42話 ACT11-3
シキと一度別れたリンカは、一人酒場で待機。リンカ、マリアとお互いの格好を共にシキから聞いていて、マリアから話しかけてくる手はずになっていた。
「こんにちは。初めまして、リンカさんですか?」
「あ、はい。こんにちは。あなたがマリアさんね」
見た目はおかっぱ頭の猫耳、メイド姿の獣人化の女の子。ネコ科の獣人化を選んだプレイヤーなのか、種族がヒューマン以外になる気化プレイヤーとしての獣人化なのかは判断の難しいところである。
グレーのノースリーブに大きめな襟、薄い紫のミニプリーツスカート、黒と紺が交互に入った線のニーソ、グレーのショートブーツの組み合わせの格好をしたリンカでも種族を獣人族に変えて帰化プレイヤー風を装うのは簡単なように思える。
自身が猫耳をつけた姿を想像し、ないない。と一人で心の中でツッコミをいれてみるリンカ。ロングヘアーでキリッとした目をしている自分はどちらかといえば狐なのか。いやいや、一体何を考えているんだと。マリアを目の前にして恥ずかしくなる。
「私の格好気になりますか?シキさんから聞いているかもしれませんが色々事情があってのこの格好なので私が本当にしたい格好とは違いますよ」
「そう・・・、なのね。でもすごく可愛いわ。私には似合わないだろうけど、そういう格好してみたいと思えるくらい可愛いもの」
「リンカさんも種族変更しましょうよ」
「え、いや、私は」
「大丈夫ですよー。リンカさんはキリッとしていて綺麗なので、狐科とかですね?」
まさかのドンピシャリ指摘。笑ってしまったリンカに不思議そうなリアクションをするマリア。
「やっぱり狐なんだな。って思って」
「もしかしてご自身でもそう思ってました?狐、可愛いですよ。逆に私は似合わないのでうらやましいです」
「何言ってるのよ。猫のほうが圧倒的に可愛いじゃない。可愛い動物ランキングをどう見たって狐が猫に勝てることはないでしょ?」
「リンカさんは猫がいいんですね。お互い、隣の芝は青いってことですね」
二人は最初のやりとりにてお互いの印象を悪く持たずに、打ち解けられた事にお互いが心の中でほっとした。これから話す本題のやりとり次第では、また会う前のお互いの印象に近しい感覚を持ってしまうかもしれなかっただけに、少しでもリラックスした会話ができたのはよかった。
マリアの置かれている状況も踏まえ、会話の内容次第ではマリアの立場を悪くする危険もある為、二人はリンカの部屋に移動する。リンカの出したお茶をフーフー言いながら飲むマリアをやや愛おしい目で見ながら大変に座るリンカ。実は、リンカは猫好きの美少女好きだった。
「ありがとうございます。リンカさん・・・、あの、私を見る目が本当に動物やペットを見ているようなんですけれど・・・」
「え、本当に?ごめんなさいね。シキから聞いていた話では深刻な話ばかりだったから、こんな可愛い子だったんだと思うとそれはそれでギャップ萌えしちゃって」
「あはは、リンカさん、どストレートですね。でもシキさんとの会話の内容の通り、この後、私達がする事は深刻な事ばかりですよ」
「そうね・・・。マリアさん。私達の中には私は含まれているのかしら?、含まれていないのかしら?」
「これまた、リンカさん、どストレートですね」
「私は本音でぶつかるのがモットーなの。どこかシキさんは、私の事を天邪鬼の捻くれ者扱いするけれど」
「自分を棚に上げて何言ってるんですかね?」
「ね!!」
リンカとマリアの合流時に必要とされていなかった街を散歩しているシキはクシャミをする。
あいつら、会話の盛り上がりのネタにしやがってるな・・・。少しだけ寂しい。
しばしのシキネタで盛り上がった後、マリアは真剣な表情に切り替えてリンカの問いに答えていく。
「リンカさん、特殊なスキル発動習得しましたね?」
「え??なんでわかったの?」
「すいません。カマかけました」
「いきなりの確信をつくカマかけね・・・。ものの見事にハマった自分が情けないわ。策士ね。マリアさん」
