41話 ACT11-2
実感としてはないが約2日間過ごした《時と補正のエリア》と別れを告げ、神父に挨拶し教会を離れ、集会所兼アパートメントに戻るシキとリンカ。
酒場で一息つき、シキはフレンドチャットでマリアとコンタクトを取る。
(お疲れ。戻ってきたぞ)
(お疲れ様です。どうでした?《時と補正のエリア》は)
(まあ、なんというか、複雑な気持ちになるエリアだったな)
(そうですよね。私も以前、《時と補正のエリア》にはお世話になりましたが、思い出しただけで気分が悪くなる思い出しかないです)
(いや、そこまでじゃなかったんだが・・・)
(あ、いやあ、そうですよね。私も改めて考えるとまあまあなくらいでした)
自分自身の痛いところを突かれて精神的成長も求められる《時と補正のエリア》での思い出が、気分悪くなるって、どれだけ闇抱えてるんだ、あいつは・・・。
(なんにせよ、自分自身を見つめ直すのは、たまにはいいことかもな。もちろん求められているレベルにはちゃんとなったぞ。上級職のジョブにもなったし、追加で新たな特殊なスキル発動も取得したしな)
(本当ですか。すごい、すごい。よかったです、よかったです。)
課題があればあるほど重く、課題が少なければ少ないほど軽いはずの《時と補正のエリア》でのトレーニングなはずなので、深く詮索する事はマリアの”闇”に深く突っ込んでしまいそうな気がして、シキは今の時点では曖昧にしておく事にする。
(一旦合流するか?リンカも紹介したいし)
(そうですね。リンカさんいましたね。では、リンカさんと二人でお会いできたら嬉しいです。とお伝えください)
マリアは帰化プレイヤーとして立場を貫いている。三人で会うことは現状ソロプレイヤーを中心に帰化プレイヤー化させるための対象者との接触以外の行動となり目立つ為、避けたいようだ。
(了解。リンカに伝えておくよ。まだステ振がまだできていないから、2時間後くらいの待ち合わせでいいか?)
(はい)
シキは、マリアとのコンタクトを終え、改めてリンカに今置かれている状況も踏まえ状況説明をする。
ステ振りを行った後にシキとリンカは一旦別行動をし、リンカはマリアと酒場で合流することになった。以前、マリアと会いたくない空気を出していたリンカも、求められているレベルまで到達した事や心理的な成長を遂げたことも相まってか、今回は会う事に対して消極的ではなくなっていた。
朝方の事件が関係あるかないかは別にしても、リンカの気持ちの変化をシキはリンカの雰囲気からも手に取るようにわかった。
シキはリンカの気持ちの変化のキッカケを知っておくべきなのかも知れない衝動に駆られるが、心理的な成長の経緯にはセンシティブな側面もあるため、ついそこに会話を持っていくのを臆してしまっていた。だが、天の邪鬼同士、素直になるキッカケを作るのは自分だ。とシャドウから言われていた苦言も頭によぎる。
リンカとの関係値をより良いものにすることの重要さは重々承知している。色々とゆっくりリンカと話合っていきたいが、ゆっくり腰を据えて話す時間を今までは持つのも難しかった。できれば決戦に突入する前に時間を作れればいいが。
「リンカ」
「何?」
「今日の夜は酒でも飲まないか?」
「何、その誘い?確かに未成年でもAHではお酒が飲めるけど。口説こうとしてるの?」
「違うわ。あ、いや、明日以降では色々とAHの状況も変わるかもしれないし、色々語り合って置けたらと思ってな」
「ふーん。うん。そうね。一緒にいる時間は多いけど、次から次へとしなきゃいけない事も多いものね。私もシキと話したい事あるし、今日はゆっくり二人の時間を過ごしましょう」
口元が緩む程度の笑顔ではあるが、リンカは喜びを隠せずにいた。
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シキ
キャラクターレベル 46
種族 ヒューマン
ジョブ ウィザード
ステータス
HP 1076
MP 1512
STR/Strength(物理攻撃力) 71.6
DEX/Dexterity(器用さ、命中率) 37.6
VIT/Vitality(防御力(物理、魔法両方)) 53.6
INT/Intelligence(魔法攻撃力) 75.6
AGI/Agility(俊敏性(回避力)) 37.6
装備
武器 ジャイアントベアーナックル
盾 なし
頭 ジャイアントベアフード
体 ボアレザースーツ
腕 レッドボアレザーアーム
靴 ケルピーブーツ
アクセ1 なし
アクセ2 なし
スキル
ウィザード職スキル
