↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/155

112話 ACT19-42

 そんな仲間達だからこそ、帰化プレイヤーとなり、自分に敵意や憎悪を向けて向かって来られても、本質を見失うな、と言わんばかり向かい続けて最後は改心までさせる。


 だが、世界をその思考で満たし変えようとまでは思わない。その役目を果たすのは仲間であり自分はサポートにすぎないと。


 再び訪れた沈黙。シキがそれ以上語るまでもがな、ガインは痛感する。結局一人ですべてをやろうとして独りよがりな世界を作ろうとしているお前の未来は辛いぞ、と。


「ぬははは!!」


 ガインの高笑いをシキは素直に受け入れた。この笑いはきっとガインがいつもする相手を小馬鹿にしたものではない。会話の中で見出した新たな自分の発見に対する反応だと分かっている。


「まあ、こういう奴もいるってことだよ、ガイン。俺はお前が一人で抱えすぎてしまったその重荷を少しでも取り払えられるのであれば、ここでお前と戦う事に意味が見出せる」

「抜かしたな小童。これが貴様のいう会心するつもりない対話か」


 完全に受け入れたわけではないが、思考の整理ができたガインにとって、シキがガインを他の連中と同じように説こうとしていた事実があったとしても先ほどまでの怒りはない。だからこそ改めての確認である。


「ああ、そうだ。お前はお前、俺は俺でいいんじゃないか。お前が自分の思考や思想を実現する為に支配という手段を取っている事に否定も肯定もしない。だけど見えている未来はたかが知れてる」


 シキはあくまで説くつもりはない、と言い張る。確かにシキの言う通り、ガインはシキの考え方を理解したに過ぎず、自身がこれからしようとしている使命に対する考えや方向性が変わったわけではない。当初の通りシキの考えは一環している。


 実のところガインが意図して人心掌握する動きを、シキは本当に考えなし本能で対応しているのだとすれば、この返答にも納得が行く。


 ともすれば、そもそも他の連中に対して説いてきた対応ですら、本人の中では人心掌握をしていく為の手段ではなく、向き合う為にただただ愚直に対応していたのだとすれば、さらに一連の動きに整合生はある。


 つくづく滑稽よのう、とガインは自分自身の”読みの甘さ”に少し微笑する。


 シキの戦略なき対話の本質を理解すれば、その先はある会話は愉悦になる。ガインはシキに少しだけ痛い所を突くような質問をしてみる。


「だが、貴様が描く未来はさらに俺様より安易で低位なものだと自分で言いおったわけだ。そんな未来で今の混沌を救えると言い切れるのか?」


 シキの考えを受け入れるわけではない。同じく否定も肯定もするつもりもない。だが、世界に絶対が存在しない以上、ガインはシキの描く未来をたらればで想定みた際、ボヤけて見えない景色が気になり問うてみる。


 そんなガインの心境を汲み取ってか、シキもまた微笑して答える。


「安易で低位だけど悪くないだろ。俺とお前とどちらの描く未来がいいかどうかなんて今の時点では分からない。答えは未来のその時になってみなければ分からないけれど、言える事はその先の未来が自分の描いていたものと違っていたとしても、俺には絶望はない」


 一人で作り上げる世界と、皆で作り上げる世界が、お互いどんなものであれ、その答えが出る世界の時間軸の時に、果たしてガインは満たされているのか?という最後の詰めどころをしっかりシキは残しておく。


 なるほどな、とガイン。


 そして再び沈黙が訪れる。憎悪の塊のような体格になった暗黒騎士の鎧と仮面は、あふれんばかりに黒紫の波動で覆われているが、そこに混じる空気はやや和らいでいた。


 そして仮面の下のその表情は見えないが、少しの笑みを浮かべているようにシキには見える。


「なかなかに大義な時間であった。貴様の”器”の限界を俺は飲み干し吸収し、さらなる高みの王としてこの世界を救おうではないか」


 ガインの言葉の結びは、シキとガインの本質をぶつけ合う時間の終わりを告げる。そして力と力によって勝敗を決する時間へと向かっていく。


「お前のその向上心、個人的には敬意しかないよ。そろそろ終わりの時としようか」


 シキは再びバトルモードへ。ガインも黒紫の波動のうねりを加速化肥大化させる形でパッシブスキルに近い形を作り上げている。


「【フィアマインド】」


 ガインを覆っていた黒紫の波動が一気に大きくなる。前回の戦いの時もしかりだが、今回もガインは【フィアマインド】を使ってくるのは、どこまで言っても彼の中でここ一番で仕掛ける際に必要なパッシブスキルなのだろう。


 だが、今までのように【フィアマインド】でシキが状態異常を起こす事はない。


 それでもガインが【フィアマインド】を発動するのには意味がある。シキのステータス低下を起こす効果より、自身のステータス向上のほうが大事だ。


「【ログスティール】」


 シキは、自身がこの一連の流れで見てこなかったガインの今までの戦い方もこのタイミングで吸収しておく。


 セリカ、マリアとの戦い。戦術、そして、帰化プレイヤーとなったマリア、リンカから得たステータス。そこにガインの最強のパッシブスキル【フィアマインド】が重なる。


 シキは、AH(アストラルホライズン)の世界で未知数となっている魔法拳士のジョブを持っているとはいえ、ガインから既存の限界のさらに限界を超えた戦いを臨まれる以上、一切の気の緩みも許されない。


 シキが戦いを通じて、新たなスキルを発動しているようにガインもしかり得ているのが【ログスティール】からも伺えている。


 だがガインの【フィアマインド】に何かを感じたシキは、対抗する手段に適したスキルを思い浮かべ笑みを零す。

次回も月曜日19時に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。