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79話 ACT19-9

「今度こそ、貴様等の最後だ。冥土の土産に最高の戦いを繰り広げやろう」


 マリアは、ガインの構えに応えるように軽いステップを刻む。


「【バックキル】」


 ガインの背後に現われ一発必殺のダガー攻撃を仕掛ける。この攻撃パターンは前回と同様だ。


「懲りぬか」


 ガインはマリアの突きを避け大剣を大きく振りかざし斬り下ろす。


 しかしマリアはまるで短剣を起用にこなすようなスピードで振りかって来る大剣に少しも触れる事なく、姿を消し再び背後に現われる。


「【バックキル】」


 【バックキル】の連続攻撃。一つ前の戦術だった近接攻撃【バックキル】と遠隔攻撃【ダガースロー】ダブルの繰り返しによる隙を狙い、最大スキルにて最高の暗殺スキル【エクスプロージョンバックキル】の連携攻撃に比べると、相手を倒すつもりがあるのかと疑ってしまう。


「ちょこまかと」


 マリアから繰り返される背後からの一発必殺ダガー攻撃。ただただ振り回されているように感じ怒りを覚えたガインは、大剣を持たない左腕を大きく振り払い、【バックキル】攻撃を受け入れてマリアへ攻撃を仕掛けしまうほどだった。しかしながらそのその甲斐もなく攻撃は空を切る。


「【バックキル】」


 マリアはそんなガインの怒りをよそに、繰り返し背後攻撃を狙い続けていく。無論、この攻撃の繰り返しでガインを倒せるなどと一ミリも思っていない。セリカがガインに仕掛ける【ブレイザーレイン】アンリミテッドの準備が整い、万全の状態で発動できればいいのだ。その戦術において【バックキル】連続発動は最高の時間稼ぎである。鎧にまとわれAGI(機敏性)が低いガインには、すばやい背後攻撃は対応ししづらい。大剣を振りまわるのはもちろん、腕や蹴りで攻撃を加えているが、空を切る場面が多くガインは苛立ち始める。


「この、小娘が!!」


 【フェアマインド】の黒紫オーラから溢れるうねりで覆われていた大剣は、その黒紫オーラと決別し、さらに大剣から離れていく。そして、ガイン、マリア、セリカを覆っていた壁のような黒紫のオーラは空気と共にその姿を消してしまう。


「【ブラッドブロー】」


 ガインはこの状況を打破すべく、基本職ファイター、上位職バーサーカーによる自身のHP10%を削る変わりに400%攻撃スキル発動、【ブラッドブロー】を放つ。バーサーカーの中でも強スキル発動に該当するスキルだ。それを今ここで発動させるほどガインは相当の苛立ちを覚えていた。


 ガインの放つ【ブラッドブロー】をマリアは当然ながら【バックキル】で交わし、さらに背後に着く。だがマリアの残影に空を切り地面に叩きつけられた【ブラッドブロー】の威力によって、マリアの繰り返しの背後攻撃が叶わない。


 【ブラッドブロー】が放つ巨大な威力により、周辺一体の地面は抉られ、その衝撃で吹き上がった岩石達は、四方八方の攻撃を仕掛けてくる弾丸のように散らばり、マリアに襲い掛かる。


「く!!」


 衝撃波と飛び散る岩石の弾丸によって吹き飛ばされたマリアは、次なる【バックキル】を打たない。距離が空きすぎていたのものあるが、そもそも目的としていた状況を作り出せたと判断した。


「よくがんばったわマリアさん。もう十分よ。次のフェーズに入ってしまって。【ブレイダーレイン】フルアンリミテッド」


 みればガインの周りには無数の黒い渦が散らばり、そこから顔を出している刃達が待ち構えている。その数たるや先ほどの【ブレイダーレイン】アンリミテッドからは比較にならないほどの黒い渦が格段に超えている。もはや黒い渦と渦の間の空間がないほどだった。


「ふん、悪くないな。これが貴様らの最大か!!受けてやる貴様等の全てを!!」


 【ブレイダーレイン】フルアンリミテッドから放たれる刃の嵐を、集中砲火して受ける瞬間、ガインが口にした詠唱の口元をマリアは見逃さない。


 【サンドオーバー】という言葉を口にする。大剣を振り回しながら降りしきる刃の嵐を受けるには、攻撃回避スキルを持つ【サンドオーバー】は最適な攻撃だ。しかしながら、なぜ、先ほど【バックキル】乱発時に【サンドオーバー】を使わなかったのだろうか。【エクスプロージョンバックキル】を受けた時、【サンドオーバー】によってその攻撃を回避し、有利に持っていったように。


 今度はマリア自身が、セリカによって作られた【ブレイダーレイン】フルアンリミテッドの攻撃で、【エクスプロージョンバックキル】の準備をしていく。以降、セリカの【ブレイダーレイン】フルアンリミテッドとマリアの【エクスプロージョンバックキル】の時間差組み合わせ攻撃は、ガインを倒すための今出来る最高の戦略となる。


「ガインのHPがあまり減っている気配がない。このままだと私のMP消費が高すぎて持たないわ。マリアさん、状況はどう?」


「セリカさん、今行きます」


 ガインは大剣を振り回し、時に【ダブルスラッシュ】を放ちながら、【ブレイダーレイン】フルアンリミテッドの刃の嵐を振り払う。もちろん全て振り払えるレベルの量ではない。相当数な数を刃を受けているが、想定しているダメージよりも低そうだった。


 そこへ再度ガインの背後に現われるマリア。ここが最大の山場である状況を作り出し、その瞬間たるや【ブレイダーレイン】フルアンリミテッドの刃の嵐はその豪雨を止め、ガインの対しての最大の見せ場を作る、はずだった。


「【バックキル】」


 マリアはここで本来放つはずの【エクスプロージョンバックキル】ではなく【バックキル】を発動させ、ガインはこの状況を察知したのか【バックキル】をすんなり受け入れた。【エクスプロージョンバックキル】ではないにしろ、そもそも【バックキル】自体も相手を暗殺するスキルだ。ガインのレベルを持ってしても、突きの当たりどころが悪ければ一撃でキルされてしまう。ただ、【サンドオーバ-】を口にしたガインにこの攻撃が大きなダメージを与えなかった。


 すばやく【バックキル】の攻撃を仕掛けてセリカの元へ戻るマリア。


「どうした?貴様等の最高は、こんなものではないだろう?」


「とんだ猿芝居ですね、ガインさん」


「何を言っている?」


「そうよ、どうしたの?先ほどは私達にとって最高のタイミングではなかったの?」


「セリカさん、違和感はない?」


 セリカはマリアの表情に何かを感じ取った。もちろん違和感を感じなかったわけではない。ダメージの量の少なさからガインは何かを仕掛けたのであろう。その仕掛けにマリアは気づいたからこそ、【エクスプロージョンバックキル】を仕掛けなかった、という展開であれば十分にうなづける。


 そしてフレンドチャットに通知が来る。マリアからセリカに対してだ。フレンドチャット機能はその名の通り会話をせずとも相手との意思疎通がとれる。こういったバトル時にはまさにうってつけだった。


《マリアさん、どうしたの?》


《チャットオンありがとうございます。あまり二人で黙っていると怪しまれると思うので、結論から先にいいますね。ガインは多分、上級職のジョブを同時に発動はできないみたいです》

次回も月曜日19時に投稿します。

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