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83話 ACT19-13

「それを待っていたぞ!!セリカ!!【フェアマインド】、【ブラッドブロー】」


 セリカが願いと共に放った【ボムシュート・ブレイザーアロー】を嘲笑うかのように聞こえてきたのは、ガインの声だった。


 マリアの【エクスプロージョンバックキル】とガインの【リーサルストライク】のスキル同士がぶつかり衝突したその先からガインの声だけが聞こえてきたという事は、マリアはやはり駄目だったと意味するのか?


 不安がよぎる。だが、最後の希望をを放つセリカにとって意識を散漫させるような事象を起こしてはならない。集中しなくてはいけない。セリカは一瞬だけよぎった不安をすぐに切り替え、ガインに放つスキルへと意識を寄せていく。


 声が聞こえたのであれば、むしろその声の先に赤黒く燃えた巨大な刃【ボムシュート・ブレイザーアロー】の矛先を向け、その刃の先が寸分の狂いもなくコントロールできるよう意識を向ける事で可能性に掛けているマリアへの二次被害を防ぎたい。そんな集中力へと意識を寄せていく。


 そして、その声の主ガインはこのタイミングで改めて【フェアマインド】を発動する。ガインの状態を最強たらしめ、周りを状態異常に持っていくガイン唯一無二の最強パッシブスキルだ。


 しかしながら、この状況で【フェアマインド】の発動が、セリカには、ガインが正しい判断のように思えなかった。【フェアマインド】は、環境を作るに大きな時間を要する。ガインを包んでいる黒紫のオーラが大きな唸りをあげ、一面を黒紫のオーラで囲い込んでしまうほどの空間結界だ。どれだけ急いでも完成するには1-2分ほどかかる。今、このタイミングでまさに【クリティカルスナイプ】の状態を帯びた【ボムシュート・ブレイザーアロー】がガインの下に届くまで、どれだけ長く見繕っても3-5秒だ。


 なぜ【フェアマインド】を?

 

 セリカの疑問の答えあわせよりももちろん早く、セリカの右手掌によって作り出された黒い空間から飛び出す、まるで地獄で受ける炎のような赤黒く燃えた巨大な刃【ボムシュート・ブレイザーアロー】と流血を帯びているような【ブラッドアロー】のスキルを纏ったガインの大剣が大きく衝突した。


 ここでも大きな衝撃波が生まれる。セリカは【ボムシュート・ブレイザーアロー】を発動している右腕に大きく圧し掛かる負荷を感じる。だがそれよりもこの圧力を押しのけてガインの体に襲いかかれるような、後一歩の踏み込みで圧力を消し去れそうな印象を覚えていた。


 この感覚はいける!!


 だが、セリカが押し切れると思った感覚に違和感が出始める。この違和感は心すらも圧迫を起こす。セリカはMPを大量に消費し押し切った右腕がこれ以上先に押せない大きな壁のような圧を感じさせられた。それは考えたくなかった想定である【ボムシュート・ブレイザーアロー】がガインに届くその瞬間に導き出された【フェアマインド】と関連しているのだろう。


 【フェアマインド】が多少交わっている黒紫のオーラに包まれた大剣から発動されたスキルは、バーサーカーによる自身のHP10%を削る変わりに400%攻撃を発動させる【ブラッドブロー】だ。通常の【ブラッドブロー】ではこころもとなく致し方なく発動したものなのだろうか?


 【ボムシュート・ブレイザーアロー】がガインに届くその瞬間、中途半端に【フェアマインド】が交わった【ブラッドブロー】の大剣を大きく両手で斬り下ろすその動きはまるで、【ボムシュート・ブレイザーアロー】を迎えるにあたり不足している物理攻撃力のSTR/Strengthをカバーするようにも見えた。


 ガインを包んでいる黒紫のオーラは、【ボムシュート・ブレイザーアロー】と【ブラッドアロー】が衝突をしている時間に対して勝敗を決せられない結果に悪い流れを作っていくように増徴していき、あわせて大剣を包み始める。


「ぬおおおお」


 大きく打つかりあう【ブラッドブロー】の大剣と【ボムシュート・ブレイザーアロー】。大きな爆発を生むこともなく打つかりあう衝突の衝撃波は、段々とセリカの体全体に響いてくる。【ボムシュート・ブレイザーアロー】を前に押し進め【ブラッドブロー】を打ち破るためにも、セリカはさらにMPを注ぎこむ。伸ばしている右手の掌が大きな圧力が掛けられ右腕ごと吹き飛ばされてしまいそうだった。だが、これが最後のチャンス。ここは押し切るしかない。


 だが、このスキル同士のぶつかり合いの状況でセリカは一つの誤算に気付いてしまった。


 この【ブラッドブロー】は不完全なのだ。そして衝突しているその最中にも【フェアマインド】は完全体に向かってその形を構築し始めていく。それに伴って大剣を包んでいる黒紫のオーラも大きくなっている。


「く!!」


「残念だったなセリカ!!これで最後だ!!マリア共々ここまで俺様を苦戦させた事を誇り思え!!」


 そういい放ったガインの言葉に合わせて、黒紫のオーラが大きな唸りをあげ、一面を黒紫のオーラで囲い込んでしまうほどの空間結界【フェアマインド】は完成された。その中心部としての役割を果たす包まれた大剣は、すべての突き破るほど大きな唸りを上げていた。


 そう、【フェアマインド】は【ブラッドブロー】を帰化プレイヤー仕様ガイン版【ダークブラッドブロー】に持って行くための発動だったのだ。時間がかかろうとも発動さえしてしまえば時間と共に完成系へと近づいていく。だから発動タイミングは不完全な状態でも問題がなかったのだろう。


「【ダークブラッドブロー】」


 気がつけば【フェアマインド】を作る完全な結界環境が出来上がっている。大剣に包まれた大きな黒紫のオーラによって斬り下ろされた【ボムシュート・ブレイザーアロー】は見事に突き破られ、この世のモノとは思えないほどの大きな爆発を起こした。すべての希望や可能性を吹飛ばすようなその爆発は30mほど離れたセリカをも大きく包んだ。


 ごめんなさい。マリアさん、シキさん・・・。


 決死の覚悟で最高のコンビネーションと最高のスキル発動を起こしたマリアとセリカの戦いは、シキと戦った時に発動された【ダークリーサルストライク】をもはるかに超えるガインのスキル波動と、それに伴うダメージにより幕を閉じる事となった。

次回も月曜日19時に投稿します。

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