第二十六話
火の粉が弾ける音を聞きながら、只ボーッとする。
「雪紫?」
「……あ?」
隣に座る白雪に目を向ける。
「……後悔、しているの? あの子を、殺した事」
__ド直球で聞いて来たな。
「後悔はしてねェよ。只、此奴を、救う事も出来たんじャねェかな、と思ッてな」
目の前の炎の塊を見て言う。
「……何も変わッてねェな、俺。残虐非道と言われてた頃と、何にも、変わッてねェ」
白雪は暫く黙った後、口を開いた。
「雪紫は、昔に戻りたいと、思ったことはある?」
__…………。
「さァな。だが……、昔の方が、楽だッた」
「……そう」
「只殺して、生きていた。殺しが、俺の生き甲斐だッた。……殺し合いは、お互いの命を奪い合う。それで、いつも確認してた。……俺は、生きてるッて。誰かが俺を殺しに来るのは、俺が生きているからだッてな」
__……今も、そう思ッてる。
__この思考が駄目なんだろうな。
「……最低だな。人の命を奪ッて、自分が生きていると証明するなンて」
「そうね。最低」
「……だよな」
「でも、私は、私達は、貴方がその過去を償おうとしていることを知っているわ。一生懸けても償いきれないかもしれない。でも、それでも、償おうとしている。……それにね、雪紫。私は、貴方に救われた」
__!
「葛葉ちゃんも、同じクラスの神威光さんも。貴方に救われているの。この世界ではチユキちゃんとリオネル君が救われているわ。他にも、貴方に救われている人は沢山居る。……それを、忘れないで」
「そう、か……。俺は、救えているのか」
「ええ」
葛葉が歩いて来る。
「何々? 何の話?」
「聞こえてただろ」
「あ、バレた?」
葛葉がにしし、と笑う。
「先祖返りは五感が優れているからな。十メートル程度の距離だッたら寝息も聞こえるンだろ?」
「まぁね!」
胸を張る葛葉。
「先祖返りって凄いのね……。頼りにしてるわよ、葛葉ちゃん」
「頼りにって……。白雪ちゃんの方が強いのに?」
「そりゃ、小さい頃から戦闘訓練を受けて来たのだから、そう簡単に負けちゃ駄目じゃない? 後ね、私が強いのは能力のお陰なの。若し気力切れとか、能力が使えない場面になったら、生身で強い雪紫と葛葉ちゃんに頼らないと勝てない」
「えー……。白雪ちゃん、生身でも結構強いと思うよ? 刀さばきとか偶に見えない時あるし」
__あー。葛葉は知らねェのか。
「白雪の能力、スペクトロフィリアの使い方はな、本来霊体の力を借りるものなンだ。霊体の持つ体力とか、腕力とかをな。だから、普段強いのはそこ等に居る霊体の力を借りてるからだ。鶴姫を出してる時はその時とは比べモンになンねェ。ま、生身でもそこそこ強いがな」
「そうだったんだ。……え、てことは戦ってる時って殆ど能力を使いっぱなしって事?!」
「そういうこと」
笑顔で応える白雪。
「き、気力凄……」
その後も会話を続ける二人。
__あァ、良いよな、こういうのも。