「不快な思いさせてしまったらごめんなさい。《時と補正のエリア》は、レベルアップだけじゃなくて新たなフェーズを目指す為のクエストみたいなものだから、もしかしたらって思いました。元々リンカさんを頭数に入れてなかったのはシキさんから聞いていたと思いますし」
「そこへ来て、改めて頭数に入ってないの?って確認が入ったからカマかけてみたのかしら?」
「リンカさんはきっと私に対する印象はよくないんだろうなと思っています。いい訳をするつもりはないんですけど・・・。改めて私の考えを伝えさせてもらってもいいですか?」
「最初はね。でもそれって貴方が悪いわけじゃないわ。しょうがないもの。ただごめんね。どうしても私の中でうまく消化できなくて。ぜひ改めて教えて」
「はい。私は帰化プレイヤーを装える仲間を探していましたが、その仲間が一人居ればいいとは思っていたわけではありません。もちろん多ければ多いほど良いという事でもないです。人が多いと意思の疎通がとれないですしね。決行日まで時間もなかったので、とにかく最低でも1人とは考えていました。そこでシキさんと出会うわけですが」
「特殊なスキル発動を持っていたからこそ声をかけたシキからを提案された同行メンバーは特殊なスキル発動を持っていなかったと」
「私は、潜入のハードルをあげたくなかったのでシキさんに対してネガティブな反応をしました。ただ前提として特殊なスキル発動が有無があっただけで、シキさんが信頼する方であればもちろんウェルカムである点をしっかり伝えていかなったのはよくなかったかな。と後で反省しました」
マリアの目を見れば取り繕っているようには見えない。出会ってからまだいくばかの時間しか一緒には過ごしていないが、マリアの誠実な態度を見れば疑う事への意識は薄れていく。
「そうなのね。必要とされていないのに無理やり食い込むのは嫌だったけど、私は私で意図があってAHで活動していたから。帰化プレイヤー関連の事であれば自分が関われないのは、ここ数日間はフラストレーションと戦ってた」
「そうですよね・・・。でも今は、リンカさんは特殊なスキル発動も習得している」
「そうね。結果からみればシキとマリアさんに感謝しないと」
「いえいえ。すべてはリンカさんの実力ですよ。でも本当にうれしいです。ずっと一人で戦ってきたので、ここ数日でいきなり2人も仲間が増えるんですもん・・・。感慨深いです」
感慨深いと言ったマリアの目頭は熱くなっている。
テーブル越しでみてもわかるほどだったが、リンカはマリアの気持ちを察しながらもその点については触れないで会話を続けていく。AHの世界にいて、起きてきた事件に抗っているのであれば、そこに苦労がないわけはない。
シキだって、リンカだってそうである。ましてや自分を犠牲にしてでも大事を為そうとしているマリアであれば尚更である。今ここでリンカやシキができる事は、中途半端な言葉をかける事よりもマリアがこれから行おうとしていることへの成功率の角度をいかにして感じさせてあげられるか。
そして一緒の方向を向いていることの安心感を与えることである。
「そう言ってくれると私もうれしい。もう色々な探り合いは終わりね。マリアさん、全面的にあなたに協力するわ。どうすればいい?マリアさんの意向に私もシキも合わせていくつもりだから」
「リンカさん、ありがとう」
お礼と共にしみじみした空気を一変させたマリアはメモをリンカに差し出す。彼女の意識の高さを伺える。己の感情のコントロールは得意なのだろう。
「これは?」
「前回シキさんに伝えた情報を詳細にした内容が更新されています。決行日1日前が幸いしました。今日、明日でシキさん、リンカさんをEGに一人づつ合流してもらおうかと思っています。今日はシキさん、明日はリンカさんですね」
渡されたメモには、集会前にシキやリンカを帰化プレイヤーに装わせてEGのギルドへの参加とその後作戦の手順が書かれていた。
次も月曜日の19時に投稿します。




