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tea break  作者: ふゆき
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七夕。

ふと見上げた先に満天の星空を見つけ、状況も忘れてつい、その見事さに見惚れる。


蒸し暑い初夏の風が雲を払い、小さな無数の煌めきが、誰に誇るでもなく夜空を彩る。


ほどよい月明かりと、煌めく星々。


うまい酒とうまい肴がありゃあ、ご機嫌さんで夜空を楽しめたんだろうが――……。



「小鳥ちゃん、おま。後先考えねえで突っ込み過ぎ。もうちょい周りを見ろ、周りをよ。他の班の連中巻き込んだらどうすんだ。加地、おまえはもっと前へ出ていい。どうにもおまえが後ろで控えてっと、ウチの連中は後先考えやがらねえからな。美濃、班長が先頭きって暴れてねえで、そこで敵とじゃれてる雌豹どもの舵取りしろってんだ」



生憎と、現場に駆り出されて戦闘の真っ最中だ。


のんびり酒を楽しむ余裕もなけりゃあ、夜空を見上げてる暇すらありゃしねえ。


タン、タン、タン、とリズミカルに響く短銃の音。


一撃必勝。確実に非武装者――強化服を身につけていない連中を無力化していってる加地の腕前はたいしたもんだが。


加地が後方支援に徹してると、ウチのガキどもは後始末を加地に任せてむちゃくちゃやりやがるからなあ。


損失が出ねえよう切り回しちまえる加地がそんだけ優秀なんだろうが、如何せん、今日は他の班の連中もいる。


ふつうじゃ出来ねえことを見せ付けられて自信を喪失されても面倒くせえし、なにより。


派手さに惹かれて真似しようとしやがる馬鹿が、ひとりやふたり出てくんのも目に見えてる。


ここはひとつ注意をくれとくかと無線を通して指示を出しゃあ、あのガキども。


他の班の連中じゃあ突っ込んでいけねえような場所まで突撃して行っちまった。


オレの指示に従う振りして陣営だけ入れ替えやがって。


加地を先頭に出しゃあなにしてもいいってもんでもねえぞ。


って、あ~あ~。敵陣営の真っ只中で展開しやがって、アイツら。


いくら強化服着けてるからって、無茶をやるにも程度ってもんがあるだろう、程度ってもんがよ。


対強化服用の大型銃に持ち替えた加地が乱射すんのに合わせ、美濃の指示を受けた雌豹どもが、怯んだ敵を、ひょいひょいと背後(・ ・ )から狩ってゆく。


ちゃっかり小鳥遊も雌豹どもに加わってやがるが……。


味方が乱射してる銃の射線上をちょこまかとまあ。


加地が絶対に自分たちにゃあ誤射しねえってな信頼があってこそだとしても、だ。


なんでああ苛烈な手段を取りたがるんだかなあ、アイツらは。


無傷でやり通せるだけの実力があってこその奇想天外さだ。


まだ尻に卵の殻をひっつけたまんまのヒヨッコにでも真似された日にゃあ、目も当てられやしねえんだがよ。


いつの間にやら自分たち用の大型バイクを引っ張り出してきた美濃が、混乱しまくる敵の中央へ突っ込んでって無差別に轢き倒しまくってるってこたあ、わかってやってやがるん……だろうなあ、やっぱ。



「総員突入。美濃班が撹乱している間に無力化した敵の捕縛、並びに現場の制圧だ」



『了解』



頭の上。のんびりと出番を待っていたオレの横で、半ば呆れた調子の野々宮が、苦い顔をして指示を飛ばす。


じっとりとした目を向けられても、だ。


オレは注意をしたし、アイツらが無茶をやり過ぎりゃあ、いつでも|止めに入れるよう《・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  》、大人しくベースで待機をしている。


