第三十五話
瞬時にルチアが結界を張り、防ぐ。
「チッ!」
結界を蹴り、空中に留まる男。
「……魔族か」
「御名答!」
再び突っ込んで来ようとする魔族。
「ルチア、結界解け」
『……了解した』
ルチアが結界を解いたのを見て、突っ込んで来る魔族。
其れを俺の最大速度で迎え撃ち、跳ね返す。
結界を閉じる様言って、魔族を見据える。
「サシになったなぁ?」
「だから何だ?」
「オレのユニーク魔法、見せてやるよ!」
掌を天に向け、何かを唱える魔族。
すると、掌に黒い玉が出現、見る見るうちに大きくなり、魔族と俺を飲み込んだ。
「「雪紫!」」
『ユキシ!』
__…………。
__何も、見えねェ。
目が開いているのかさえ分からない程の暗闇。
「此処は外とは完全に隔離された、一種の異世界だ。気配も、魔力さえも外からは感じ取る事が出来ない!」
勝ち誇ったように笑う魔族。
「何も見えねぇだろ!」
音も無く気配が近づいて来る。
__甘い。
背後から振り下ろされた大剣を小屏風で防ぐ。
「なっ……!」
「残念だッたな。こンな小細工、俺にャ効かねェよ」
__魔力で身体強化してる限り、その魔力を感じ取って防ぐ事は容易だ。
「くっそ! なら、これはどうだ!」
詠唱を始める魔族。
「『炎魔法・炎円』!」
円状の炎の壁が俺と魔族を照らす。
「……さッき、外からは魔力すら感じる事は出来ないと、そう言ったな?」
「あぁ。言ったぜ?」
「それを言わなきゃ、手前にも勝機はあッたかもしれないのにな」
「はぁ? 只の人間が何言ってやがる! 俺の攻撃を防げたからって、調子乗ってんじゃねぇええええッ!!」
__外側に気配も、魔力すらも感じさせない空間。
__つまり、此処で本気を出しても、外には分からないッつーことだ。
「貰った!」
__残念。
「『ヴァンパイアフィリア・具現化』」
俺を中心にして、突風が吹く。
「うおっ?!」
吹っ飛ばされるが、炎の壁ぎりぎりで留まり、俺の姿を見て驚愕する魔族。
「なん、っだよ、それ……!」
「動揺は自分を殺す事しかしないぜ?」
「ッ?!」
少し本気を出して背後に回り込めば、話しかけるまで気付かない魔族。
「何か、拍子抜けだな。魔族ッつーのは人間よりも強いンじャなかッたのか?」
「おいおい。巫山戯んな。テメェは人間じゃねぇだろ。その姿、それにさっきヴァンパイアなんちゃらって言ってたな。……テメェ、ヴァンパイアだろ」
冷や汗を流しながら推理する魔族。
「残念。俺は人間だ。ちょーッと特殊なだけだ」
「何しろ、こりゃ報告しなきゃまずいな」
逃げようとする魔族。
「逃がすと思うか?」
一瞬で近づき、反応させる間も無く首を刎ねる。
と、煙の様に消滅する。
そして、暗闇も段々と晴れていった。
変身を解き、ルチア達の下へ戻る。