【魔法攻撃力上昇】 E+
【マジックアロー】 C
【マジックバリア】 D
ソーサラー職スキル
【ファイアーボール】 D
【アイスウォール】 D
【フロストボルト】 D
【ブラッドマジック】 E
【マジックスクエア】 D
装備スキル
ジャイアントベアーナックル
【雄叫び】 D+
ケルピーブーツ
【水上歩行】
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リンカ
キャラクターレベル Lv.43
種族 ヒューマン
ジョブ ソードマン
ステータス
HP 1076
MP 516
STR/Strength(物理攻撃力) 78.8
DEX/Dexterity(器用さ、命中率) 53.8
VIT/Vitality(防御力(物理、魔法両方)) 53.8
INT/Intelligence(魔法攻撃力) 25.8
AGI/Agility(俊敏性(回避力)) 45.8
装備
武器 スターショートセイバー
盾 なし
頭 なし
体 インファントリーアーマー&スカート
腕 ソードブレスレット
靴 インファントレギンス&ブーツ
アクセ1 琥珀のイヤリング
アクセ2 ソードマント
スキル
ファイター職スキル
【スラッシュ】 E+
【攻撃力上昇】 E+
【集中】 E+
ソードマン職スキル
【パリィ】 D
【スラスト】 D+
【ダブルスラッシ】 D+
【サンドオーバー】 E+
【ガードクラッシュ】 E+
装備スキル
水精の涙
【ウォーターカッター】
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二人は入念にお互いの個性の活かし方も踏まえステ振りを行う。
シキは物理攻撃力のSTRと魔法攻撃力のINTになるべく多くのステータスポイントを割り振り、【マジックアロー】のランクを上げる事を最初に意識した。
【マジックアロー】と同じくよく使う【ファイアーボール】にスキルポイントを多く割り振る事も考えたが、プレイヤースキルである近接戦闘との組み合わせが持ち味の個性として考えると他の組み合わせから生じる新たな可能性も残しておきたくバランス良く振った結果、Dランクに落ち着くことになった。
リンカはSTRにステータスポイントを多めに割り振り、《時と補正のエリア》で生み出された特殊なスキル発動の組み合わせであった【パリィ】をDランクに、【スラスト】をD+ランクに持って行く。
組み合わせ対象には入っていなかったが、ダブルスラッシュも攻撃コマンドとしてよく使うスキルであったことからD+ランクに行くまでスキルポイントを割り振った。
特殊なスキル発動習得についてはまだこの時点でもリンカはシキには言わなかった。
お互いにお互いの個性を言い合い、自分自身の認識とすり合わせしながらステ振りをしていく時間はシキとリンカにとって有意義な時間だった。特にシキは、当初から面倒くさがってサラに一任していたことを今更ながらに反省する。
「今思えば、サラにほとんど丸投げだったな、俺」
「今更?私、何回かその事言ってたわよね?ピンときてなかったの?」
「いやあ、なんというか、その時は、半分くらいそんな事ねえだろ。となぜか思ってた」
「呆れた・・・。本当、AHにきて、猿から人になれてよかったわね」
「おいおい、猿は言い過ぎだろ」
「そう?猿に失礼かしら」
「うきー」
「ふふ。なんにせよ。色々な経験を経て少しづつ大人になれてるってことじゃない。いい事よ」
「全面的に上から目線でなければもう少し素直に喜んでるんだけどな」
「私は至って普通に接しているわよ」
「もう少しこう、そうだな。相手を忖度する気持ちがあるといいのかもしれないな」
「それは、もう少し・・・、先・・・」
言葉の応酬を楽しんでいたつもりが、ここで歯切れが悪くなり、少しうつむきながら上目づかいで答えるリンカにしおらしさを感じる。
おいおい、ドキドキさせるなよ。今日のベッド事件に続き、調子がやや狂う。
天邪鬼同士の歩み寄り。その事への意識に頭が行っていたシキだったが、いざリンカの態度がいつもと違うとドギマギしてどうしていいかわからなくなる。リンカは混乱するシキをみて、少し溜息をつきながらもしょうがないわね。と言葉こそないが表情で応える。
「と、と、とりあえず一旦別行動するか?」
「なに、ドモってるのよ」
「いやあ、まあ、そうだな」
お前の態度が変だからだろ。と言いたいが、今は抑えておこうと深呼吸をしながら精神を安定させるシキだった。
次回も月曜日19時に投稿します。




