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51話 ACT14-1

「貴様、、、」


 ガインの背後に現れたマリアは、この瞬間にすべてのタイミングをあわせていたように、即座にスキル発動を行う。


「【エクスプロージョンバックキル】」


 確率で一撃必殺を起こす敵の背後に瞬間移動し攻撃する【バックキル】、爆発を仕込ませたダガーで相手に大ダメージを与える【エクスプロージョンダガー】、この二つを組み合わせた特殊なスキル発動。

 最大出力の状態ではないにせよ、マリアにとっての最大スキルと呼ぶにふさわしいスキル発動だった。


 シキと最大スキルで全面衝突において勝利したとは言え、シキのカウンター攻撃で大剣を手から離してしまい大きくダメージも受けていたガインにとっては、度重なるカウンター攻撃は通常のカウンターよりも大きなダメージを避けることは、不可避である。

 大きなダメージを受けた後のダブルカウンター。ガインは、マリアの暗殺最大スキルのダガーを背中に突き刺される。ガインを突き刺した瞬間にマリアとガインが大きな爆発に包まれる。





 シキとガインの衝突の衝撃波から、距離を空けて非難していたリンカとセリカは、マリアが放った【エクスプロージョンダガー】の爆発が、シキとガインのスキル衝突におけるものでない事を即座に認識できた。爆発の型も違ければ、一瞬ではあるのものの、シキとガインのスキル衝突が終わったタイミングもしっかり見届けていたからである。そして、その爆発がガインが立っていたであろう位置から起きたようにみえたセリカは、ガインの危険を察知してその場を飛び出す。


 しかし


「そうはさせないわよ」


「ち!!」


 飛び出したセリカに背後から後を追うリンカは、小剣で背中を切りつけようとする。堪らず細剣の刃で応戦するセリカ。


「早くも休戦は終わりを告げたわね。あなたを易々とあの暗黒騎士の元にはいせかないわ」





 仕留めた感触はあった。しかし、爆発の後、そこにはガインの姿はなかった。マリアがチートスキルによって、ガインから剥奪しようとしているEG(エンペラーゲート)イース支部ギルドマスターの権利は、対象者をキルしていれば即時でなくとも可能である。光の粒子となって散っていく姿は、爆発の煙によって見る事ができなかったが、余韻に浸っている暇はない。まずは、致命傷を負っているシキの元へ急ぐマリア。


「シキさん、大丈夫ですか?」


「ああ、なんとかな。おかげさまでMPはからっぽ、HPも後僅かでプレイヤーからオサラバするとこだったよ」


「ふう、なによりです。しかし、うまくいきましたね」





 実は、リンカがシキと連絡をとっていたタイミングで、シキもマリアとフレンドチャットで内密に連絡をとっていた。シキはリンカから連絡が来た際に、最悪の想定もし始めていた。明日の作戦の進行を危惧したシキから連絡を受けたマリアは、最悪、明日の作戦を独自で動く可能性も考えていたが、まずは起きたこの状況を違う作戦のプランに変更する事で活かせないかを考え始めた。何よりも作戦を優先するが為に、リンカにもしもの事があった時のほうが、マリアは自分を許せなくなる。シキにはリンカを救う事を優先するよう伝え、やりとりをすべて傍受できるようにしてもらっていた。


 そして、マリアの判断がこの度の大きな急展開を迎える方向へと結びつき始める。リンカが苦戦を強いられていた相手はEG(エンペラーゲート)の幹部のセリカ。もちろんマリアもセリカの存在を知っている。

 ここでセリカが苦戦するような事があれば、EG(エンペラーゲート)イース支部のギルドマスター、暗黒騎士ガインが現れるかもしれない。今のEG(エンペラーゲート)イース支部にとってセリカはなくはならない存在。もしセリカに危険が及んでいれば、少なくともセリカよりもステータスの強い誰かの応援が来る事はわかっていた。そうなればガインになる可能性は非常に高い。


 そう読んだマリアは、ガインが現れ、転移石(トランディションストーン)でこの《森林エリア》に移動する瞬間から参戦を決意。シキがガインを倒せなかったケースの場合のみ、ある作戦をシキに通達していた。


 そう。

 まさに今起きた状態を想定した、シキがガインと戦い、力と力でぶつかって勝てない時には、カウンターを入れて少しでも相手にダメージを与え、可能な限り無防備な状態を作ってもらう戦術。

 マリアはその瞬間を確実に逃さないよう現地に到着しても参戦せずにその時を一刻一刻と待っていた。


 そして、その瞬間は訪れ、全力でガインを仕留めるに至った。


 マリアは、シキのアイテムボックスからHP、MP全回復薬、状態異常回復薬を取り出し、シキに飲ませる。シキはステータス上完全回復しているが、パッシブスキルと攻撃スキルの最大出力を行っている為に、実体でいうと体調を崩しているような、体が重い状態になっていた。


 万全ではないにせよシキを回復させたマリアは、すぐ様、剥奪スキルを発動しようとする。ガインが持つEG(エンペラーゲート)イース支部ギルドマスターの役職と権利を剥奪し、取得する事でEG(エンペラーゲート)に所属する帰化プレイヤー達への指令ができるようになる。


 取得した瞬間からすべてが変わる。

 偽りの平和とは言え、AH(アストラルホライズン)の日常に、終わりを告げる事になる。

 覚悟していた事とは言え、その時が目の当たりにされると、いくばかの迷いに晒される。



 ついにここまで来た・・・。何を躊躇しているの、私、、、こんなところで立ち止まっているわけにはいかないのに・・・。



「マリア、大丈夫。俺もリンカもついてる」


 マリアの言動をみて異変に気付いたシキはマリアにそっと声を掛けたる。シキの言葉とまっすぐな目が躊躇してたマリアの気持ちの覚悟を改めた。



 シキさん。。。。。。ありがとう!!



