46話 ACT12-4
「あなた・・・、今、この人に何したの?」
目の前で起きたことに、反応すらできなかった魔女からムキムキ男へのスキル攻撃。攻撃を見逃しただけではなく、ムキムキ男がキルされてしまう事態にまで。しかも、それだけではなく、魔女は聞いたこともない【ボディイン】というスキル名を発し、目の前のムキムキ男が光の粒子となって消滅せずに覚醒しているような状態になっている。リンカは、目の前に起きている事が、自身が知っているAHでの出来事とリンクすることができずにただ、起きたことに対して魔女へ問うことしかできなかった。
「まあ見て御覧なさい。HPゲージ0になっても消えてないでしょ?これこそが進化を遂げるために必要な儀式なのよ」
キルされたプレイヤーが光の粒子に散らずに、覚醒に向かっているのだとすれば、その先に待っているものは、帰化プレイヤーとしての転生である。マリアの作戦も自身の存在や立ち位置も、本来冷静に考えなくてはいけない事がすべて吹き飛んだ。目の前に起こっている事を止めなくてはならない。
「何したのって、聞いてるのよ」
リンカは、ムキムキ男が覚醒されようとしているこの現状を止めようと、魔女に向かって飛び込み、【スラスト】、突きのスキルで攻撃を仕掛けるが、魔女はすかさずかわし、リンカとの距離を空ける。
「もう分かっているくせに。あなたがこの先、どう言い繕うとも私の中では断定しているのよ。そろそろ嗅ぎ回る羽虫も出てくる頃なんじゃないかって話題にもなっていたの。ソロプレイヤーの仕入れも溜まってきた事だし、次はかぎまわり始めてる辺りかしらね。なんて話もしていたのよ」
「あなたが何を言いたいかは分からないけれど、分かっている事はただ一つ。ここであなたと私は決着をつけなければいけないってこと」
「それは、そうね」
リンカの背後から刃が襲ってくる。さきほどのムキムキ男への奇襲と同じパターンである。リンカは小剣で弾く。本人がその刃を振舞うことなく突如として空間から現れる刃を突き刺してくる攻撃。これがこの魔女の攻撃スタイル。帰化プレイヤーならではの特殊ジョブにおける特殊スキル。シキやリンカが持つ特殊なスキル発動とは違う、作り上げられたスキル。
「【スラスト】」
現時点で分かっている魔女の遠隔から突如出現させる刃の攻撃は、決してその攻撃方法がわかったからといって侮れるものではないが、攻略方法が見えないわけでもない。背後から迫ってきた刃を弾いた瞬間から、この魔女が次なる攻撃を仕掛けるまで、この瞬間を見逃させずに続けて【スラスト】、突きの攻撃スキルを仕掛ける。
もし、刃の遠隔攻撃を連続して受けようものならば、防御一辺倒になってしまい、確実に弾き変えせなくなり四方八方の攻撃を受け始めたら、HP0になるまで攻撃を受け続ける事になる。その危険を感じたリンカは先手必勝で攻撃を仕掛けていく。
リンカの小剣の突きが想定より早いスピードで迫ってきた魔女は、溜まらずに刃の刃を剣先にした細剣を取り出し自らでその剣を持ち、【スラスト】の攻撃を受ける。魔女にダメージを与え、かつ体勢を崩させることに成功したリンカは追撃する。
「く!!、やるじゃない」
「【攻撃力上昇】 」
物理攻撃力STRを上昇させたリンカは、通常攻撃の小剣で魔女に襲い掛かる。斬り下ろしでたたきつけるが、魔女がこれを細剣で完全に受けきる。リンカは斬り下ろしを受けられた反動を使って右薙ぎで追撃。
斬り下ろしを受けた後の魔女は、リンカの右薙ぎに反応することができず右に飛び込み、致命傷を避ける。しかし、ダメージを防ぐことまではできなかった。移動でさらに体勢を整えられていない魔女にリンカは追いつき、右斬り下げ、右斬り上げ、突きを入れていく。
すべての攻撃が決まりHPゲージを大きく減らていく・・・。
こんなに簡単に攻撃決まっていく相手??
リンカの懸念はすぐに目の前の危険として、その答えを導き出すことになる。突きをくらった魔女は、リンカを見ながら微笑む。
「これで勝てると思って?安易な策に溺れ、油断したわね。」
魔女は、刃の遠隔攻撃を仕掛けるには少しのタメを必要としていた。その弱点を読んだリンカは魔女に対し、すこしのタメの時間も用意させないよう連撃を繰り返したのだったが。
二発目の【スラスト】が決まったのを良い事に、リンカは、【攻撃力上昇】のパッシブスキルこそ使えど、連撃でスキルを発動させずに通常攻撃を仕掛けていた。
パッシブスキルからの攻撃スキルは、最大出力にも繋がってくるほどにステータスパラメーターの支障を来たす可能性も非常に高い。最大出力に近い攻撃をした後に、他の隠し玉を出されてはリンカの次なる手がなくなってしまうのはまずかった。そう思い、少しの優勢を感じたリンカが通常攻撃の連撃詩化しなかった事に対して、魔女は逆手の行動を取る。
リンカが通常攻撃の連撃しかしてこないのであれば、ダメージを受け続けたとしても、致命傷までには至らない。それであれば、刃の遠隔攻撃を生み出すためのタメの間を、"防御自体をやめて"作ってしまえばいい。
リンカの連撃をあえて受けた事で魔女には、刃を放つ攻撃をしかけるだけのタメの間をしっかり作り出すことに成功する。
「【ブレイザーアロー】」
後ろから大きな気を纏う刃が現れリンカを襲う。【ブレイザーアロー】をカウンターとして食らってしまったリンカは、すさまじいダメージを受け、出血状態を引き起こす。倒れこむリンカから再び距離を取る魔女は、リンカに向かって無数の刃を放つ。
「【ブレイダーレイン】 」
「しまっ!!」
リンカが恐れていた攻撃パターンが始まってしまった。聞いたことないスキル名のその形態はスナイパーのスキルに似ている。
【レイザーアロー】ならぬ【ブレイザーアロー】。
【アローレイン】ならぬ【ブレイダーレイン 】 。
【アローレイン】の30本をはるかに越える無数、無限の刃がすさまじいスピードと数でリンカに襲い掛かる。
止まることのない刃を弾きながら、【集中】、【集中回避】をかけてダメージを減らしていこうとするがすべての攻撃を回避できるわけではない。
「あら、がんばるわね。これを発動してしまったら最後。あなたのHPが0になるまで攻撃しつづけるわ。様子見などせずに最初から全力でくれば勝機があったかもしれないのにね。残念ね。」
次々と体に刺さっていく刃とHPゲージの減少。
このままじゃやばい。
致命傷となる刃の攻撃をついにさばき切れない。
まずい。。。。。。
HP0を覚悟するリンカ。
その瞬間。
【マジックバリア】がリンカに発動される。
魔女の【ブレイダーレイン 】を引き続き食らい続けるリンカだが【マジックバリア】によって消費がHPからMPに切り変わる。
【マジックバリア】の発動後、エルフの魔女に向かって【ファイアーボール】が飛んでくる。
魔女は飛んできた【ファイアーボール】を受けてしまい爆発、衝撃音と共に【ブレイダーレイン 】の攻撃を止めることに成功する。
「危なかった。。。。。。もお、遅い」
次回も月曜日の19時に投稿します。




