60話 ACT16-2
「ええ。さすがに、シキさんと最大出力でぶつかった時に与えた、私のスキルの攻撃に比べると、あまりにも違うので、すこし貴方に起きている状態を探っていかないとですね」
「素直に喋るところが、余裕のなさを感じるさせるな」
「余計なお世話です」
「まあ、そう言うな」
ガインは、マリアの疑問における答え合わせをしてやろう。と言葉にこそ出ださないが、言動で伝えてくるように、その周りを覆う黒紫のオーラを、小さな砂状に変化させていく。
「それは・・・」
「貴様の考えはきっとこうだろう。ファイターの基本職のジョブに、バーサーカーの上位職のジョブ。そして帰化プレイヤー時の特殊スキル。これが俺様の今の状態だと。残念だったな。俺様は、帰化プレイヤーにして最高位のギルドマスターだ。ファイターの上位職である拳闘士、ソードマンのスキルも同時保有されている。貴様は、バーサーカーとしてのスキルを多く見せていたが為に勘違いしていたのだろう」
ガインの周りを覆う黒紫の小さな砂状の存在の正体が、ガインが同時保有するジョブの中のあるスキルと完全に酷似している事にマリアは気付き始める。
「サンドオーバー」
アサシンは、直接攻撃よりも相手の油断や隙を狙って攻撃し最大ダメージを与えるジョブである。その攻撃性に特化しているからこそ、一発必殺の攻撃やスキルも多様に多く持っている。
しかしながら、ここはAHというデジタル世界で作られたゲーム性の高い戦闘職。完全無欠のジョブやスキルが存在しうる事はない。
アサシンの暗殺攻撃は、相手が小回りが利くジョブやスキルがあればあるほど、その効果は薄れていく。
そしてそのアサシンにとって一番相性の悪いジョブが、小回りな剣術も得意とし、【サンドオーバー】と呼ばれる攻撃回避スキルを保有するソードマンなのである。
【サンドオーバー】を使われてしまうと、アサシンのスキルは限りなく無効になる事が多い。反面、【サンドオーバー】を常に発動しているわけにもいかない。スキルの連続発動は、最大出力を上限として体調パラメーターに大きく影響を与える。
その事をガインはわかっているからこそ、マリアに対しての先ほどの攻撃が【パリィ】と呼ばれる通常のソードマンのスキルだった。それにより、一撃でキルされる事は免れたマリアだったが、だからと言って一気に状況が一変した事には変わりない。
そう、アサシンはソードマンと相性が悪い。バトル時においてジョブ同士の相性を見極める事は非常に大事である。
ソードマンのジョブを持つリンカと、アサシンのジョブを持つマリアのバトルの相性が悪い事は、マリアはもちろん、リンカも理解しているはずである。無論、仲間にバトルの相性の悪いジョブを保有するプレイヤーがいる事には何ら問題はない。プレイヤーとしての知識がまだ低いシキが理解していたか、までは定かではない。
しかし、シキには、基本職ウィザード、上級職ソーサラーのジョブを持ちながら拳闘士クラスの近接戦闘も得意とする死角なきプレイヤーの特異性を持っているが為に、まだ知識が乏しい面におけるデメリットのカバーもできている。
実は、各自が持つジョブからもバランスのとれたパーティーだったシキ、リンカ、マリア。
ガイン、サラ、セリカを見た時に、サラ、セリカは基本職アーチャー、上位職スナイパーを持つジョブの帰化プレイヤーと判断していた。間合いを計って攻撃をするスナイパー職と間合いを詰めなくてはいけないアサシン職もそこまで相性のいい対戦の組み合わせではない。
また、対戦の組みあわせにおいて、シキやリンカの事を先に優先すべきだったマリアは、ガインを相手にするのが自ずと自分になっていくのは、止めようのない流れであった。
そう言い聞かせたい気持ちも入り混じるマリア。
ガインを基本職ファイター、上位職バーサーカーの組み合わせのジョブである判断してしまったのは、完全に判断ミスである。
もし、ガインとの戦いを引き続き、シキにさせていたのであれば。
むしろその方がよかったのだろうか。