「【ポジションライトスティール】」





 マリアは目をつぶりスキル名を発する。役職権利剥奪スキル。【ポジションライトスティール】。マリアの周りには薄い黄金色のオーラが発せられている。非公式なチートスキルであるにも関わらず、その効果演出には、神秘的なものを感じてしまうシキだった。

 帰化プレイヤーを除いて、公式でないスキルを持っていたシキ。マリアの特殊なスキル発動を見た時に、当初のシキのように”特殊な状況”にあったプレイヤーのみに取得されるものだと思っていたが、今やリンカも取得できるに至っている特殊なスキル発動の習得状況に関しては、”特殊な状況”とはまた違うフラグがあるようにシキは思えてきた。

 あわせて、マリアの役職権利剥奪スキル【ポジションライトスティール】は今までのシキ、マリア、リンカが発動してきた特殊なスキル発動とも違うように思えた。どちらかというと帰化プレイヤーが保有する全く既存で持つスキルに関連性のない”特殊スキル”の近い。



 マリア、お前は一体、何者なんだ?



 シキの中で芽生えてくる疑問。


 もちろん同じ目的を持った仲間であり、その目的が未達成であるのであれば、余計な詮索は場合によって、目的の達成の弊害になる事もある。シキはすべてが解決した時にこの疑問を少しだけ解いてみたいと思うが、今はこれから起こるAH(アストラルホライズン)の偽りの平和の終わりに対する心構えに意識を集中させていった。





 【ポジションライトスティール】を発動中のマリアに刃が飛んでくる。飛んできた刃に【マジックアロー】を投げつけマリアに攻撃が及ばないよう防いだシキ。


 刃を飛ばしたのはセリカ。爆発のタイミングですぐにこの場所へ戻ろうとしたものの、リンカがそれを防ぐように攻撃を仕掛けてきたので、結果お互い攻撃をしながら移動してきた流れとなった。


「倒したの?」


 続けてリンカも戻ってくる。


「ああ、今、最後の取りかかりだ」


「あなた、この流れ知ってたでしょ?」


「え!!あ、、、まあ、、、そうだな・・・」


「ないがしろにされるの、私が嫌いなの分かっているわよね?」


「瞬間瞬間だったんだよ。本当、他意はない」


「ふーん」


 リンカは依然地面に座っているシキに詰め寄った後、「本当かしら?」と言わんばかりのツンとした表情でシキを見下すような目で見て立ち上がる。



 こいつ、全然信じてないな。。。。。。

 今まだ敵がいるからな。集中しようぜ?



 出かかった言葉を寸前で押しとどめ、集中しているマリアの邪魔をさせないようシキはセリカに対しての牽制をし始める。シキの殺気を感じ、その方向がセリカに向かっている事に気がついたリンカも再びセリカを牽制し始める。


 ところが


 セリカはニヤリと口元を緩めるに過ぎずに動かない。シキとリンカは不思議に思うもここで余計な言葉を発してこの状態を壊してしまうリスクを考えると、このまま牽制しつづけているほうが無難だとお互いに思った。





「おかしい・・・」


 セリカとシキ、リンカの牽制における沈黙を破る最初の言葉を発したのはマリアだった。マリアを纏う薄い黄金色のオーラもなくなっていた。端から見ると【ポジションライトスティール】は無事に完了、EG(エンペラーゲート)イース支部のギルドマスター権利を剥奪できたように見えたが、そうではなかったようだった。


「あら、何がおかしいのかしら?、裏切り者のマリアさん」


 ただただニヤリとだけしていたセリカがこのタイミングで言葉を発する。牽制によって動けなかったのではない。”特に動く必要がなかったのだ”。マリア、シキ、リンカはそのセリカの言動からマリアの【ポジションライトスティール】の結末を知っていたように思い始める。


「セリカさん・・・。何をしたんですか?」


「私は何もしてないわよ。むしろ貴方達が勘違いしているだけではなくて?」


「戯れがすぎるぞ、セリカ。そこまでで良いだろう」


 セリカに続く言葉に反応するシキ、マリア、リンカ。そして言葉の先にいる人物はマリアが暗殺スキルによってキルしたはずのガインだった。


 そして、もう一人ガインの側ににいる人物が立っている。この人物がガインを助けたのだろうか。


 マリア、リンカは再び攻撃態勢に入り、シキも立ち上がるがひどく困惑し始める。


 シキの困惑にマリア、リンカはもちろんセリカ、ガイン、その人物すらも反応するが、困惑し始めたシキから出た言葉は誰しもが想定しない言葉だった。





「サ、サラ・・・」


次回も月曜日の19時に投稿します。

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