第十五話
「逃げずに来たようだな」
「誰が逃げるかよ。……チユキ」
「な、なんじゃ?」
緊張で固まっているチユキに声をかける。
チユキの後頭部を掴んで引き寄せ、抱きしめる。
「うぇ?! な、ななななんじゃ?!」
__うぇって……。
「……お前なら、出来るぞ」
暴れていたチユキの動きが止まる。
「良いか? お前は一太刀浴びせられればそれで勝ちだ」
国王様の口角が上がる。
__……はぁ。
「もしそうじャないと言われても、お前なら勝てる。俺が言うンだ。間違い無ェ」
「……うむ!」
「ンじャ、これやるよ」
取り出したのは、藜組と古清水組の紋が入った水晶の首飾り。
「これは?」
「お守り。無くすンじャ無ェぞ」
「うむ!」
頭を突き出し、掛けてと言わんばかりに目を輝かせるチユキ。
苦笑し、首に掛けてやる。
「よし、行け」
背を叩き、決闘場へ押し出す。
「行って来るのじゃ!」
決闘場に堂々と立つチユキ。
__…………。
「……良いの?」
「あァ。もう俺達が、彼奴にしてやれることは無ェ。行くぞ」
白雪と葛葉を連れて港へ向かう。
港にはコマチさんが居た。
「やっぱり来た。……帰って来るの?」
「分からねェ。ま、気が向いたら戻ッてくるかもな」
遠くで歓声が上がる。
「決着がついたみてェだな」
「急ごう!」
「追って来ちゃうかもしれないわ」
『嵐魔法・風飛』を使い、飛行する。
「じャあな、コマチさン」
白雪と葛葉がコマチさんに手を振る。
背を向け、出発しようとした所に、背後から声がかかる。
「待つのじゃ!」
声の主は地面を蹴り、俺に飛びついてくる。
「お、おい!?」
急いで風飛を解除し、受け止める。
__風飛は風を周囲に展開して対象を飛ばすからな。
__其処に生身で突っ込んで来たら体がずたずたになッちまう。
『時空魔法・転移』を使って地上に瞬間移動する。
「何故黙って行くのじゃ!」
目に涙を浮かべて俺に縋り付くチユキ。
「……着いてくるだろ?」
「うっ……。ま、まあ、そう言っていたかもしれない、のじゃ……」
俯くチユキ。
だが、良く観察してみると鼻息を荒くして匂いを嗅いでいる。
「阿呆」
頭を叩く。
「い、痛いのじゃ……」
「こ、こんな所にまで雪紫の魅力が……」
「何言ってんだ?」
項垂れる白雪に苦笑を零す葛葉。
__混沌だな。




