第二話
「あなた、なにをしているの?」
小さな足音が近づいてくる。
急いで口元を拭き、血で汚れた片手を隠して振り向く。
__顔が見えねェな。
「ねぇ、なにをしているの?」
もう一度聞いてくる。
「ちょっとぐあいがわるくなっちゃって。やすんでたんだ」
「……じゃあ、なんでちのにおいがするの? けがしてるの?」
「うん。さっきころんじゃって」
「そっか。じゃあてあてしてあげる! けが、してるんでしょ?」
__…………。
「うん。ありがと」
血の結晶で作ったクナイを投げる。
「…………」
「…………」
「……さすが、というべきか。しらゆき」
「そっちこそさすがね、ゆきし」
幼子──白雪──がクナイを返してくる。
「……いつからだ?」
「それはあなたときづいていたこと? それとも……」
目線がかち合う。
「……そっちね。わたしはきのうよ」
「おれはついさッきだ」
「というか、けっこうあくひょうたかいわよ?」
「なにやったの?」と聞いてくる白雪。
「おれがやッたンじゃねェンだがな。たしか……、べんきょうはしねェ、いたずらばかり、しようにンをにンげンみまんのあつかい、そのたもろもろ。ばかだよな」
「ほんとうね。まぁ、ゆきしはそんなことしないってわかってるけど、まわりがどうおもうかよね」
頷く。
「このままじゃ、まんぞくにおまえとあうことすらままならねェ。だからといって、きゅうにたいどをかえたらそれこそめんどうなことになる」
沈黙が流れる。
それを破ったのは白雪だった。
「じゃあ、わたしにほれたというのは?」
「もうほれてるよ。……だがまァ、そういうのがだとうだろうな」
「そ、そうよね!」
「……なにてれてンだよ」
「て、てれてないわよっ! じゃ、じゃあ、そういうことで!」
手で顔を仰ぎながら言う白雪。
「「!」」
咄嗟に白雪を抱え、飛び退く。
風を切る音が聞こえ、すぐにさっきまで居た場所に小刀が刺さった。
__あー。なンかやり辛い。
__何故だか知ンねェが、吸血姫の力を引き出すのがやり辛ェ。
__制限が掛かッているような、そンなやり辛さだ。
「……やはり、簡単ではないか。流石はアカザ家宗家の次男だ」
__それは関係ねェンだがな。
暗闇から出てきたのは、黒装束に身を包んだ男だった。
__暗殺者、か。
__分が悪いな。
白雪に後ろ手で合図を送る。




