117話 ACT19-47
シキはガインに対してスピード勝負で戦えるパッシブスキルを持っていない。もう一度スキル力で圧倒的な力を持つ【ファイヤーブレストマジックアロー】を発動してガインのスピードに打つけるか否かを悩む。
だが、シキはどんなにシュミレーションをし、【ファイヤーブレストマジックアロー】のスキル力を持ってしても、極限までに俊敏性(AGI)を極めて攻めてくるガインの攻撃を押し殺せる可能性は低く感じた。ともすれば、組み合わせ式特殊なスキル発動は無駄な消費で終わるリスクが高くなる。
シキが次なる手で悩んでいる時間すら惜しむように、ガインは次なる攻撃を仕掛ける。スピード勝負で押しているこの状況を勝機であるとガインは見出していた。
再びガインの高速移動による大剣の乱発攻撃が鎌鼬の渦となり、シキに襲い掛かる。
「【ファイヤーボール】、【マジックアロー】」
シキは右拳に炎の波動を、左拳に波動の矢を、絡ませて迫り来る鎌鼬の渦の刃に拳を打つける事で衝突を起こし牽制を図る。
だがその牽制を見透かすようにガインの鎌鼬の刃は止まらない。
拳と刃の衝突は、次第に出せる拳の手数の少なさにシキの身体は蝕まれていく。それはまるで何かに侵食されていくような刻みを身体は覚えていく。そしてシキはついに地に膝を着く。その場面を待ち望んでいたのか、膝に地をつくシキに合わせて、ガインは先ほと同じように、シキの前にその姿を表し、直接目の前から斬り下ろす。
再びシキの目の前に姿を現し攻撃を仕掛けるガインは、直接対峙する事で自身が攻撃を受けるリスクを伴うが、鎌鼬の渦をを絡めた攻撃手法に弊害を感じていた。その姿を消し、高速稼動し自身のダメージを受けることなく相手にダメージを与え続ける事ができるとしても、致命的なダメージを与えるのは難しい。
だからこそガインは、改めて自身が攻撃されるかもしれない危険を晒してでも、敵の目の前に姿を現し大きく振り上げた大剣を斬り下ろす。大きなスキル発動をする訳でもなく、通常範囲内の攻撃となるが、スピードに振り切ったガインの中で最適で最高の攻撃になる。
「【気炎万丈】」
ここでシキは魔法拳士の新たなスキルを発動する。時間制御でカバーするには身体負荷が高く、これ以上時間制御をする事を避けたい。だが何かをじっくり仕掛けるほどのスキル発動が選択肢に無い。体は全身、刃に蝕まれ、機敏に動かしスピードで応酬する事も難しい。ともすれば、自分の中で控えている新たなスキルを発動することで、応戦するしかないといった防衛本能で新たなスキル発動にシキを向かわせた。
【気炎万丈】とは、全身を【マジックアロー】と【マジックバリア】を重ね合わせた波動で纏い、魔法攻撃力(INT)と防御力(VIT)を高める魔法拳士のスキルだ。
極限までの俊敏性(AGI)を高めたガインの刃を交わすことも、大剣の物理攻撃力(STR)を打ち倒す応酬攻撃もできないと判断したシキの本能が導き出した【気炎万丈】は、シキが両腕をクロスした事でその波動の厚みを増し、大剣の攻撃に対しその身体をノックバックする程度に済ませた。
そして、そこで出来た隙をシキは見逃さなかった。
「【飛拳燕圧】」
時間制御スキルで大きく身体に負担を掛ける事もなく、作りあげた隙を十分に使い尽くす。作り出された高速ジャブは今度は十分な数で何十発もの波動の拳を放ち、ガインはその波動の集中砲火にその体は見事に打ちのめされて大きく吹飛ばされる。
そしてシキは、吹飛ばしたガインに飛び掛り追撃を図る。
次の衝突がお互いの中で決め手になるのだと、共鳴しあった。
その共鳴は、まるで暗闇の中に己を放り込まれた中で、自身もしかり、瞳の先にある相手が眩しく光り、互いが互い、呼応し合っている様だった。そんな感覚をシキもガインも覚えた。
「【ダークブラッドブロー】」
ガインはこれ以上のダメージを受け続けると戦闘不能状態になるところまで来ていた。物理攻撃力(STR)を極振りした戦いも、俊敏性(AGI)に極振りにした戦いも、認めたくないものだが、シキを圧倒できる手段にならなかったのを理解している。そこへ来て、自分は何十発もの高速ジャブの波動で吹き飛ばされ、追撃を受けようとしている。
数秒後先に見えている敗北という世界を、最後の悪あがきでなんとかする為にガインが選んだ最後の攻撃が【ダークブラッドブロー】だった。黒紫の波動【フィアマインド】に包まれた大剣は、自身のHP10%削る変わりに相手に400%のダメージを与える事ができる【ブラッドブロー】と組み合わされた【ダークブラッドブロー】としてシキと相打ちに持っていく為の最後の砦となる。
対してシキは、ガインの最後の砦にふさわしいスキルを控えて迎え撃つ。
「【鎧袖一触】」
瞬間的な時限強化スキル。命中率(DEX)、防御力(VIT)、魔法攻撃力(INT)、俊敏性(AGI)すべてパラメーターを物理攻撃力(STR)に反映させる。相手の一撃必殺にあわせて使うには最高のスキルである。
【ダークブラッドブロー】の大剣は、【鎧袖一触】の波動を纏ったシキの右拳によって、破壊される。刃を突き抜けて伸びてきた右拳はガインの顔面を大きく捉える。ガインはシキの右拳が迫ってきたその瞬間、この長きに渡る戦いの終止符が頭に過ぎった。
次回も月曜日19時に投稿します。




