第二十話
その三人は渋々手を挙げる。
「良っし。揃ったな。んじゃ、今手ぇ挙げてる奴は放課後残れな~」
「HR終わりな~」と言って教卓で寝始める鈴代先生。
すると、教室の扉を勢い良く開き、靴音を立てながら鈴代先生に近づく者が居た。
そして──、
「いってぇえええ!!」
──思いっきり叩いた。
「順一、職務怠慢してんじゃないでしょうね!」
「なっ……、なっ……! お嬢!?」
__お嬢?
お嬢と呼ばれた女性を見ると、見覚えがあった。
__ま、さか……。
__珠洲城組の姫……、珠洲城花梨!?
思わず後ずさる。
「お嬢、何で此処に!」
「聞いてないの? 今日からこの高校に通う事になったの。……ん?」
ふと、珠洲城花梨が僕を見る。
__や、やば。
「あらあらあら! まさか貴方もこの高校に通って居ただなんて!」
目を輝かせ、僕に向かって歩いてくる珠洲城花梨。
僕は逃げる。
「何故お逃げになるの? 感動の再開じゃない!」
「ぼ、僕は貴方を知りませんし、追いかけられたら逃げるのは当たり前です!」
ついに走ってくる珠洲城花梨。
僕は机を飛び越えたり、壁を蹴ったりして逃げる。
「彼奴本気で逃げてる……」
「鈴代先生! 見てないで助けて下さい!」
「あー……。無理」
__えぇ!?
「つーかまーえたっ!」
「わっ!」
後ろから飛びつかれる。
「もう放しませんよ!」
「だから、誰ですか貴方!」
「お忘れになったのですか……?」
__そう言われても、ここで認めて関係を聞かれたらなぁ……。
「あ、あの……、お二人はどういったご関係で……?」
風間さんが聞いてくる。
__うわ、早速。
「赤の他人です」「許嫁です!」
「はぁ?」
珠洲城花梨の言葉に驚いたのか、僕の声に驚いたのかは知らないけれど、ざわめく生徒達。
__あっと……。思わず心の声が。
「雪紫? 許嫁って……、どういうこと?」
後ろから声が掛かる。
錆びた機械のように首を回すと、白雪が仁王立ちしていた。
「なんですか貴方! 私の雪紫を睨むなんて!」
「私の、ですって……?」
白雪の髪や服がはためく。
__ヤバい。白雪の奴、能力を……!
白雪の下に行こうとするも、珠洲城花梨の拘束から逃れられない。
僕は鈴代先生と目配せをする。
「お嬢」
「ふんっ!」
「お嬢!」
鈴代先生の声に肩を揺らす珠洲城花梨。
「な、何よ!」
「莱を放して下さい」
「何故? 許嫁を抱きしめて何が悪いのよ!」
__……五月蝿い。
「退いて下さい」
「貴方までそんなこと言うの!?」
__あァ、五月蝿ェ。
「! お嬢! 早く!」
俺の変化に気づいたのか、珠洲城花梨に叫ぶ珠洲城。
「五月蝿いわね! アンタは黙ってて!」
「…………、だ」
「え?」
俺の呟きが聞こえたのか、聞き返す珠洲城花梨。
「五月蝿ェのは手前だ。さッさと退きやがれ」
珠洲城花梨にしか聞こえないように小声で言う。
「ひっ……!」
__もちろん、殺気も一緒にな。
力が緩んだ隙に腕から脱出し、白雪に抱きつく。
「落ち着け。俺にはお前しか居ねェよ」
そう耳元で呟くと、次第に落ち着いてくる白雪。
「……ごめんなさい」
か細い、震えた声で僕に言う白雪。
「大丈夫だよ。僕こそごめん。勘違いさせる様な事になっちゃって」
白雪の頭を撫でる。
「アンタ……、私の雪紫を誑かしたのね……! 許せない!」
「お嬢?!」




