第二十九話
唖然とする子供達を背に隠し、武器を構える俺達を警戒する邪竜。
__邪竜は竜種の中でもトップクラスの能力を持っている。
__竜と戦った事は無ェからな。
__慎重に行くか。
「殺ンぞ」
「「了解」」
__狩りの時間だ。
唇を舐め、口角が上がる。
小屏風を構え、一瞬で近づき、下から上へ振り抜く。
腹から首程までが裂ける。
痛みによる悲鳴を上げ、そこでやっと気付く邪竜。
自分が捕食者ではなく、逆の立場になっていたことを。
そして──、
「血ィ、流したな?」
──そして、もう既に、逃げられないということを。
「『ヴァンパイアフィリア・血液操作』」
その邪竜の血液を全て抜き取り、血晶にする。
上空に標準を合わせ、放つ。
数秒後、悲鳴を聞きつけてきた邪竜が数匹落ちてきた。
「数匹段違いのが居るぜ」
「あ、邪龍も発見」
上空を見ていた葛葉が呟く。
龍種は、竜種よりも格段に強い。
一匹だけで災厄級に認定されている位だ。
災厄級は、そこそこ大きな大陸(ユーラシア大陸位)であれば一週間以内に壊滅させてしまう位だ。
一流冒険者が集まって討伐に行っても、全く歯が立たない。
しかし、災厄級はあまり外に出ない。出るとすれば、魔力に中てられ、正常な判断ができない場合だが……。
__災厄級が中てられる程の魔力が自然発生で集まる筈がない。
__この大暴走、人為的なものだな。
優雅に着地した邪龍を見据える。
その目は、綺麗な京紫だった。
「……なァ」
「何?」
「邪竜とか邪龍とかッて漆黒の体に漆黒の目だよな?」
「そうね。それがどうしたの?」
__…………。
「ちョッくら行ッて来る」
「え!?」
「白雪ちゃん、大丈夫」
白雪を止めてくれる葛葉。
__葛葉にも見えた様だな。
『嵐魔法・風飛』で飛び、邪龍と目を合わせる。
見つめ合っていると、念話が飛んできた。
『御初に御目に掛かる。我は龍種のなり損ないだ』
__なり損ない?
『龍種はなり損なうと堕ちて邪龍になるのか?』
『否。我は同族から忌み嫌われ、蔑まれたが故に堕ちてしまったのだ』
『だが、堕ちきれずに邪龍の中で半端者に、か』
頷く邪龍。
__龍種に限らず、堕ちてしまうと全身が漆黒に染まる。
__この邪龍は目だけが京紫だから、完全には堕ちていないということになる。




