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113話 ACT19-43

「【魔法攻撃力上昇(マジックパワーアップ)】、【マジックスクエア】」


 シキは魔法攻撃力を上昇させる【魔法攻撃力上昇(マジックパワーアップ)】と自身の半径5m以内に魔法陣を作り出し、陣内で魔法攻撃を行った際に威力が増大する【マジックスクエア】を発動する。


 シキとガイン、お互いが詠唱したパッシブスキルは前回の戦いを彷彿させるものである。


 シキのパッシブスキルに、ガインも笑みを零す。


 前回の戦いに比べてお互い相当なステータスの向上をしている。再びお互いが当時のパッシブスキルを発動し、最高の状態に持って行く。大剣を両手で持ち構えるガイン。武道家として右半身をやや後ろに持って行き構えるシキ。


 お互いが構えた状態から動き出さない。しばしの時間が経つ。


「ふん、あの時の戦いも踏まえた清算をしようではないか」


 シキとガインは、共に、互いに再び衝突した際、あの時のように鬩ぎ合うのか否か、どのくらいの大きな違いがあるのか気になっていた。お互いのスキル詠唱を聞き、お互いに微笑する。


「ああ、そうだな。【ファイヤーボール】、【マジックアロー】」


 シキが右手に発動した【ファイヤーボール】は、マリアとの戦いの時童謡、その存在感を露呈するようにシキの体を覆い飲み込んでしまうほどに大きな炎のうねりを上げた。


 また、左手に発動した【マジックアロー】もまた拳を中心に波動の矢が何十にも蔓延るように動きを見せている。


 シキはその二つのスキルを合体させる為に右手と左手を大きく組み合わせる。


 【ファイヤーボール】と【マジックアロー】を組み合わせた衝突だけで、大地を震わすほどの衝撃と振動を起こす。何度も危機を救ってきた特殊なスキル発動の組み合わせスキルだ。炎の波動と魔法矢が蔓延る波動は絡み合うように大きな渦を作り、その渦はシキの右拳を大きく宿っている。その大きさたるや、もはやシキの体をゆうに大きく超えている。


「ほほう、これが魔法拳士として生み出す組み合わせスキルか・・・」


 想像を超えたスキルの威力に本来であれば怒りと危機感を覚えなくてはいけないガインだが、純粋なプレイヤーとしても好敵手として、その圧巻の凄さに心魅入られていた。


 そして


「【ダークリーサルストライク】」


 シキのスキル発動へ呼応するように、ガインは【ダークリーサルストライク】を発動する。全身を覆っていた黒紫の波動の【フィアマインド】は大剣へと移動していく。ガインが起こした【ダークリーサルストライク】もまた今までの起こしてきた渦を何倍にも大きく上回っている。


 シキは、自身同等にスキル規模を大きく拡大させたガインに対して興奮が止まらない。それはシキが得てきたスキルアップやレベルアップとは違い、他の者のステータスを吸収したものであったとしても、今ここにある興味は、


 どちらが強いのか?


 ただそれだけである。


「いくぞ!!」


 言葉と共にガインの懐に入り込んだシキは【ファイヤーマジックアロー】を帯びた拳をアッパーで仕掛ける。


 あまりのシキの速さにガインは、気を抜くとそのまま心臓を持っていかれるような恐怖と身の毛もよだつ思いに駆られたが、一瞬の気も許していないガインにとって、その感情は逆に自身を高揚させるものでしかなかった。


 ここでは、シキは【心操身隷(しんそうしんれい)】を発動していない。完全なる勝利を目指すのであれば、時間制御スキル【心操身隷(しんそうしんれい)】を使うべきだ。そうすれば、ガインは【ダーク・リーサルストライク】を使う間もなく【ファイヤーマジックアロー】の拳を当て込めて、そこで勝利は確定する確率は高くなる。


 だが、それは真剣勝負における王道ではない。


 ここまで決して交わることのない己の信念をぶつけ合ってきた相手だからこそ、戦術なしで倒してみたい欲求に駆られたシキは、【心操身隷(しんそうしんれい)】を発動する選択肢すら考えに入ってなかった。


 今を持ってこの零コンマ何秒の世界で、時間制御スキルの発動がされていない状況を理解できたガインもまた、シキの心意気を感じ取る。


「ぶつけ合おうぞ!!」


 【ファイヤーマジックアロー】のアッパーと【ダークリーサルストライク】の大剣は、打つかりあい、またしても大きな衝突と衝撃波を起こす。


 倒れているマリアとリンカは、その衝撃波にさらされて体が吹き飛ばれる。どこかに激突してしようものなら、キルしてしまうほど状態悪化している二人を察してか、サラは、今の今までガインとシキのやりとりを静観して見ているだけだったが、飛ばされた二人の体を優しく受け止め、以前、シキとガインの戦闘時に、セリカがリンカを守る為にバリアを張った時と同じく三人の周りに衝撃波を防ぐ空間を作った。


 二人は未だに意識がない。サラは再び失ってしまった自我とは別の感情で二人を見ている。自分がたどり着けなかった領域にたどり着いた二人に対する興味と、心の奥底にある何かの叫びが二人への興味へと結びついていた。


 この感情の答え合わせはどこかでしなければならない気持ちに晒されながら、サラは再びシキとガインの戦いに静観しつづける。

次回も月曜日19時に投稿します。

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