文句を言われる筋合いは――……。



「兎場さん兎場さん兎場さん! ちゃんと日付が変わる前に制圧してきたんだから、約束通り、帰りはドライブデートしてもらいますからねッ!」



あんのか、やっぱ。


美濃班がほぼ単独で壊滅させちまいやがった敵陣営の後始末にわらわらと若い衆が展開してゆく中。


獲物を狩り尽くしてご機嫌さんな小鳥遊が、てこてこと人の流れを逆流してくる。


しっぽがありゃあぶんぶんぶん回してそうな勢いで飛びつかれたが、はて。



「約束なんぞしてたか?」



「むう。こないだ、こないだしたでしょ! 七夕だし、珍しくシフトがまるっと重なって帰る時間一緒だし! お正月の時行った穴場――じゃなかった、山頂まで天の川見にいきましょ~って!!」



「――……そりゃおまえ。定時に帰れたらなって話だったろが?」



事件が発生して、出動がかかったんだ。その時点でチャラだろうと思ってたらば。


小鳥遊の中じゃあ、日付が変わるまでは有効な約束だったらしい。


つーかコイツいま、『穴場』とか口走りやがったよな?


まーだ諦めてねえのかよ、外でする(・ ・ )の。



「まだ日付変わってませんもん! いまから行けばまだじゅうぶん時間が……」



「アホか。後片付けが終わるまで、帰れるわきゃねえだろう。兎場よう、おまえコレ。躾くれえはちゃんとしとけや」



「躾てソレだ。もうオレの手にゃあ負えやしねえ」



「投げるな。おまえも、後片付けが終わるまでは『お預け』だ」



「やぁでぇすう。やっと兎場さんの隙を見つけて約束取り付けたのにぃいッ!」



野々宮に襟首を掴んでポイとリリースされ、心得たもので回収にきた加地に引きずられ、小鳥遊が人混みに埋もれてゆく。


あのガキもなあ。ブレねえってえか。


そんなにしてえもんかね、外でなんぞ。



「兎場。おまえんとこのちびすけも洒落になんねえ戦闘力つけてきてんだ。暴走させてんじゃねえよ」



「させてるつもりはねえんだがなあ」



してえ(・ ・ ・ )っつってんだ。その辺の木陰でちょいと遊んでやりゃあ、満足してお行儀よくなるんじゃねえのか」



「――……なんでそういう情報が出回ってんのかが疑問なんだがな?」



「横で聞いてりゃ予想もつくわ。あのチビが無茶苦茶やんのは、おまえが横着してろくに構ってやってねえ時ばっかじゃねえか。もったいつけてねえで、煮詰まって幼児退行する前に発散させてやれってんだ」



「もったいつけてるっつーか、ここんとこてんでシフトが重ならなくてよ」



ほとんど触りっこもしてねえな、そういや。


通りで、出動がかかった時に定時前だのなんだのごねてやがったはずだ。


ったく、しょうのねえガキめ。



「お家デートでいいならおまえの気の済むまで遊んでやっから。愚図ってねえで働けくそガキ」


小鳥遊にだけ無線をつなげ、ボソッと小さく囁く。


隣にいて囁きを漏れ聞いた野々宮が盛大に顔を顰めやがったが、なに。


小鳥遊の機嫌がよくなるならまあ、この程度の揶揄、いまさらだ。


パッと顔を上げてオレを見た小鳥遊に笑いながら頷いてやりゃあ。


加地に宥められ、ぐずぐず後片付けを手伝っていた小鳥遊が、急に活き活きと働き出す。


その背中に、張り切り過ぎてバテても知らねえぞと笑ったオレの頭を野々宮が小突いてきたが。


どうせコイツだって、仔猫二匹を外聞もなく可愛がってんだ。


文句を言われる筋合いなんぞありゃしねえ。



せっかくの七夕。


恋人同士の逢瀬の日だってえなら、久々に。


小鳥遊をうんと甘やかしてじゃれるのも――……。



















※ ウサギさんは周りに感化され、どんどんと、外聞なく惚気ることに躊躇がなくなってきている模様(笑) ※




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