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104話 ACT19-34

「喰らいなさい!!」


 リンカは右手の短剣を大きく振りかざし斬り下ろす。左手の短剣も奥まで振り切り引り張った反動で大きく左薙ぎをし、十字斬りのような、シキから見ると上と右から大きく大蛇のような黒紫の波動が迫ってきた。


 戦略としては悪くない。両手剣で斬り下ろしで二重の攻撃を仕掛けるより、十字斬りで攻めた方がシキにダメージを与えられる可能性は非常に高くなる。


 もちろんその逆で【ファイアーボール】と衝突した際に片方波動だけでは防ぎきれずに跳ね返されて、ダメージを追う可能性も高くなるが、それもリンカにとっては想定の範囲内だ。リンカの場合、絶対君主ガインがいる以上、絶対の勝利ではなく、敵に対して多くのダメージを与える事を一番の目的にしている。


 だが


「あまい!!」


 シキはすかさず掌に発動させていた【ファイアーボール】の中心部を右手の掌の中に覆い込むように握り締める。途端にその右手拳が【ファイアーボール】が中心となる。


 シキから見て上と右からくる黒紫の大蛇のような波動を十字斬りの重なるタイミングで【ファイアーボール】を投げる場合は、両方が重なったタイミングに合わせて打つけないと、上と右からくる両方の波動を止める事ができない。


 シキがその点で苦戦する事も加味して、リンカは上から左からと十字斬りを仕掛けた作戦がある。だがその作戦をシキは【ファイアーボール】を拳に覆う事で、十字斬りの波動が重なる点にあわせて拳をぶつければタイミングよく両方の波動を潰す事ができるようになる。


 シキは、上と右から迫り来る黒紫の大蛇のような【ダークナイトリーサルストライク】を、その重なる瞬間に目掛けていき、そこに合わせて【ファイアーボール】の拳を叩き込む。


 【ダークナイトリーサルストライク】の十字地点は【ファイアーボール】の拳との衝突により再び吹き飛ばされる。【ファイアーボール】を受けてはまずいと判断し、たまらず飛び上がったリンカの先に待ち受けていたのは、リンカがその行動を取ると読んでタイミング合わせて先に飛び上がっていたシキだった。


 シキは飛び上がってきたリンカに向けて右足で大きく地面に向かって叩きつけるようにハイキックを打つける。リンカはカウンターとして受けてしまったシキのハイキックを両手の短剣を使って防御するが、その威力たるやダメージを多少軽減したレベルにしか過ぎず地面に叩きつけられた。


「【攻撃力上昇(オフェンシブアップ)】、【集中(コンセントレーション)】2nd」


 地面に叩きつけられたリンカはすぐに起き上がり破壊された短剣を復元させる。この一連の流れはマリアと一緒だ。復元された短剣も強度があがっているのだろう。シキはガインを少しだけ見る。マリアとリンカで大きな違いがあるように思えない。違いがあるとすれば基本職シーフ、上級職アサシンとしてスピード勝負をひたすら仕掛けてきたマリアと、基本職ファイター、上級職バーサーカーとして力勝負でひたすら仕掛けてくるリンカの属性と方針の差だ。


 そもそも確実な勝利を目指しているのであればガイン、サラ、リンカ全員で掛かってきてもいいものだが。


 謎の行動を取っているガインに気になる点が多い事は確かだが、シキにとっても全員で掛かってこられるよりは全然いい。


 シキとしてはリンカがマリアと同じように体調パラメーターで大きな支障をきたして苦しくなる前に勝負を終わらせたい。


「一気に終わらすぞ、リンカ」


 リンカがいる地面に向かって空に後ろ蹴りを入れる形で自身を飛び込ませるシキ。シキがリンカに向かって殴りつける籠手のある右拳とリンカの大きく斬り下ろす両手の短剣が衝突する。


 両手の短剣と右手の拳を中心に大きな衝撃波が起こる。


「あんた、私の事舐めすぎよ」


攻撃力上昇(オフェンシブアップ)】、【集中(コンセントレーション)】2ndを使いシキと衝突で互角にできた事に自信を持ち始めているリンカ。


 やはりマリアとは何かが違う。


「【攻撃力上昇(オフェンシブアップ)】、【集中(コンセントレーション)】」


 そんなシキの気づきに呼応するようにリンカはさらにパッシブスキルを詠唱する。


「4th」

「な!!」


 いきなり3rdを飛ばして4thを重ねてくるところにリンカの強気な姿勢が垣間見える。


 リンカはプレイヤーだった頃、当初格下だったシキにもすぐに超えられ、マリアには戦力外通告をされ、サラに至ってもその圧倒的な差を見せつけられ、常に劣等感を持ち続けていた。そんなリンカにとって今ここで帰化プレイヤーとなり自分の限界を超えた戦いを選択できている事は自信に結びついている。


 シキとの戦いで圧倒的な戦闘力差を見せつけられた焦りの中からパッシブスキルを乱発してきたマリアと、プレイヤー時代に大きな劣等感を持っていたリンカでは、元々置かれていた境遇や心境が違うのだからその気持ちの持ちようは大きく違う。


 ついにはリンカの両手短剣にそのまま大きく斬り下され、シキの右拳は吹き飛ばされる。


「ほほう。ついにここまで来たか」


 ガインもリンカが力で押し切った事に大きな満足を得るような言葉を漏らす。


「お前ら、本当負けず嫌いだな」


 吹き飛ばされたシキは、堪らず笑みが零れる。そんなシキをみてリンカも笑い返す。


「当たり前じゃない。私達は戦士なのよ」


 シキはマリアとの勝負も思い出した。あそこまで自分を追い込んでパッシブスキルを重ね合わせて戦い続けたマリアも、そしてリンカも前提として相手はおろか自分にも負けたくない気持ちが強い。帰化プレイヤーだからではない。それが彼女達の本質なのだ。


 リンカの自信に満ち溢れた表情からはそれが物語っていた。目の前の敵を倒すための手段があるのであれば、その力にどんな副作用があろうとも使わないわけがなかった。

次回も月曜日19時に投稿します。

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