107話 ACT19-37
「ほほう、理解したか」
「ただ、それを俺に分からせたところで、お前の世界の支配構造に対する考え方と俺が求めている世界や人に対する考え方が相まみえる見える事はないと思うぞ」
「ふん、、、そんなものは望んでおらんわ」
「じゃ、なぜ、ここまで回りくどい事を?」
「大した事じゃない。このAHの世界の理を理解した上で、改めて絶対的な力を持つ者が正しいと判断される世界の中で、貴様をちゃんと撲滅するのは変わらない。だがな小童。貴様のその思考が本物であればいくら俺様に撲滅されようとしても覆ることはないのだよ。だからな、叩きのめされた時、貴様がどのような状態になっているのか、その信念は本物なのかを見てみたくてな」
シキには、そのガインの発言がセリカ、マリア、リンカに対しても同じように信念を探っていてこの戦いを試していたかのようにも聞こえた。
「つまり、俺がガイン、お前に負けた時、魔法拳士でなくなっていたら、その”力”は仮初めだったと?」
「そういう事だ。俺様はとにかく気に入らんのだよ。俺様が掌握していないジョブやスキルを手に入れてこのAHの世界を分かった気でいる貴様がな」
そう言うとガインは、自身を中心に大きな黒紫の波動を放つ。
ついにガインとの戦いが始まる。
シキも戦闘モードに入る。度重なる戦いでHP、MPともに消費しているが、前回、基本職アーチャー、上級職ソーサラーだった時の戦いで互角にガインとは戦っている。そう考えれば今この段階で全回復まで持っていかなくても大丈夫だとシキは読んでいた。
「小童よ、貴様の迷いはずっと伝わっていたぞ。なぜ俺様がここまで回りくどい戦いの場を用意していたかこの瞬間を持ってすべての答えとしてやろう」
ガインを纏っている大きな黒紫の波動は、倒れているマリア、リンカの体をそのまま包み込む。まるで取り込むような動きをしている波動の動きにシキは鼓動が響き胸騒ぎを感じる。
「ガイン、何をするつもりだ」
「見ればわかるだろう、吸収だ!!」
ガインの言葉と共に大きな黒い閃光がガインを中心に解き放たれた。
大きな衝撃波のような、しかし衝撃波ではない、あたり一面が黒い閃光にすべて進まれ世界のすべてが暗闇に飲まれてしまったような・・・。
そんな瞬間を経て
「お待たせしたな、小童」
目の前にいるガインは、体に同化しているような黒い鎧や仮面はさらにその形状を一回り大きくし、周りに黒紫のイナズマのようなものがビリビリと帯びている。ガインのステータスを見る事はできないが、見た目だけがガインが大きな力を手に入れたのをシキは理解した。
(リンカとマリアは?)
シキは二人の安否が気になり二人が元いた位置を見る。ガインから発し二人を包んでいた黒紫の波動は消えていて、帰化プレイヤーの姿ではなくなり通常のプレイヤーに、マリアは猫獣人の姿から猫耳メイドの姿へ、リンカは真紅のように深みが入った赤髪は黒髪に戻っていた。意識は失っているようだ。
「気を抜いている暇はないぞ、小童」
ふと目の前から消えた暗黒騎士ガインは、シキの背後に現れる。
(コイツ・・・、こんなにスピード速かったか?!)
シキの思考に答えが追いつく間もなく、ガインは呼び出した大剣を右横薙ぎで斬り払うが、シキは左の籠手で受ける。
大剣と籠手が打つかるだけで大きな衝撃が起きる。
シキは右裏拳を左籠手で受けた衝撃の反動を使い、自身の右足を軸に回転し、仕掛けるが、その右裏拳がガインの仮面に届く前に再び、ガインは大剣の圧力を高めていく。
「あまいわ!!」
衝突で均衡を保っていた大剣と左籠手は一気に大剣に押し切られ、シキは身体毎、ガインの右横薙ぎの大きな斬り払いで吹き飛ばされた。
(パワーも圧倒的に上がっている?!)
シキは吹き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直しガインのいる場所に殴りかかりに行く。
この一連のガインとの衝突はシキの想定と大きくかけ離れている。以前戦っていた時のガインとは比べものにならない物理攻撃力(STR)と俊敏性(AGI)を感じた。そう、それはまるで・・・。
「おらあ!!」
疑念も全て振り払うように、シキは渾身の右拳をガインの顔面に向けて叩きつけるが、ガインは大剣を右拳に向かって斬り下ろし、またもや拳と大剣の打つかりあいは大きな衝撃を放つ。しかし今度は助走と勢いをつけて攻撃している。力が負けるわけがない。
だが
「ふん!!」
斬り下ろして拳と衝突した大剣は、ガインの踏ん張りと共にそのまま地面へと振り下ろす形となった。もちろん対峙していたシキの拳はその勢いに負けてその身を後ろへと引き下がる事になり、振り下ろされた大剣に叩きつけられた地面は大きな窪みを作り大きな衝撃波を起こす。
通常攻撃の時点ですでに完全に物理攻撃力(STR)でシキが負けている。
「ガイン、お前!!」
「不思議そうな顔をしているな小童!!以前戦った時の俺様と同じレベルを想定していたようだな」
「ああ!!こうも力もスピードも大きく変わってくるとなるとまるで・・・」
シキが続けようとする言葉を遮るガイン。
「まるで、先ほどパッシブスキルを何重にも重ねてきたマリアやリンカのように感じるか?」
ガインはシキが手繰り寄せている疑問に対して、解決へと導いていく事を楽しむように問いをする。
「リンカとマリアに仕掛けた波動は二人のステータスを吸収する為か」
「まあ、そういう事だ」
次回も月曜日19時に投稿します




