第四話
「コマチ様。お止め下さい」
アカザ家の使用人がコマチさんを止める。
「話しかけないで頂戴」
「こんな屑の為に、そのような高等魔法など……」
「黙りなさい!」
使用人の言葉を遮って大声を出すコマチさん。
「そうだよ! 人を助けんのに屑もへったくれもあるもんかい! 例え、いつも悪戯ばかりしているやんちゃ小僧でもね! 死にそうな奴が居れば助ける。普通の事だろう!」
野次馬の中から出てくる女性が言った。
「コマチ、だっけかい? アタシも手伝うよ。聖魔法なら使える」
唖然とする使用人の隣を通り、俺に近づいてくる女性。
「ありがとうございます! 体力の方をお願い出来ますか?」
「任された! 【聖魔法・回復】」
その女性を皮切りに、次々と野次馬が援護を申し出る。
その度にコマチさんは感謝し、的確に指示を出した。
傷は本来の俺の回復力も合わさってすぐに塞がり、体力も戻った。
「凄い……。こんなに早く塞がるなんて」
額に滲んだ汗を拭いながら感心するコマチさん。
「……屑に構っている時間は無いです。戻りましょう。奥様が待っています」
「その事だけれど」
被せ気味に発言したコマチさんに首を傾げる使用人。
「ユキシ君を手放す、という話だったわね? 引き受けるわ。あんな家に置いておいたら、それこそストレス発散に使われてしまう。こんなにいい子なのに……」
そう言って俺の頭を撫でるコマチさん。
__そんな話が出ていたのか。
__まァ、当然か。俺にとッては好都合だしな。
「その子がいい子? とうとう貴方の目は節穴になってしまったのね」
一人の女性がゆっくりと歩いてくる。
「……マドカ」
マドカ・アカザ。旧姓マドカ・シノノメ。檳榔子染の髪に杜若色のつり目。容姿端麗で、文武両道の完璧人間。物凄く厳しい。
コマチさんは母を睨む。
「何? 事実を言ったまでなのだけれど」
「貴方はこの子を勘違いしているわ! いえ、それ以前に実子を手放すだなんて……」
「それほどの事をしてきたのよ。その屑は。そんなの、アカザの家には必要ないわ。あぁ、ついでにあの子も連れて行って頂戴」
__あの子?
「分家にも居るのよ。問題児が。貴方、連れてきて」
母の言葉に返事をし、アカザ家へ戻って行く使用人。
少しすると、子供を引きずって来た。
子供がぐったりとして抵抗を見せないのをいい事に、こちらに投げつけてきた。
俺と白雪は、その姿に見覚えがあった。
「くずは!」
「くずはちゃん?!」




