23話 ACT7-1
取得したポイズントードの皮の保管場所を考えていたシキはマイページを探しているとアイテムボックスを見つける。
アイテムボックスの中にポイズントード皮を移動させる。この一連の動きもすべて思考コマンドと呼ばれる考えた事がそのまま動きになる機能である。
シキはさらに探索を続ける。
レベル上げもしていきたいのでエンカウント(遭遇)するモンスターはすべて戦っていく事にした。
素材として必要だった追加のポイズントード皮もポイズントード2匹目3匹目を倒して無事素材取得。
次なる目当て素材を取得する為に、討伐が必要なモンスター、フォレストスピナーとのエンカウント(遭遇)。
でかい蜘蛛のモンスターであるフォレストスピナーは、口から糸のようなものを吐き出し相手を捕らえてから、8本ある足のうち前方に向いている6本の足で表的を叩きつけるように攻撃をしてくる。
シキはフォレストスピナーから吐き出されるすべての糸を交わす。
シキにかわされた後の糸のいくつかは岩にへばりつき、その後フォレストスピナー自体は糸にへばりついた対象物に対してその巨体を移動させ足の攻撃を仕掛けていく。
一定の攻撃パターンだと読んだシキは、フォレストスピナーへの攻撃で一番攻めやすい形を組み立てる。
吐き出された糸に絡められた対象物に攻めてくるタイミングでは、バックやサイドが完全に無防備状態になるのが分かっていたので、そこで一発打つけていくことが最良の攻撃と判断。
フォレストスピナーが糸を吐き出したタイミングで急いでの背後に周り、そこで【マジックアロー】を右足に宿し飛び蹴りをする。
【マジックアロー】を宿した蹴りを無防備状態で食らったフォレストスピナーは一発で吹き飛ばされ光の粒子となって散った。
フォレストスピナーの糸を取得。
「すごい!!今のってなんですか?」
素材をアイテムボックスに入れて一息ついていたシキの後ろから声が聞こえる。
シキが振り返るとオカッパ頭で猫耳のメイド服をきた獣人プレイヤーの女の子に声を掛けられる。
他のプレイヤーの気配を見ながら行動していたつもりだったが、見られていたとは・・・・
探りを入れてみるか?
「こんにちは。今のって何ってどういうこと?」
シキはわずかな可能性に期待して質問で返してみる。
「何言ってるんですか?パンチにキックに【マジックアロー】を宿してたじゃないですか?公式で発表されているスキル攻撃にそんなスキルの使い方ないですよね?」
うむ、一部始終見られてるな・・・。
「そうなんだ。あはは。俺もよくわからないんだよな」
なんて誤魔化すのが下手くそなんだと自分にツッコミをいれながら、後ろに手を当ててその子とは違うあっちの方向に視線を持っていきながら笑って誤魔化しておくシキ。
「そうなんですね。ご紹介遅れました。私の名前はマリア。とあるギルドに所属している獣人族のプレイヤーです」
「俺はシキ。種族はヒューマンなのかな。実はまだログインして5日目のビギナーなんだけど、とりあえず武具でも揃えようかと素材集めでこの辺をフラついてた」
「5日!!5日目でそんなにすごいんですか?才能が溢れかえってますよ」
興味津々とばかりにシキとの距離を詰めてくる。
目の前でシキを全身みるように顔を上下させるマリア。
そんなに近づくなよ。
猫耳メイドのマリアに近づかれて照れるシキ。
これ以上探られていくともっとボロが出そうなので続きの素材集めの理由にこの場を早く立ち去ろうとする。
「そうか。ありがとな。褒めてもらったのはうれしいけど調子に乗らずに地道にレベル上げがんばるよ。それじゃ俺は素材集めするからここで」
「え!!ちょっとちょっと待ってくださいよ。私も一緒に素材集め手伝いますよ。今、ちょうど暇してて散歩していただけなので」
早々に立ち去ろうとするシキの服を引っ張って止めようとするマリア。
そう言われてしまうとなんとも断りづらい。
一緒に行動するとなると特殊スキルを見せないほうがいいだろうし、どう戦っていくのが疑われずに済むのかを考えながら戦わなくてはいけないのは結構しんどい。
服を引っ張られながら色々と考えるシキ。
このパターンは抵抗してもきっと無駄なパターンだと諦め、素材集めまでならと割り切って行動を共にすることで今のこのタイミングで立ち去るのを断念する。
「それじゃ、一緒にこの素材集め手伝ってもらっていいかな?」無理やり言わされている感を感じつつ。
「もちろんです」
マリアとフレンド登録した後、マリアから必要な素材を問われシキは鍛冶屋のオヤジ店主からもらったリストデータを共有する。
ここでシキはまた一つのミスを犯してしまう。
リストには鍛冶に必要な素材だけではなくドロップで手に入れられる武器も記載されていて、この情報だけで今のどんな武具一式を用意したらいいかも分かるようになっている。
その為、本来、魔法系統のウィザードがするべきではない武器が推奨されている事をマリアに見つかってしまう。
「なんで、木の杖からジャイアントベアーナックルの取得をしようとしてるんですか?」
鍛冶屋のオヤジ店主は言うなればAIである。
AIがシキの特性を認識した上でこの地域で取得する適した武器を抽出しているのはシキにはわかっていることだが、それを説明するとまた特殊なスキル発動に結びつきそうな気がしていて答えに困ってしまう。
「なんでだろうな。オヤジ店主ボケてんのかな」
ふーん。と明らかに疑わしき表情をしながらもマリアは「ジョブは何なんですか?」と追加の質問をしてくる。
信頼関係のないプレイヤー同士でステータスを見せ合うことがない。
その話を散々サラやリンカから聞かされてきているのは、もちろん覚えている。
マリアから「ジョブは何?」という質問は、逆に考えるとステータスを見せてくれと言われない事を意味していた。
シキの戦闘コマンドとウィザードというジョブのミスマッチ具合を考えると別のジョブを伝えたほうがいいかどうか迷うが、しばらく行動を共にする以上、下手にジョブを嘘ついて後でバレてしまうことを考えると、さらにマリアからの質問攻めにあってしまいそうなので、ウィザードと素直に答えておく。
ウィザードと答えるシキに「なんでウィザードなんですか?」と質問返しが来たので「ここを誘ってくれた奴に勧められて」と返す。
これ以上質問祭りはやめてくれー。
バトル以外にも集中しなくてはいけない事を抱えななくてはいけないことに少ししんどさを感じながらもシキはマリアと探索を続ける。
ところどころ現れる敵に、シキは木の杖を出現させ【マジックアロー】で気の塊をモンスターにぶつけていく。
一方のマリアは、と見るとシキの攻撃を見ているだけで何もせず「パンチキックバージョンやってくださいよー」をせがんでくるだけだった。
もはや疑ってる領域ではなく確認の領域だな。
そしてせがむ前に、そもそもお前バトル手伝えよ。
明らかに手伝う気もなくただシキを見学するだけで参戦という名の観察をしているように見えるマリア。
どうにかマリアの目的を先に知ることができないかを考えながら、引き続き行動を共にさぜるを得ない状況から逃げ出せないかも模索するシキだった。
明日は日曜日なので12時と18時で投稿します。




