64話 ACT17-2
物心ついた時から、いつも一緒だった。家は、隣同士で、家族含めてみんな仲がいい。その中に、同い年の男の子がいた。お互い一人っ子。共に両親が共働きだったのもあり、毎日、どちらかがどちらかの家に行き、毎日お互いのしたい事を一緒にしていく。幼馴染という、友達以上親友未満、異性だったりするとさらに特別な感情を覚えやすいこの関係値ができあがるまでに、そう長くの時間はかからない。
それが、サラとシキの関係。
今では考えられないが、子供の頃サラは人見知りだった。最初の頃は、お隣同士の同い年の男の子と、どう接していいか、分からなかった。
初めて親同士の挨拶で、顔合わせた時のシキのハニかんだ笑顔が印象的だった。人見知りのサラの事など気にしていないのか、はたまた早く慣れさせようと思ってくれたのかは分からないが、いまいち反応が悪いサラに対して、シキは、ドンドン自分のしたい事に巻き込んでいってくれた。
シキも、今でこそ考えられないが、仕切り好きだった。やや、自分のしたい事ばかりを優先させるシキに、最初の頃は、違和感も大きかったが、自分を出せる人が、親以外に増えていく事への喜びを感じるほうが先で、シキと過ごす時間がサラにとっては大事な時間になっていった。
シキは当時、デジタルワールドのハッキングモンスターから世界を救う戦隊モノにハマっていて、大抵、戦隊ものの戦いごっこにサラも巻き込まれていた。全然知らないサラに、戦隊モノのキャラクター等の説明をしていきながら、半ば強制的に役をやらされたサラは、どうにかして興味ないモノを興味持たせようと頑張っているシキの姿が面白かった。
次第に打ち解けてきたサラも自分を出していく。戦隊モノの戦いごっこばかりじゃヤダ。なんてワガママ言ったりする日もあったりして。たまにはお飯事をしたい。なんて言ったりすると、シキは「しょうがねえなあ」なんて言いながらお飯事してくれた。
そんなシキとの時間が、サラは大好きだった。
幼稚園、小学校低学年くらいまでは、いつでもどこでも、シキはサラを、サラはシキを優先した。家族よりも友達よりも。取り決めのような約束はしなかったが、それが二人にとっては自然だった。相変わらずシキのやりたい事にあわせている日が多かったが。
それでも、サラにとっては、いつしか親よりも過ごしていて楽しい時間になっていく。何か困った事があった時は助けてくれるヒーローで、頼りになって、シキと一緒に居る時間が何よりも楽しい時間だった。
そんな幼少期を過ごしていくが、環境の変化は、時間と共に刻々と変わっていく。
小学校入り始めた頃から、サラの両親がよく喧嘩するようになった。サラの目に入ると喧嘩を止めていたが、そんな事に気付かないサラではない。もちろん気づいてはいたが、気付かないフリをしていた。それが家族が円満でいるためにサラができる唯一の事だと思った。シキもサラの両親の不仲には気づいていたし、サラがその事で無理して気付かないフリしているのもわかっていたように思える。ただ、シキはその事について、サラに何かをいう事はなかった。喧嘩や険悪に空気をなんとかよくしようとしてるサラに気づいた時ほど、シキもいつもよりも元気に振舞っていたように思えた。
だが、小学校3年生の時に、サラの母親が家を出て行ってしまった。
研究一筋の父が、男手一つでサラを育てていくのは難しい。
母親が出て行った事で混乱するサラの父、リキとシキの両親は家族会議のようなものを頻繁にしていた。そこにサラとシキは入らない。大人の話。というものなのだろうか。お母さんがいなくなった事で、今後どうしたらいいか。なんて、そこに子供が意思表示する場面なんて、無いと言われいるようだった。
サラは、そんな大人達の無言の意思表示に、汲み取りながら、平然を装っていたが、シキの「俺が傍にいるから、無理すんな」という一言に、今まで張っていた気が解けてワンワン泣いてしまった。無理して作っていた笑顔は、シキには、見破られていたようだった。
ワンワン泣いてしまったやりとりは、サラとシキだけの二人の思い出。
サラの中で、シキの存在がさらに大きくなっていく、そんなタイミングでもあった。サラの中で、ドンドン大きくなっていくシキの存在や関係が、不変なものとして確立されている事をサラは願ったが、さらに時間の経過と共に、その想い、願いを実現していく事が難しくなってくる。
小学生の中学年、高学年になっていく連れて、シキとサラの関係性も変わってくる。家族同然の中のよさは、男の子にとって時に友達への説明を求められるようで、少しだけと距離を取られるような時もあった。寂しかったが、シキにあまり迷惑もかけたくなかった。学校ではそれなりの距離で、家ではベッタリと、そんなオンオフのような関係性の変化になっていった。
中学生になると、さらにシキに変化が訪れた。友達云々の前に、人との距離を一層置くようになってきた。シキは、繊細な心を持っている。ぶっきらぼうだけど、誰よりも人の感情を汲み取る事ができるが故に敏感だ。そんな敏感さと思春期独特の気持ちのズレが、シキの中で、今までのコミュニティとの大きな距離を図る事を選んだのだとサラは思った。寂しさを覚えていきながらも、そんなに大きな事でない。一時的なものだと言い聞かせて、受け入れていた。
一時的に、どんな風になっていってもシキはシキで、サラとシキの本質的な関係は、変わらない。そう思っていた。
だけど、そのサラの思いとは裏腹に、どんどん孤立化していくシキは、その対象の中にサラも入れていく事となる。次第に、家同士の付き合いでもシキとの絡みも減っていく。そもそも、サラの父、リキ自体がそこまで、社交性の高い人ではなかった。家族同士の付き合いも減っていく。
サラなりに、家族ぐるみの付き合いや、シキとの学校以外での次回んの過ごし方を工夫してみたが、中々、状況が変わらなかった。途中で気持ちが沈んでしまって、これが大人になるって事なんだ。と、自分に言い聞かせようと思った時期もあった。
サラには、昔、シキがしてくれたような自然な配慮の仕方が分からなかった。どう接していいか分からなかった。何かキッカケがほしい。次第に何かを求めるようになっていった。
そんな時に、サラは、流行り始めていたVBCヘッドセットによるアバター活動に目を向ける。アバターでしか行けない仮想世界のAHでの活動も、し始めたりとアバターの中でもコアなほうの活動をしていく。
そういえば、昔、戦隊ものの戦いごっこが好きだったシキは、仮想世界に憧れていたように、サラには見えた。
シキがVBCヘッドセットを持っている素振りもなければ、もちろんAHで遊んでいる記録もない。もう一度、二人で新しい世界を作るなら、キッカケはこれしかない。そう思ったサラは、普段のなにげ無い会話しかしないシキへ、勇気を振り絞って声をかけてみた。
「ねぇねぇ、シーちゃん。AHって知ってる?」
子供の頃、シキが私に世界を広げてくれたように、今度は、私が、シキに、無理しないで自分らしく居られる世界を作ってあげたい。
次回も月曜日19時に投稿します。




