49話 ACT13-2
EGイース支部のギルドマスターを名乗る暗黒騎士ガイン。幹部のセリカが謙り、レベルという概念では計れない何か異質なオーラを放ち、ムキムキ男を虫けらのように始末し、あまつさえシキやリンカに対する傲慢な態度。プレイヤーを帰化プレイヤーにさせ、リアル世界と遮断し、デジタルワールドであるAHを唯一とする世界にし、帰化プレイヤーの頂点に立つことで王となり支配構造を確立させようとでもしているのか。
リンカは、ガインの異質なオーラに威圧されてしまっていた。シキを見るとシキも異質なオーラを感じているようだったが、バトルモードに切り替えている事で、そのオーラを跳ね除けているようにも見えた。突如として現れた暗黒騎士ガインの規格外の存在や動きによって気を持って行かれてしまったが、シキのステータスが異常なまでに高くなっている事もムキムキ男との一瞬の戦いにおいて証明されていることである。
ガインは、大剣を両手にもち、剣先をシキへ向け構え始める。
次の瞬間。
ガインの目の前に、ジャンプした状態で現れたシキは、右手を手刀にして【マジックアロー】の気の塊で生み出されたロングソードでジャンプ斬り下ろしを仕掛ける。ガインは構えていた体勢ではフリなシキの攻撃もなんのその、大剣で斬り上げをすることによって手刀のロングソードと衝突をさせる。
ガインが切り上げた大剣に力負けして飛ばされるシキだが、またも瞬間、その場からいなくなるようにすら見えるすさまじいスピードで地面にその体を戻し、反動で暗黒騎士の懐に入る。
懐に入ったシキがロングソードの手刀でガインの体を突き刺そうとするが、寸前のところでかわし、大剣でシキの胴体を真っ二つにするほどの大きな斬り落としを振りかざし叩きつける。だが、シキはその攻撃すらも持ち前のスピードで交わす。二人の攻撃スピードの速さから、ガインの斬り落としはシキをそのまま切り刻んだように見えたが、実際には、残像という空を斬り、地面を大きくえぐるに過ぎなかった。
残像だけを残すレベルの速さでシキは少しだけガインのサイドにずれ、再び手刀のロングソードで右横切りをする。しかしその攻撃もガインは大剣によって妨げられる。右斬り下げ、再び右横斬り、左横斬り、右斬り上げ、斬り下ろしと連撃を繰り返すがすべて大剣との衝突に終わる。
互いが互いを先回りするような動きを見せ合っていたが、わずかにシキが攻撃をリードしているようにリンカには見えた。
だが
おかしい。
リンカの印象に反してシキの懸念は膨らんでいく。
【ダークパリィスラッシュ】
連撃によって生まれてしまったシキの隙を付いて、ガインからは、放たれた大剣を振りかざし空中に切り刻まれる事で生まれる波動のスキルを発動され、シキはカウンターを受けてしまう。その際に防御代わりに使ってしまったロングソードも消えて無くなる。倒れるまでには至らないが、ロングソードも消されシキはHPを1/3ほど減らす。
「ほう。すばらしい。愚兵の存在でよくそこまでの戦いができるとはな。褒めて遣わそう」
先ほどのシキのリードがまるでなかったかのようだった。体勢を崩すシキと余裕のある態度を変えないガイン。
「大丈夫?」
シキの場所にリンカは移動し、HP回復薬をシキに渡す。シキとガインがやりあっていた時間はわずか数十秒の出来事だったにもかかわらず、リンカはシキのフォローに入る事もできず、二人の打つかり合いに間が空いたこの時まで動けずにいた。幸いにしてセリカも動く気配がなかったのでよかったが、それほどまでにシキとガインのバトルは常軌を逸したスピードとパワーで行われていた。
「助かる」
「不意打ちのスキルを受けるまでは互角、いえむしろ押しているように見えたけれども、どうなの?」
「そう見えたか?」
リンカの質問に質問で返すシキ。リンカの中でもそうであってほしい願いが込められているからこその質問だったがシキの質問返しによってその想いと現実は違っている事をリンカは認識させられた。レベルやステータスでの比較においてはそこまでシキとガインの間では開きがないように見えているが、ガインが放つ異質なオーラが呪いの術式のようにシキの身体を圧迫させていた。
「あの鎧から湧き出ているようなオーラはもちろん公式にあるスキルではないでしょうけど、私達に与える圧迫感を考えると、相手に状態異常を与えるものなのかもしれないわね」
「戦っていて感じる違和感はそこか」
「そこの娘も大したものだな。すぐに我が特殊スキルをすぐに見破るとは」
「ね、あの子達最高でしょ?」
「そのようだな。貴様ら、その辺にいる愚兵とは明らかに違うようだな。強者には敬い賛同するのがこれから実力を得る有能な者がする行動であるが、何故我々に刃向かう?」
