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109話 ACT19-39

 時間制御スキル。かけた瞬間にシキの動悸に負荷がかかる。これはどうやら何度も何度も連続発動していいスキルではないようだ。明確に内臓機能が存在しているかどうか分からないアバターにも関わらず、肺や心臓に痛みとも重みとも感じる違和感を感じながら、この時間制御スキルをかけたシキには、勿論狙いがある。


「【マジックアロー】」


 この瞬間的な攻撃タイミングで時間制御スキルをかけない事には、スキル発動を詠唱する時間すら確保できなかった。だからこそ【心操身隷(しんそうしんれい)】を発動し、現段階でガインに物理攻撃力(STR)で負けているシキは渾身の一撃に魔法攻撃スキルを絡ませたかった。


 シキの思惑通り、【マジックアロー】を覆った右拳はガインの仮面を完全に捉え、ガインは【心操身隷(しんそうしんれい)】の時間制御スキルによって防御する隙すら許されず、シキはガインの大きな鎧と仮面を被った体をふき飛ばす。


「・・・、ふう・・・」


 渾身の一発を仕掛けた反動か、または【心操身隷(しんそうしんれい)】発動による影響か、シキは大きく深呼吸をする事で息切れしそうになる呼吸を整える。ここで攻撃の手を緩めないようさらに呼吸を整えて集中する。


 ふき飛ばされたガインはその身をすぐに起き上がらせ、宙に飛び上がり大剣をシキに向かって大きく振り上げる。


 だがもちろんシキはガインの次なる動きに合わせて追撃を控えている。ガインが飛び上がった宙の先にはシキが待ち構えていた。


「ち!!」


 ガインは振り上げた大剣を振り下ろす間もなく、シキが鞭のようにしなる右ハイキックを受けて再び地面に叩きつけられる。


 だがガインもここで持ち堪え倒れない。叩きつけられた地面を両足でしっかり立っている。だが、ガインが連撃に対して倒れようが、立って持ち堪えようがシキの追随に変わりはない。


「【マジックアロー】」


 右ハイキックに合わせてシキは直様、ガインに向かってその身を投じ、今度は手刀を作り、その手刀の刃の先を【マジックアロー】の波動で覆う。地面にいるガインに上空から手刀を大きく斬り下ろす。ガインは飛び込んでくるシキに向かって大剣を横切り上げし、シキの手刀とガインの大剣は再び大きく衝突する。


 二つの凄まじい衝突は二人に少し間を空けて距離を作る。シキはもちろん次の攻撃を仕掛ける。右手の手刀を右斜め斬り下ろしにしてガインに迫る形となるが、これをガインも大剣の柄を両手で握り左脇腹を庇うように素早く移動させて再び攻撃を防ぐ。


「【マジックアロー】」

 

 だが、シキの連撃は引き続き止まらない。この一連の攻撃でガインが体勢が整うまでは、いかようにも攻撃を仕掛け続ける。その戦術と動きに一片の曇りもない。ましてや今はガインが防戦一方である。次から次へと攻撃の戦略のカードを切っていく。左手の手刀で【マジックアロー】を発動し、すかさずガインの右脇腹を大きく左の波動手刀で左横薙ぎをした。


 【マジックアロー】を帯びた左手刀のロングソードの左横薙ぎは、ダメージとしては決定打となる。


 アバターが体を食い込むほど斬られるのが、体が真っ二つになりはしないが、それ相当の大きなダメージを相手に与える仕様にはなっている。このシキの【マジックアロー】左手刀ロングソードの横薙ぎがガインに大きなダメージを与えるのは、言うまでもない。


「ぐ!!」


 だがここでついに防戦一方だったガインは、受けてしまった大ダメージの痛みを許容する代償としてカウンター攻撃を仕掛ける。左脇腹を守っていた大剣を両足に大きく力を込めて、全身の力を使い右横薙ぎをシキに向かって振り切る。シキの左手刀ロングソード、【マジックアロー】はガインに大きなダメージを与えた事により消失していた。


 だが、


「【アイスマジックシールド】」


 右手刀ロングソードの【マジックアロー】はまだ現存していた為、氷のバリアでダメージを減衰する【アイスウォール】を左手で発動し、【マジックアロー】と組み合わせて【アイスマジックシールド】を両手で作り出すシキ。


 結果、シキはガインの渾身のカウンター攻撃を受けて大きなダメージを受けることなく、大剣との衝突で少しだけ後ろに吹き飛ばされるだけで済ます。


(イケる!!)


 この一連の連撃は、完全にシキの優勢にて一旦の区切りを迎える。


 リンカの物理攻撃力(STR)パワーとマリアの俊敏性(AGI)を兼ね備えた格好となったガインだが、その力を十二分に使いこなす事はできていないようだった。そもそもが基本職ファイター、上級職バーサーカーを軸としているガインにとって、リンカの物理攻撃力(STR)を足す事は容易であっても、その真逆となる俊敏性(AGI)を足し、そのスピードを手に入れたところで、体が付いていくわけがないと踏んだシキの読みは正しかった。


 時間制御スキル【心操身隷(しんそうしんれい)】を使い、隙を作り一気に攻撃を畳み掛ければ、大剣を持ち小回りの効かない大きな体をしているガインは防戦一方になり、今回のように大きなダメージを代償にカウンター攻撃を仕掛けてくる以外にリカバー攻撃を仕掛けづらい。


「ふう、危ねえ、危ねえ」


 ガイン渾身の右横薙ぎを受けた【アイスマジックシールド】は破壊され、少しその衝撃でガインとの間に距離を空けたシキは両腕の痺れを振り払うように、ブルブルと振るわす。


「小童よ、貴様・・・、大したものだな・・・」


 シキの緻密な戦術にさすがのガインも思わずうなる。

次回も月曜日19時に投稿します。

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