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116話 ACT19-46

 だが今は【心操身隷(しんそうしんれい)】に頼らなくてはならない。


 時間制御によって出来た時間を使い、シキはガインが高速で常に背後から切り刻んでくる鎌鼬の渦からの脱出を図り飛び上がる。


 そしてすぐ様、


「【ファイヤボール】」


 シキは右の掌に炎の塊を発動させて、ガインが作り出している鎌鼬の渦に向かって投げつける。本来であれば体の覆うほどの大きさまで発動させてから投げつけるべきだが、時間制御スキルは長く発動していると体と心臓への負荷が重い。だからこそ大きなダメージを与える事を目的とせず、状況の打破を一番として、小さい状態で使ってしまう。


 時間制御は解除される。ガインが作り出した鎌鼬の渦で【ファイヤーボール】は爆発する。すかさず地面に着地して、ガインの元へと飛び出す。


 ガインは爆発元からすぐにシキの元へと飛び出し、しなるように振りかぶった大剣をシキに浴びせる。シキもまたその大剣に大きく振り上げた拳を打つけていく。


 その衝突の勝利はガインの大剣だった。


 シキは大剣によって吹き飛ばされた右腕を即座に地面へと手を回す。そして地面に手をつけた右腕を軸にして右足で後ろ回し蹴りをガインに仕掛ける。


 しかし、シキの即座の動きに対しても俊敏性(AGI)が完全に勝っているガインには通じない。ガインはシキの後ろ回し蹴りを受ける前には姿を消して、再度シキの背面へと大剣を鞭を打つように斬りこんでくる。


 シキは自信があった反動攻撃をガインに交わされた状況に悔しさを滲ませるが、その感情に浸っている余裕などない。防御する事が精一杯と判断したシキは、ガインの攻撃に対してすかさず左拳で裏拳を放ち、大剣と衝突させてダメージを防ぐ。


 だが、やはり力負けして弾かれる。ノックバックし体勢を崩したシキを見てチャンスと判断したのか、ガインはシキに直接目の前から斬り下ろす。


 ガインがいくらスピードを有していて、背後から攻撃を仕掛け続けられるとはいえ、シキに少しばかりの間を与える限りは、シキもいくばかの防御姿勢がとれる。っとなれば完全なる無防備状態でダメージを与えられる訳ではない。よって致命的な攻撃にならない。


 だからこそ致命的なダメージを与えられるこの瞬間をガインは待ち望んでいた。


 そして、これ以上致命的なダメージを与えられる事に危険を感じていたシキは、可能な限り発動を避けたかったあのスキルを発動する事になる。


「【心操身隷(しんそうしんれい)】」


 再び時間制御スキル。時間制御を起こしたシキを見ている相手の立場からすると、自身が認識できない零コンマ何秒の世界で変化があったような感覚に襲われる。意識の連続にある先の世界では、相手が瞬間移動したような動きにさえ感じる。


 何度も【心操身隷(しんそうしんれい)】をシキに発動されているガインからすれば、またシキが発動するのは容易に想定できる。だがガインはシキの不意をついたこのスピードと間であれば【心操身隷(しんそうしんれい)】を発動しても致命的なダメージを防ぎきれないと判断した。


 しかし、ガインの読みを一歩先まで見据えているシキは、【心操身隷(しんそうしんれい)】の限界に挑戦する。心臓への負荷を耐えれば時間制御の時間を長くできると思っていた。だからこそ【心操身隷(しんそうしんれい)】の発動を迷わず行う。ガインが想定している零コンマ何秒の世界をもう少しだけ伸ばせられればいいのだ。

 

 無論マリアやリンカを見ていて、パッシブスキルを何乗にも掛けて体を破綻させてきた経緯を見てきているだけに、準える事だけは避けたいが、この場面においてはやむを得ない。


 そして時間制御スキルによって反撃の機会を作り出す事ができたシキは、次なるスキル発動に打って出る。


「【飛拳燕圧(ひけんえんおう)】」


 ジャブで拳の波動を距離がある相手に打ち込む事で、何連発にもなって相手にダメージを与えるスキル。シキは再び、【心操身隷(しんそうしんれい)】で時間制御し【飛拳燕圧(ひけんえんおう)】のジャブで叩きのめす戦略に出た。


 だが、今回がリンカの時と違うのは、ガインとの間に距離があまりない事である。流石に時間制御を長くできたとはいえ、体勢を整えて仕掛け直すほどの余裕は持てない。そうなるとリンカの時のように何十発もの高速ジャブを全身に拳の叩きつけられなかった。


 時間制御が終わる。ガインは【飛拳燕圧(ひけんえんおう)】でジャブの波動を何連発と受けるが、そのジャブで自身の体を吹き飛ばされるほどまでにはならかった。結果、シキもガインの大剣を体に切り込まれて、互いにダメージを受ける結果となる。


 シキは、さらに後方へと体を移動させ、ガインとの間で距離を取る。


「「ハァ、ハァ、ハァ」」


 シキとガイン、互いが互いに呼吸が荒くなってきている。シキはスキル威力で勝てたとしてもそれが完全な勝利に繋がる訳ではないと、己の力に驕ったことを猛省する。


 相手はあのガインである。分かりやすい能力差だけで勝てるほど甘い相手ではない。ガインが愉悦を持ってシキを成長させてしまったように、シキもまた油断した戦いでガインを成長させてしまっているのだ。


 これ以上の連続時間制御スキル発動は、どうにか避けたい。

次回も月曜日19時に投稿します。

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