72話 ACT19-2
「それで、セリカは、マリアじゃなくて、リンカのところへ行ったほうがいいと?」
「あら、ご名答。そうね。シーちゃんも自分で言ったじゃない。普通に考えれば。とか、迷惑になるだけ。とか。事の事態が。とか。」
「あ、いや・・・」
痛いところを突いてくるセリカ。ご指摘の通りである。
「言い訳を並べているだけで、サラさんのところへ、行きたいんでしょう?」
「言い訳っていうよりは、個人的な気持ちを優先しないほうがいいだろ。って事でだな」
「身近な大事な人も救えない人が、世界を救う事なんて、できないのでは?」
「お前・・、味方になっても、言葉巧みに人の心を持て遊ぶんだな・・・」
「ふふ。そんな事ないわよ。私の美しさに惑わされずに、ちゃんと自分の意思を持って、やりとりできているんだから、シーちゃんは大丈夫よ。それよりも今は、本質的な話をしているだけよ」
「美しさに惑わされずって、自分で分かってのその対応かよ」
改めてシキは思う。
今までの連中は、絶対セリカを騙しているほうじゃなくて、騙されているほうだろ!!
「あら、失言。まあ、いいじゃない。私が言いたいのは、どちらにしろ、リンカさんも、マリアさんも、単独では、サラさんやガインに勝てないわよ。っと言う事。それは貴方も分かっているでしょう?」
先ほどまで、散々とシーちゃんだのなんだのと驚くほどの距離感に近づいてきたセリカは、この重要なターニングポイントにて、"貴方"と言っているくる。
その切り替えの早さに、セリカが本質を突いてきている事を感じるシキ。
セリカの指摘の通りである。
三人でしっかり話しあってのバトル配置であったものの、リンカとサラの組み合わせの懸念はもちろんの事、マリアとガインの組み合わせも、決して順風満帆に行くとシキは思っていなかった。
だからこそ、マリアの下へいち早く向かうべきだと思ったが・・・。
「だから、尚更、マリアのところへ行くべきなんじゃないのか?」
「それで、リンカさんは見捨てる?」
さきほどまで、背を向けて距離を空けていたセリカが、今度はシキの本質を見透かすように少しづつ近づいてくる。まるで本当の意思を確認するかのように。
「いや、そういう」
「訳ではないかもしれないけど、時間軸を考えると、そうなる可能性は高いわよ」
「だったら」
「その為に、私がいるのではなくて?」
「え??」
「え??、じゃないでしょう。私と貴方で二人いるんだから、二手に分かれたらいいじゃない?」
セリカが敵対する立ち居地にいなくなったとはいえ、少し前まで、セリカにとっての味方だったガインとサラと戦うセリカの姿を想像していなかったシキは、セリカの発言に、ただただ驚いた。
「それは、お前、大丈夫なのかよ?俺の敵にはならない。っと思っているけど、だからって俺の敵であるガインは、お前にとっては仲間なんじゃないのか?」
シキのセリカに対する気遣いに、セリカの胸はぎゅっと突き刺さる。
本当、この子は・・・、どこまでいっても筋を通そうとするのね。
そんな想いをそのまま口にする事をセリカはしなかった。シキの優しい気遣いに甘えてはもちろん駄目。
「あら、気遣いだけは、大人の男性ね。そうね、確かにここで私が、リンカさんマリアさん側について、ガイン、またはサラさんと戦うのは、完全なる反逆行為ね。ただ、しょうがないじゃない。私は、貴方に付いて行く。って決めたんだから。貴方の味方は、味方ですし、貴方の敵は、私にとっても、もう敵なのよ」
「・・・」
「だって、私達、一心同体でしょ?」
そう言い、シキの付近まで戻ってきたセリカは、急にシキの腕に両腕を絡めて密着してくる。
「ちょ!!おい!!」
絡められた腕に感じる柔らかな感触と少し、心が惑わされてしまいそうになる香りに、己の何かと戦うシキ。
「本当、子供なんだから」
密着した腕から離れ、少しだけ後ずさるセリカ。
さきほど、シキと戦っていた時、彼に感じた、すべてを受け入れてくれる漢らしさ、リーダーとしての素質、世界を救う器の可能性。とても10歳も年下の男の子には思えない、頼りがいのあるオーラは、ひとたび、非戦闘シーンにおいては頼りない。セリカの一挙手一投足にアタフタしている可愛い青年。
このギャップもまた、きっと彼の魅力なのかもしれない。この戦いが終わり、リアル世界に戻った時に、会って色々話をしてみたい。彼が大人になっていく過程を見て行きたい。きっと、いい大人の男性になるのだろう。
だから、ここで彼の願いを絶やしてはいけない。
ガイン、サラ、どちらに加戦したとしても、セリカの戦闘力では残念ながら、リンカ、マリア共に勝てる可能性が大幅に変わるとは思えなかった。それくらいにガインとサラの戦闘力は桁違いである。ただ、その事実をここでシキに言うわけにはいかない。悪戯に不安を覚えさせてしまうだけである。
だが、シキの戦闘力もまた、桁違いの領域まで来ている。これはレベルでは語れない。それは、帰化プレイヤーでもない彼が持つ、特異性のステータスがそうさせているのかもしれない。
根拠も何もない感覚を信じる事に、真逆にあるロジックのテクノロジーに支配されている世界で、そんな事に一筋の願いを込める自分に、セリカは少しだけ笑ってしまう。
でも、そこに掛けたい。
だからこそ、シキにはリンカ、いや、サラのところへ行かせたい。シキには、すぐにでもサラを取り戻すことに専念させて、彼を縛るカルマから開放してあげたい。
それが、ガインを倒す為に、そして、その先のEG崩壊へ結び付け、すべてを一度白紙に戻す事を願うセリカの想いだった。
次回も月曜日の19時に投稿します。




