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18話 ACT5-2

 VBCヘッドセットで行われるアバターへの意識リンク。


 ホロジェクターグラスのように段々と意識が遠のいていく感じと違って、まさに意識自体が別の体に移ってしまう感覚。

 移った先のアバターこそが、自分の本当の体なんだと思ってしまいそうになるほどである。


 もちろん現在のシキの場合に限ってにはなってしまったが、実体への意識リンクも可能。

 二つの体をまるで右手と左手を動かすかのようにできる感覚。


 リキからはリアルとの通信は見られる可能性があるので極力するなと言われている事情もあり、リンクへの意識はしないよう気をつける。


 ホロジェクターグラスの時とは違う体の感覚を確かめていたシキのアバターはAHアストラルホライズンにログインする。


 ログインし移動したその場所に、なぜか着替えをしていて下着姿になっているロングヘアーの美少女がいる。


「え、あ!!」


 一瞬の空気が凍ったような時間を味わい、シキはその変な擬音を出す。

 周りを見渡すとこの空間が明らかにその子の部屋の中だというのがわかる。


「テンパったフリしながらノゾキなんていい度胸してるわね」


 その言葉が発せられるのとほぼ同時に


「【スラスト】」


 わずか1mほどしか離れていないシキに小剣の刃の先が突きのスキルを帯びて飛んでくる。


「ちょ!!、おい」


 瞬時に飛んでくる小剣の突きを避け、シキは声を出すが意味はなく、下着姿の女の子は次なる攻撃を仕掛けようとしていた。


「ちょ!!、まて。ってかマジで落ち着いてくれ。不可抗力なんだって」


 シキは攻撃を避けた動きにあわせて下着姿の美少女の近くまで潜り込み両手を掴み、攻撃を止める。


「へー、突然、女子の着替えをノゾキに来て、あまつさえしっかり戦闘態勢に入っていて、私の両手をふさいでいるあなたの行動をみて、どう不可抗力と判断したらいいのかしら?」


 掴まれている両手を振りほどこうと力を入れて、睨みつけてくるその子をみて、シキはこの状況を理解してもらうことは難しいと察する。


「わかった。とりあえず目をつぶる。っで攻撃をしてこないと約束してくれるなら手も離す。

 だからその間に着替えてくれ。

 その後一回だけ言い訳をさせてくれ。

 それでも納得いかなければ俺を煮るなり焼くなりしてくれていいから」


 そう言いながら、シキは目をつぶる。


「いきなりノゾキして襲い掛かったかと思えば、服を着がえろとか。何がしたいの?

 言ってる事とやっている事が矛盾しているあなたの話を聞いて納得する内容があるとは思えないけど。

 報復の覚悟ができているのであれば、言い残す言葉として言い訳だけ聞いてあげる」


 煮るやり焼くなりしてくれとは言ったものの、完全に報復への確約を取るこの子の発言からは退路がないのを覚悟するシキ。


「わかった。手を離すぞ。着がえろよ」


「わかってるわよ。散々、舐めるように見尽くしておいて何言ってんだか。ちょっと待って」


 いやいや、別にそこまでしっかり見てねーよ。

 一通りは見ちまったが・・・。

 心の中でノリツッコミする。

 気配で距離が離れるのを感じ、ちゃんと言った約束は守ってくれる奴なんだと思いながらどう話を持っていくか考える。


「はい、終わったわよ」


 目を開けると、グレーのノースリーブに大きめな襟、薄い紫のミニプリーツスカート、黒と紺が交互に入った線のニーソ、グレーのショートブーツを履いたロングヘアーの目がややキリッとした美少女が変わらず睨みつけている。


