータス

HP ××

MP ××

STR/Strength(物理攻撃力) ××

DEX/Dexterity(器用さ、命中率) ××

VIT/Vitality(防御力(物理、魔法両方)) ××

INT/Intelligence(魔法攻撃力) ××

AGI/Agility(俊敏性(回避力)) ××


装備 

武器   ××

盾    ××

頭    ××

体    ××

腕    ××

靴    ××

アクセ1  ××

アクセ2  ××


スキル


ウィザード職スキル

【魔法攻撃力上昇】 ××

【マジックアロー[魔法攻撃中ダメージ]】 ××

【マジックバリア[MPでダメージ吸収]】 ××


ソーサラー職スキル

【ファイアーボール[魔法攻撃大ダメージ]】 ××

【アイスウォール[氷のバリアでダメージ減衰]】 ××

【フロストボルト[魔法攻撃大ダメージ、確率で凍結状態付与]】 ××

【ブラッドマジック[MPの代わりにHPを消費して魔法攻撃]】 ××

【マジックスクエア[半径5m以内に仮装魔法陣を展開し、陣内で魔法攻撃を行った場合威力増加]】 ××


魔法拳士職スキル

虚影一閃(きょえいいっせん)】 ×× 

鎧袖一触(がいしゅういっそく)】 ××

心操身隷(しんそうしんれい)】 ××

飛拳燕圧(ひけんえんおう)】 ××

気炎万丈(きえんばんじょう)】 ××


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「な・・・、魔法拳士だと・・・、なんだそれは?」


 もちろん魔法拳士というジョブだけではない。見た事も聞いた事もないスキルが並んでいる。疑念が確信に変わる事実を目の当たりにしたガインは困惑した対応をさらに露呈した。


「さあな。ただ言える事は帰化プレイヤーではないって事は言えるぞ」


 絶対的王であるガインがうろたえているように見えた。シキ自身も少し驚いている。ステータスや武具がバグなのか表示されない事も気になるが、もはやイレギュラーがAH(アストラルホライズン)の中で起きているのだろう。評価、表示しきれないデータがあっても驚きは出てこなかった。そうでなければ"魔法拳士"などというジョブは現われるわけがない。


 シキの感情をトリガーとした新しいジョブに対する願いは、シキのステータスを多く変え、AH(アストラルホライズン)では存在しえない、上位職を越えた最上位職として魔法拳士というジョブが与えられた。


「ふ、ふ、ぬははは」


 先ほどまで、シキの進化に驚きやうろたえを隠せなかったガインは待たしても不適に笑い飛ばす。


「・・・、何が可笑しい?」


 ガインの突如の笑いに対して、問うシキだが、先ほどまでガイン言動に神経質なまでに反応していた時とは違う。ガインがどのような考えを持ってどのような行動に移ろうとも、今、シキに起きている状況から考えればさほど大きな事態でない。だからこそ不安はない。シキには余裕がある。


 そんなシキを見透かしているのか、ガインも先ほどまでの横柄に相手を小ばかにしたような態度ではなく対応した。


「いいや、なに、これだからAH(アストラルホライズン)は面白い。次から次へと我々の想像を超えた事象が起きるようだ。貴様にとっては自身にしか起きない事態だと想っているようだが、帰化プレイヤーたる存在が生まれた時もまさしく今のようの状況だった。常に進化しているのだよ。この世界は。今、この瞬間にしかない貴様だけの特権を味わっておくのもいいだろう。しかしな、それはわずかの間だけだ。その不明なジョブも不明なステータスもすぐに俺様が凌駕してやろう」


 おかしな話だと、軽く手を挙げ、暗黒騎士の仮面を被ったその頭をありえない、ありえないと左右に振る姿は、ガインの言葉とは少し意味合いが違って捉えられる。自身が上位に立ち、俯瞰した見解で対応をし続けてガインはようやく自尊心を保てているように見える。だからこそこの状況は、ガインにとって都合のいい解釈をすべきなのだろう。


 ガインの言葉が負け惜しみなのかそうではないのかは分からない。但し、確実に理解できた事はある。それはガインも認めた通り、この瞬間においては、シキにしか反応していいない事象が発生している。AH(アストラルホライズン)が意思を持った世界なのであれば、EG(エンペラーゲート)の誰かでもなく、ガインでもなく、シキが選ばれたのだ。


「楽しみだな、俺も進化した自分を早く試したくてしょうがないよ」


 シキの自信に満ち溢れた態度は、ようやく自己解釈できたガインをさらに苛立たせる。もちろんガインはそう悟られたくはなく、言動には表さない。そんなガインの心境を汲み取ってか、マリアが動き出す。


「ガイン、ここは私が」


 シキとガインの前に立ちはだかるマリア。ガインの忠実なる臣下と化してしまったマリアには、帰化プレイヤーではない帰化プレイヤーを超えたシキの存在をどう受け止めるのだろうか。

次回も月曜日19時に投稿します。

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