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115話 ACT19-45

「もちろんこのままやるんだよな?」


 シキはガインに戦いの意思を再確認する。【ファイヤーフロストマジックフロー】によってガインとシキの戦闘力は、大きな開きがあるのを一目瞭然にした。


 だからといって降参するほどガインが合理的な考えを持っている訳がない。


 これ以上の戦いを続けて見えている結果が明白でも、ガインが戦いを止める判断が許される立場でないのはシキも分かっている。シキ、ガイン共にこれまでの経緯を考えれば、もちろん個人的な感情だけで戦いを止めるような状況ではない。


 だが、シキはできればこれ以上のガインとの戦闘は避けたかった。だからこそ戦いを続けるかどうかの問いを敢えてしてしまう。少しだけガインの心境の変化に掛けてみたい。


 ガインがシキを認めたのは、戦闘力であって思考ではない。力は時として思考を肯定に繋げる。勝てば官軍と言われる言葉が生まれるほどだ。


 力の差が歴然としている戦いにおいて、突き詰めた戦いに待っているのは、絶対的な勝利と敗北である。そしてその敗北には、その敗北によって現在の思考を否定せねばならず、その先に得られる未来への希望があればいいが、もしそれがないとするのであれば、絶望しかない。


 今までもこれからも一人で戦っていくと決め込んでいるガインには、敗北の先にある、次なる指針の未来への希望が待っている訳ではない。そこが仲間がいるマリアやリンカと決定的に違うところである。


 だからこそシキはダメ元で最後の意思の確認をしてみた。全くと言っていいほどに期待できる返答が貰えるわけがないと知っていても。


 シキは再び構える。その表情は口元が、気持ちの中にある憤りを吐き出さないように、もごもごしていて、困っている視線をガインに向けている。


 そんなシキの心境を汲み取ったようにガインは返答する。 


「ふん、貴様のその甘い発言は、自分が何かを仕掛けるタイプではないと主張している、まさにそこに通ずるわけだな」


 ガインが戦いを続けるのは当たり前である。だからシキの問いには直接答えない。シキに甘さを捨てよと言わんばかりに再びガインは【フィアマインド】を詠唱し、再び戦いが始まる意思表示を持ってシキの質問に答えていく。


 黒紫の波動は、再び大剣を渦の中心として大きななうねりを上げていく。だがその波動は、先ほどより威力がお世辞にも増しているとはシキは思えなかった。だがこれがガインの今出せる最大の力になる。


 互いに認識している。次の衝突こそがこの戦いの最後であると。ガインが最後に示してくる攻撃に対して、シキは何を持って制せばいいか悩んだ。【ファイヤーフロストマジックアロー】を連続発動することでシキ自身の体調パラメーターに悪影響を与えるのは間違いない。


 だが、今のガインの状況を考えれば【ファイヤーフロストマジックアロー】を発動するまでもないとシキは判断する。かといってスキル発動をしなければ、基本の戦闘力差でシキが劣っているのは、リンカとマリアのステータスをガインが吸収した段階で明らかとなっている。


 シキが全力を出した際の戦闘力差に大きな開きはあっても、通常時や多少のスキル発動では絶妙な戦闘力差がシキとガインにはある。


「【攻撃力上昇(オフェンシブアップ)】、【集中(コンセントレーション)】、【バーサーク】」


 攻め方に悩んでいるシキを尻目に、自身が次にすべき事に迷いがないガインは【フィアマインド】に合わせて、基本職ファイターのパッシブスキル【攻撃力上昇(オフェンシブアップ)】、【集中(コンセントレーション)】に上級職バーサーカーの攻撃力上昇スキル【バーサーク】を発動した。

 

 そして、ガインが次に仕掛けてきた攻撃の凄まじいスピードによって、シキは誤りに気づく。


 視認できないほどの速さでシキのすぐ斜め上に現われたガインは、まるで大剣を小剣のごとくにしなやかに使いこなし、シキに右斜め逆袈裟斬りを浴びせてきた。スキルを発動する余裕すらなかったシキは右腕の籠手で受けるが、次々と迫ってくる攻撃の嵐の前では無意味に等しい防御だ。


 ガインは肉体を憎悪の黒紫波動で膨張させた鎧を纏っていた時の物理攻撃力(STR)ほどではなかったが、そこはしっかり先ほどの【攻撃力上昇(オフェンシブアップ)】、【集中(コンセントレーション)】、【バーサーク】のパッシブスキルで補完している。


 膨張された鎧によって活かされていなかったが、無論この場面ではマリアから得ていた俊敏性(AGI)の優位性をガインは大きく発揮した。


 完全に勝敗を決したと思い込んでいたシキの虚をついたガインの攻撃は、シキに反撃の機会を許す事なく、四方八方ありとあらゆる方面から大剣の刃をシキに次々を浴びせていく。それはまるでマリアが【バックキル】をガインに連発している時のような動きだ。


 全身が大きな鎌鼬の渦に巻き込まれるように次々と切り刻まれるシキ。しかもそのほとんどの攻撃が大剣である。マリアの時のようなダガーではない。一つ一つのダメージの大きさは、もはや防御が全く持って通じないほどである。


「【心操身隷(しんそうしんれい)】」


 時間制御スキル。シキは、またしても心臓に負荷が掛かるような重みを感じる。最大出力や連続発動で影響する体調パラメーターの影響とはまた違う負荷である。これを何度も何度も発動してはいけないと体から悲鳴を出されているように感じた。

次回も月曜日19時に投稿します。

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