50話 ACT13-3
シキの指示通り距離を置いていたリンカだったが、いきなりにして最大スキルの衝突は尚の事、規格外の衝突と衝撃波は、相当な距離を持ってしても体全体に響いていた。
すさまじい黒紫のオーラの大きな塊、炎と気が重なりあった大きな塊は、距離を置いて見ると、まるでその塊同士が意思を持って互いの気の塊を吹き飛ばさんとせんばかりにぶつかり合い、大きなうねりをあげている。
「これが、、、上級帰化プレイヤー及びギルドマスターの最大スキル。。。。。。」
たまらず言葉を漏らすリンカ。しかし、その規格外のスキル攻撃ですら、シキの最大スキル発動は負けていない。それどころか同格といえるべきレベルまで達している。
シキの拳とガインの大剣のお互いが放つスキルの大きな塊が打つかりあい、衝突を繰り広げる度に、大きな衝撃波を繰り返し生み出している。立っていることすら危うくなってくるすさまじい衝撃波。
その衝撃波に耐えられなくなってきたリンカの元にセ衝撃波を防ぐバリアを発動したセリカが現われる。
「なんのつもり?」
「あら、立っているのが辛そうだったからフォローしに来たつもりだったのだけれども」
「何言っているのよ。私達敵でしょ。フォローしてどうするのよ?」
「もう、これだから小娘は」
「小娘って。。。。。。あなた、話せば話すほど素が出てくるわよね」
「そうね。一応割り当てられたキャラクター設定があるのよ。それに成りきらなくちゃいけないのよね」
「そうね。って・・・。そんなに簡単にペラペラしゃべっていいの?」
「別に大丈夫よ。小娘改めお嬢さんともこれから仲良くなっていく訳だしね」
「はあ??、仲良くなんてならないわよ。小娘改めお嬢さんって、どちらにしても小馬鹿にしているのもムカムカするし」
「ふふ、まだ貴方達は若いから」
「若いからなんなのよ?」
「すごく感情的で短絡的って事よ」
「へえ、言うじゃない。それに比べて貴方達は思慮深いから、自分達の考え方に合わない人達を支配していくのかしら?そして、戦っていない時は仲良くしましょうって?」
「そういう事よ。組織は大きな指針なる方向性や目的があって、組織に属するメンバーは、そこに即して行動するの。貴方達とは、その利害が合わないから戦っているだけなのよ。お嬢さんと私の個人的にはなんのいがみ合いもないでしょ?敵だからって必ずしも憎いって事にはならないわ」
本質を突くセリカの言葉に対して、続けて返す言葉がリンカにはなかった。
組織においては尚の事であるが、コミュニティにおいても、向かっている方向性やそのプロセスがすべて自分の意向に即しているわけではない。また、組織やコミュニティが大きくなればなるほど、調律が発生し、個人の気持ちとの乖離が生まれてくるのはしょうがない。
セリカにとっては、帰化プレイヤーを増員させることや、EGが支配する世界構造への使命が、自分の思いと乖離が大きいのであれば余計に、個人的な感情を切り分けて考えたいのも分からなくもない。
シキとガインの戦いを見届ける者同士であればこそ、セリカの、リンカまたは他のプレイヤーに対する対応は、この瞬間においては、セリカの行動は気まぐれとも言い切れない。
決して漏らす事のない本音が、セリカにはあるのだろう。だからこそ必要以上にいがみ合う事はない。セリカからそう言われているようで、これ以上何も言い返す事はできなかった。
「そろそろ決着の時かしらね」
セリカの言葉に、リンカはシキとガインの方に視点を戻す。大きなスキルの塊と塊の打つかり合いに変化が生じてきた。ガインの黒紫のオーラを纏うスキルのうねりが大きくなり、シキの炎と気が重なりあったスキルの塊が小さくなり、今にもシキがガインのスキルに飲み込まれてしまいそうになっていた。
「ぬははは。小童!!、よくぞここまで耐えた!!異質なプレイヤーの存在を発見した報告が上がっていたが、よもやこんな形で相見えるとはな!!貴様はここで朽ち果てる事になるが安心するがいい。すぐに俺様が貴様を最高の状態にして復活させてやろう」
「な、に、勝ち、誇ってんだよ。お前の、その、うざったい、プレイドを、へ、し、折ってやるよ」
シキはガインの言葉の返しと共に、全体重をかけ打つけていた炎と気が重なりあった【ファイヤーマジックアロー】スキルの塊を宿した右拳を無理やり振り切って、大剣をへし折り一瞬だけ黒紫のオーラの塊を後ろに退けさせる。
「無駄、だああああ」
だがすぐにガインは、折れた大剣の刃の先を黒紫のオーラの塊で型作り、何も発動スキルを持ち合わせていないシキへと振りかざし襲いかかる。
しかしシキはニヤリと笑う。自身もその瞬間的な時間を使い、振り切った右拳の反動を利用し、左拳に【ファイヤーマジックアロー】を宿し、右腕に【マジックバリア】を作り出し、折れた大剣の先を型作る黒紫のオーラの塊【ダークリーサルストライク】を右腕で受け、【ファイヤーマジックアロー】の左拳のフックをガインに叩き込む。
正面衝突で完全に押されていたスキルとスキルの打つかり合いから、己のすべてMPゲージを使い果たしカウンター攻撃に切り替えた攻撃である。
「ぐおおおお!!、貴様!!」
ガインの振りかざした【ダークリーサルストライク】はシキをどこまでもふき飛ばし、大きな衝撃波をその直線上に放ち続けた。シキはMPでHPのダメージを吸収する【マジックバリア】を発動した事でキルに至る事は防げたが、【マジックバリア】だけで事足りる事はなく、致命傷レベルのダメージを受けてふき飛ばされる。
あわせてシキが放ったガインの【ダークリーサルストライク】を受ける瞬間に、右脇腹に打つけてきた左フックの【ファイヤーマジックアロー】は、ガインの体をふき飛ばしこそはできなかったが、同じくその衝撃波が、ガインの右脇腹を通してガインの左側面を経由して放たれた。ガインも堪らず振りかざした大剣を手から離してしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ、小童。。。。。。」
シキとのスキル衝突に勝利したガインだったが、カウンターを食らって致命傷とは至らないが大ダメージを食らい、その言葉からは、余裕は全く感じられなかった。ガインからすると、特殊なスキル発動を持つプレイヤーだったとは言え、所詮はプレイヤー。圧倒的な力を手に入れた帰化プレイヤーであり、かつ頂点に近い立場に君臨する自分をそこまで追い詰めるとは思っていなかったようである。
「シキさん、上出来です」
大きな衝撃波によって視界が悪くなっていたその場所に、そして、大剣を手から離してしまい瞬間的と言え、ダメージを受け、気を抜いてしまったガインの背後にいるはずのない別の誰かの声が聞こえた。
そこにいるはずのないマリアが立っていたのである。
次回も月曜日19時に投稿します。




