第三十話
花火が上がる。
今日は待ちに待った武闘祭。
鬼龍高校はもちろん、町中が活気付いている。
「雪紫、顔が暗いですよ?」
「大丈夫?」
「……嫌な予感がする。何か、大きな事が起こる様な。そんな」
二人は顔を見合わせる。
「その手の雪紫の勘は良く当たりますからね」
「気をつけておくわ」
「……うん」
__気をつけるだけで、回避出来るのか……。
__一応、理事長にも言っておこう。
理事長に連絡を取り、報告をする。
『……分かった。こっちも警戒を強めるよ。報告ありがとう』
__…………。
「……雪紫。考えていても何も出来ません。今は、」
「そうだね。今は僕達の使命を果たすのみ」
「そろそろ行くわよ。開会式が始まるわ」
頷き、入場門に移動する。
『これより、武闘祭を開催致します。最初に、理事長のお言葉です』
理事長が台に上る。
『理事長の一文字銀紫です。此処で長い演説をしても、興が醒めるというもの。まぁ、一言だけ言わせて下さい。今日は無礼講です。皆さん元気にいきましょう』
それだけ言って、台を下りる。
『ありがとうございました。それでは、ブログラム一、演舞を開始致します』
音楽が流れ、演舞に参加する僕達一年が入場する。
演舞が中盤に差し掛かった頃。
妖力の様な、何か大きな力が急激に集まっているのを感知した。
同時に、地面に巨大な魔方陣が現れ、光り輝く。
すぐに魔方陣を解析し、その間に通信機を起動させた。
「見た事が無い魔方陣です。恐らく我が国のものではないですね。若しくは異なる世界の物です」
早口にそう言ったと同時に、光りが増す。
一瞬で視界が奪われた。
「白雪! 葛葉!」
二人の手を取り、引き寄せる。
その日、鬼龍高校から第一学年の生徒が光りと共に消えた。
記者達はこれを前から発生していた集団消滅事件と関連付け、大々的に発表した。
警察組織も捜索を続けたが、見つかる事は無かった。
政府は焦り、特務課総動員で捜索に当たる様命令するが、結果は同じ。
二大美徳極道のトップである藜雪紫と小清水白雪。そして藜組幹部の藜葛葉が消え、その他にも刀工の末裔や、様々な業界の御曹司、御令嬢も消え、世間は混乱した。
しかも、大勢の目前で、突然消えたのだ。比喩ではなく、事実として。
これを知った悪徳極道は好機と見て暴れようとするが、一文字銀紫や他の美徳極道によって鎮圧された。
これは、ただの前兆に過ぎなかった。
ここからが、本当の物語なのだ。




