第十二話
「……始め!」
開始の声が聞こえたが、両者共に動かない。
しかし、観客達は感嘆の声を上げた。
二人が具現化した殺気を纏ったからだ。
これは倭国の伝統技術で、殺気を精密に操れる者だけが出来る芸当だ。
そして、個人で具現化されるモノが違う。
__俺の場合は赤黒い水晶龍、白雪は鶴、葛葉は白狐だ。
__王女様は、蒼白い水晶龍だな。
「ほう。妾と同じ龍型か」
具現化されるモノは幾つかあるが、中でも強いのが動物系だ。
その動物系でも強いのが幻想種。
龍、麒麟、鳳凰等の、前の世界では実現しないと言われていたモノがそう呼ばれる。
こっちの世界では実現しているモノも居るがな。
__さて、そろそろか。
王女様が腰を低くする。
「……しっ」
俺の懐に入ろうとする王女様。
しかし、そういう相手の動きは数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程見て来た故、対処は簡単だ。
__武器が薙刀だから、懐に入れば勝ちだ。ッて思ッてる奴は結構居る。
__王女様も同じ様だな。
__勝ッた。みたいな顔してるし。
俺は小屏風を回転させ、王女様の突きを上に撥ね上げた。
「なっ……!」
驚いた表情を見せる王女様。
__正直言ッてこの程度かッて感じだな。
__速さはあるが、粗が目立つ。
__今の強さに満足して毎日鍛錬してねェなこりャ。
__素質はあるンだがなァ……。
__勿体無い。
王女様の攻撃を避けながらそンなことを考える。
「どう、した……! 避けている、だけでは、……っ勝てない、ぞ! それ、とも……、避けるしか、脳のない奴っ、だったか……?」
息を切らしながら俺に言う王女様。
__……その挑発、乗ッてやるよ。
俺の口が弧を描いた。
同時に、赤黒い水晶龍が蒼白い水晶龍に噛み付いた。
小屏風を持ち替え、柄の部分を王女様の脇腹に叩き付ける。
王女様は吹っ飛び、結界に打ち当たった。
__感触的に、骨何本か折れたなこりャ。
__手加減したんだが……。
__もしかして身体強化してねェのか?
身体強化。
それは魔力を体に纏わせて能力を上げる技術だ。
首を傾げていると、王女様を診ていた審判が戦闘不能と判断した為、決闘が終了した。
具現化を解き、外へ出る。
すると、兵士が俺を取り囲んだ。
__あァ、やッぱりか。
「貴様! 王女様に大怪我をさせるとは何事か!」
「あァ? ンなの、決闘を申し込ンだ時点で覚悟出来てただろ。それとも何か? 決闘で手を抜いて俺が大怪我すれば良かッたのか?」
言葉に詰まる兵士。
「そうだ」
後ろから声が掛かる。
振り向くと、威厳ある男が仁王立ちして居た。
「貴様は負ければ良かったのだ。娘の為にな」