「OK、OK、まず、落ち着こう。深呼吸だ」


「もう、落ち着いたわよ。っで、冷静に考えたらあなたどこから現れたの?瞬間移動のスキルを持っているプレイヤーなんていたかしら?」


「その前に、自己紹介しようぜ。俺はシキ。お前の名は?」


「ノゾキ魔に名を伝えるのは何だけど、私はリンカ」


 ノゾキ魔という言葉にどうも心を刺されるシキだが、ここは我慢我慢と自分に言い聞かせる。


「仮にノゾキ魔だとして、こなんに堂々と覗く奴いないだろ。

 リンカ、俺は今この瞬間に、AH(アストラルホライズン)にログインしたんだ。

 そしたらなぜかいきなりここだったんだ。

 そもそも瞬間移動スキルもないし俺の意思でここにいるわけじゃない」


「え??、あなた、今、リンクしてログインしたの?今、AH(アストラルホライズン)がどうなってるか知らないの?」


 そうか、まずい。

 シキは、AH(アストラルホライズン)に今ログインできた事を言った後に後悔する。

 だがこの形で出会ってしまった以上、説明はしようがないと思い、素直に事の経緯を説明し始める。


 シキ自身はまだ始めたばかりのビギナーであり、知り合いに勧められてAH(アストラルホライズン)を始めたこと。

 サラの詳細に関しては今、あえて言わないようにした。あわせて色々な特殊な状況の説明も省き、鉄仮面の話も省く。 

 鉄仮面の詳細は省くが変な奴に絡まれてPK(プレイヤーキル)されそうになってPKされる前にリンクしたが知り合いは戻ってこなかっただけではなく、知り合いがリンクできない状況を発見した事も話した。


 実際にはこの時点ではホロジェクターグラスでのログアウトだがその点も言わなかった。


 リアル世界では少しだけ、AH(アストラルホライズン)に行ったプレイヤーがリアル世界での実体で反応がない情報が出回り始めている事。

 シキは実体にもリンク出来て、またAH(アストラルホライズン)にログインできることもわかったので、戻ってこれなくなった知り合いを探しに戻ってきた所、今の場面に出くわしてしまった説明もしっかりっ加える。


 いきなり情報開示は気をつけろとリキに言われたが、そもそも着替えている女子の部屋でログイン場所スタートとかもはや、リキが改修加えたことによるバグなんじゃねーの。とすら思えてくる。


 一応瞬間移動スキルの疑いを晴らすためにも、シキは自分のステータスをリンカに見せる。


「ほらな。これで信じてくれたか?」


「本当だ・・・。なんでここにいきなりログインしてきたかはさておき、あなたが今ログインしてきたって事は信じてあげる。

 それはそうと、そのレベルの低さでさっきの私の攻撃を避けられたわね」

 

 シキのステータスをみたリンカからは疑いの眼差しは消えていた。

 信用できる相手でないとステータスを見せるのはダメと言っていたサラの言葉を思い出しつつも、リンカの信用を少し得られたことを感じた。


「チカン疑惑でいきなりキルされるのはたまんねーって気持ちが動きを補正させたんじゃないか」


「何言ってんのよ。さすがにキルまではしないわよ。ボコボコにして晒すつもりだったけど」


「晒すんかい」


「当たり前でしょ。

 本来であれば運営がリアル世界でいう警察の役割を果たさなければいけないのに、この一連のログアウトバグとリンクバグを起こしててそちらの対応で忙しいんじゃない。

 運営通知等の機能も動いてない気がするわ。

 こういう時は不届き者が出やすいのよ。

 不届き者の中でも女性に迷惑をかけるチカンとかノゾキはちゃんとボコボコにして、周りの人たちに知らしめないと。

 でも、あなたは、本当に不可抗力だったみたいだからノゾキ魔疑惑は晴らしてあげる。

 でもさすがに裸見られたんだからペナルティくらいは課させて。

 しばらくは私の家来ね」


 いや、下着姿で裸はみてないんだが。と言い返したかったが、わかってんでしょ?と言わんばかりの表情をされて素直に従うシキ。

 この手の性格のやつには、何を言っても10倍くらいで返されそうなので、従っておこうと本能で反応した。

 家来って、お前、どんなSキャラだよ。


「家来っていうかパーティー組めばいいんだろ」


 リンカからのパーティー申請を受け承認する。


「パーティーだけど私の命令はしばらくは絶対ね」


「へいへい」


「あと、一発だけ、ビンタ」


 その言葉とともにおもいっきりのビンタをリンカから浴びせられる。

次は明日の21時に投稿します。

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