「お前達の陰謀を止めようとしているだけだよ」
ガインとセリカはシキの言葉に対してお互いを見合う。リンカはシキの返答には反応に困ってしまった。シキとリンカの存在が認知されようとも、明日行われるマリアの作戦を失敗させてはいけない気持ちがまだリンカは勿論の事、シキにもあると思っていた。
それなのに失敗をさせない可能性すら叩き潰してしまうようなシキの発言。
「ちょっと、シキ」
「大丈夫だ」
「大丈夫って・・・。そんな勝手に決めて。後で知らないわよ」
「あらあら、ではそのお嬢さんが当初言っていた通りすがりの話も嘘だったってことなのかしらね。あの男を誑かして諜報活動を行うなんてとんだ女狐さんね」
「め、女狐って、あなたに言われたくないわよ」
「そうか。では、貴様らは我々が成し遂げようとしている使命を阻む抵抗勢力という事だな」
「使命という割には随分自分達の都合のいいように物事を進めているように見えるけどな」
「信念なき者から見るとそう見えるのかもしれないな」
「お前らに信念なんてあるのか?自分達の考えを武力行使しているようにしか、俺には見えないけどな」
「ふ、貴様のような小童が信念を語るか。片腹痛いわ。愚民、愚兵によって作り出された世界のどこに意味があるというのだ。大罪を犯した世界で生きている事になんの疑問を抱かない貴様等に、我々の信念を共有する事は否である。であるならば、支配構造を変えなくてはならぬ。支配構造を構築した上で一から教育していくのだ。その為に為さなければならない使命だ。貴様の浅はかな考えなどに聞く耳すらもたんわ」
そう言うとガインは己の力を解放するように、纏っている黒紫のオーラをさらに増幅させる。
「一気に仕留めるのですね。では私はこのままで?」
「そのままでよい。見ていろ。信念を語られては遊んでいられまい。【フィアマインド】」
ガインを包んでいる黒紫のオーラはさらに大きなうねりををあげ、シキ、リンカの立っている位置まで覆いかぶさろうとしている。
「シキ、相手は一発で終わらせるつもりみたいね」
「そうみたいだな。思ったより早いタイミングだが、いずれは超えなければいけない壁。ここで俺も全力で行かせてもらうぞ」
シキもガインに反応するように最大出力の準備を始める。
【魔法攻撃力上昇】。
自身の半径5m以内に仮装魔法陣を展開し、陣内で魔法攻撃を行った場合威力増加する【マジックスクエア】。
「ほほう。この力を見ても尚、逃げずに立ち向かってくるとするか。気に入った。我が必殺の一撃を持って貴様の誠意に応えるとしようか。」
「リンカ」
シキの言葉から、ここから離れろという意図を汲み取るリンカ。
「わかった。負けないでよ」
「当たり前だろ」
シキの言葉にあわせてリンカはシキの側から離れる。見ればセリカもガインの側から離れている。リンカとセリカ、お互いに二人の言葉通りの一騎打ちの邪魔をしないよう、また影響を受けないようにした格好となった。
「二人同時に仕留めるつもりだったんだがな。明らかに不利な状況にありながらも、味方を遠ざけ己もすべてを持って挑もうとするその覚悟。敵ながら敬服に値する」
ガインの黒紫のオーラは、大剣に対しても大きく宿し始める。気がつけば、黒紫のオーラにシキとガインは囲われ、そのオーラと繋がっているように大剣に纏い今にもその増幅した力を吐き出さんとしている。
「【ファイヤーマジックアロー】」
シキも【魔法攻撃力上昇】、【マジックスクエア】のパッシブスキル発動における最大出力にあわせて、特殊なスキル発動における最大スキル【ファイヤーマジックアロー】を右手に宿す。【ファイヤーマジックアロー】も黒紫のオーラに包まれた空間の中で一際燃え盛る炎のように大きくうねっていた。
「貴様。。。。。そうかなるほどな。こい、小童!!」
ガインの言葉に合わせてシキは、すさまじいスピードで間合いを詰めて右拳にすべてを込めた【ファイヤーマジックアロー】を宿した右ストレートをガインに打つけにいく。
「くらあああ、えええええ」
「【ダーク・リーサル・ストライク】」
シキとガインを包むすべての黒紫のオーラを供給源とするように覆い被さった大剣と、炎と気の大きな塊を宿した右拳が大きく打つかりあった。
凄まじい衝突、衝撃波と共に。
明けましておめでとうございます。
今年はもう少し執筆時間をを割いて、深みのある展開を増やしていきたいです。
引き続きどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
次回も月曜日19時投稿です。




