第二十九話
「『ピロフィリア・爆発操作』」
そう言うと同時に、指で拳銃の形を作って垂水組の大将を狙った。
「ばーん」
垂水組の大将が爆発する。
血肉が飛んで来て俺を汚していく。
「あァ、綺麗だなァ。綺麗だよなァ、あァ、綺麗だ」
発作が起こる前に巾着から血の結晶を取り出し、口に含む。
辺りを見渡すと、既に敵の始末は終え、呼んでおいた掃除屋が死体を片付けていた。
血液操作で血を落とし、屋上に飛ぶと、既に全員集まっていた。
「遅いわよ」
「すまねェ。負傷者は?」
「居ないよ」
制服に姿を変えながら会話をする。
「そうか。ンじゃ、戻るか。手前等もご苦労だッたな」
部下達が頭を垂れ、去る。
俺達は鬘を被り、演技を開始する。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
「えぇ」
僕達は生徒にバレない様に体育館に入った。
然も元から居たかの様に振る舞いながら、理事長に合図を送る。
合図に気づいた理事長が壇上へ上がり、問題は解決したと告げた。
同時に、講堂に政府直属特務課極道係が入ってきた。
生徒達は個別に事情聴取を受ける。
と言っても、これはカモフラージュ。
俺等だけが受けるのは拙いからな。一発でバレる。
「じゃあ、藜の紫眼、小清水の黄緑眼、藜の銀狐を狙って二大悪徳極道が襲ってきた、ということですね? 藜の紫眼」
頷く。
「逃走者は?」
「居ねェ。まァ、元々組に残ってた奴等は知らねェがな」
「あぁ、それは大丈夫です。既に此方で捕縛していますので」
「そうか。……もう良いだろう」
立ち上がり、扉へ向かう。
「藜の紫眼」
「あ?」
「玉藻組の者を幹部に引き入れたと聞きました。それが、藜の銀狐ですね?」
「だッたらなんだ」
振り向かずに答える。
「いえ。ただ……、気をつけろ、と」
「……あァ。分かッてる」
空き教室を出て廊下をゆっくりと歩く。
__葛葉は、先祖返りだ。
__出来るだけ力は使うなと言っているが、隠しきれるのもあと僅かだろう。
__裏にその情報が出回れば、その強大な力を狙って襲う奴等が必ず現れる。
__俺は能力があるからそれで誤摩化せているが、葛葉に能力は無い。
__つまりカモフラージュが出来ない訳だ。
__一番の方法は、藜の銀狐として圧倒的な力を見せつけるか……、存在を隠蔽するか。
__……後者は有り得ないな。それじゃ、玉藻組に居た頃と変わらない。
__圧倒的な力、か。
__なるべく早く力の全てを解放したいが、葛葉の体調の関係もある。
__無理は出来ない。
「雪紫!」
「……ん?」
顔を上げると、白雪と葛葉が目の前に居た。
__考え込んでいて、気づかなかった。
「どうしたんですか、ボーッとして」
「事情聴取で何か言われた?」
「ううん。なんでも無いよ。ただ考え事してただけ」
顔を見合わせる二人。
「それにしては……」
「怖い顔してたわね」
「……そう? そんな大したことじゃないから、大丈夫だよ。さ、帰ろうか」
納得したような顔は見せない二人。
それに気づかない振りをして帰路につく。