先ほどの戦いで一度、ほぼカードを出し尽くしている戦い方をしてしまっているシキが、1対1で相手の戦法もわかっている状態で再度闘う事は、まだプレイヤーとしての経験値が低いシキにとっては非常に危険が高い。
だからと言って・・・。
様々の気づきにより、混乱に近い思考が頭を駆け巡るマリア。策士の一面を持つマリアにとって、自分の想定外の事態に対して思考が追い付かなくなる。こうなってしまうと精神的にも相当脆くなってくる。
むしろ、この事も想定して、ガインは、個別の戦いの環境を選んだのかもしれない・・・。
「ぬははは。間抜けめ。貴様の混乱が手にとるようにわかるぞ。」
戦い方が定まっていないマリアにガインの攻撃が始まる。
距離を十分に空けているマリアに向かって飛び込み大剣を振りかざし叩きつける。その動きたるやアックスやハンマーに近い破壊力でである。大剣は地面をたたきつけられ、その衝撃で地面は大きく窪む。その地面のを上に先ほどまで立ってたるマリアは寸前で交わす。
そのままマリアが食らっていたとしたらと想像するだけで先ほどの体を切られた不快感にあわせて、先ほどのダメージまでは至らないにせよ、それ相応のダメージを与えられるところだった。
寸前で交わし宙に浮いたマリアは先ほどまでのスタイルでいけば、ガインの間合いを詰めての攻撃に入る。しかし、今は、それをしたところで、ガインに大きなダメージを与えることができない。躊躇しているマリアを嘲笑い、マリアの背後に現われるガインは再び大剣を大きく振りかざす。今度は横斬りである。
「【ダガースロー】トリプル」
基本職シーフ、上位職アサシンのマリアには敵の攻撃を防ぐ防御系のスキルを保有していない。そのため、敵の攻撃を防ぐためには、衝突時のダメージを防ぐ投擲スキルの攻撃を放ち、衝突させ、攻撃を防ぐしかない。【ダガースロー】の三連撃であるトリプルはMPの消費も激しく通常スキル仕様では無い為、体調パラメーターへの影響も与えるが、確実に受けるダメージを減らすことを優先させたかった。
次なる手が見えてこない以上。
背後に入り、大剣を横斬りしようとしたガインへ、すかさず反転し距離を空け、【ダガースロー】トリプルを放つマリア。
しかし、ガインはそのマリアの動きも読んだいたかのように嘲笑う。
「だから、あまい。と言っておるだろうが」
【ダガースロー】トリプルと、大剣の横斬りの衝突によって、二つの攻撃が終わるかと思われたが、ガインは横斬りに【スラッシュ】を織り交ぜていた。斬りつける事で、【ダガースロー】トリプルを消した後の波動でよって生み出された【スラッシュ】はそのままマリアに直撃する。
【スラッシュ】をただ腕をクロスをするレベルの防御しかできなかったマリアはそのまま【スラッシュ】と共に地面に叩きつけられる。そこにガインの追撃が襲ってくる。
「【スラスト】」
マリアが叩きつけられた地面に真っ逆さまに、突きのスキル【スラスト】を発動するガイン。
これを受けたら確実に終わる。
マリアは【バックキル】スキルを発動し、ガインの背後に瞬間移動し攻撃を仕掛ける。【バックキル】の瞬間移動のおかげで【スラスト】のダメージを受けずに済んだ。マリアがいなりくなり、受けた地面は大きな衝撃波と共に、先ほどの窪みなど非にならないレベルの大きなの凹みができあがる。
最早この【バックキル】の攻撃自体には期待はできない。ただただ【スラスト】の攻撃を受けないためだけの【バックキル】である。しかも攻撃を仕掛けたその瞬間はマリア事態も無防備になる。そのタイミングをガインを逃してくれる訳も無かった。しかし近すぎる間合いにあった為、大剣ではなく後ろ回しエルボーでマリアへの反撃となり、再び地面に倒れこむ。
「ぬは。面白い。さすがバトル経験が長いだけあって、戦闘スタイルで詰んで直、簡単にはやられないよう足掻いておるな」
「楽しんでいるのも、今のうちですよ。私はこの瞬間も貴方の弱点を見極め始めてますから」
「まあ、そう、強がるな。貴様が詰んでいるのは確定事項よ。ジョブやスキル戦略を超えた戦法など、帰化プレイヤーとなり特殊スキルを得る以外になかろうが。貴様の兄のようにな」
次回も月曜日19時に投稿します。




