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tea break  作者: ふゆき
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慣れと打算と猫の耳。

若いつれ合いが出来りゃあ、いままでスルーしてた行事ごとも意味合いを持つようになって。


クリスマスだのバレンタインだの。


恋人同士がいちゃつく行事はもちろんのこと、なんでかしらんが片っ端からなんでもかんでもやりたがるオレの自称『可愛い恋人』とやらは、毎年この日になると、人の頭にネコ耳を載せたがる。


いや、違うな。


オレの頭にネコの耳を飾って遊びてえのはなにも、コイツだけじゃあない。


いつぞやのハロウィンで獣耳とやらをつけられたのがきっかけだったか。


酒につられて昔馴染みの悪ふざけに乗っかったのが先だったか。


どっちにしろ、いい酒を用意するなり書類の打ち込みの代行なりすりゃあオレが嫌がらねえのを覚えやがって、ったく。


どいつもこいつも、いそいそと寄って来たと思やあ、にこにこと嬉しそうにネコ耳差し出しやがってよ。


香乃、文コンビを振り切ってきたと思ったら、今度はコイツか。



「オリゃあ、いまから講習会の講師とやらをせにゃあならんのだがな?」



溜め息まじり。


香乃と文を撃退した今日の予定を伝えりゃあ。



「長谷川部長が去年の猫の日に兎場さんに恥をかかされたから、今年は仕返ししたいって言ってて。講習会までに兎場さんの頭にコレを乗っけられた人に、廃棄処分になる予定の装備流してくれるって」



小鳥遊が、きゃるんと可愛らしい仕草でネコ耳を差し出し、おねだりポーズになる。


どうやら、いつものお遊びじゃあなく、珍しくも損得勘定で動いている……らしい。



「装備?」



「ほら、前に強化服着てても乗れるバイク欲しいなあってなって、大型バイクの導入を検討してたことあったでしょ? 」



「あー……乗りこなせる班がほっとんどねえっつって見送られたやつか」



ちょいと前。


オレが現場までほいほい自前のバイクで乗りつけるのを見て、急行せにゃあならん現場にいち早く駆けつけられる手段が欲しいとかなんとか。


小回りのきく移動車両を買ってくれっつーて、若い連中が騒ぎ立てたことがあったっけなあ。


小型車両と大型バイクのどっちがいいかってな話になって、試験導入で数台購入したはいいものの。


小型車両じゃあたいした時間の短縮にはならず。


大型バイクの方は――強化服を着けてても乗れる代物となりゃあ、一朝一夕にゃあ扱えねほど馬鹿でかくなり、結局。


どっちもいまいちってんで見送られたんだっけか。


小型車両もバイクも、とっくに売り払ったと思ってたんだが、まだ残ってたのか。



「そうそれ。美濃班長がもし貰えたらオレ専用にしていいって言ってくれて、だから。アレ、兎場さんのモンスターバイクと大きさたいして変わんなかったし、欲しいなあ、って」



そそそ、とオレに寄り添い、小鳥遊が甘えた声を出す。


乗るは乗れても取り回しの出来ねえ連中ばっかの中。


オレが現場に投げ出して来たバイクの回収やらをしょっちゅうやっている美濃班(コイツら)は、モンスターバイクであれ平気で振り回して乗りこなす。


移動車での移動がまどろっこしい時にゃあ、バイクが一台ありゃあ、便利っちゃあ便利だが。



「――……オレの利益は?」



ごろごろとじゃれてくる小鳥遊をしばし見つめ、ぽつりと呟く。


もう何度も似たような事をやらされてんだ。


ネコの耳くれえ、いくらでも頭に乗っけてやる――が。


恥をさらすのはオレで、益を得るのが小鳥遊だけってなあ、不公平というものだ。


なにを寄越すと目線で問えば。



「晩酌の熱燗一本追加で!」



小鳥遊が、これでどうだと人差し指を立てる。


熱燗、熱燗なあ。


どっちかってえと冷酒のがいい……なんて言ってみたとて、オレの酒量を減らそうと躍起になってやがるんだ。


はいどうぞとは決して言うまい。



「もう一声」



ちろりと視線を流し、一本ぽっちじゃ足りねえと言外に催促すりゃあ、案の定。



「え~。一本追加でじゅうぶんでしょ」



可愛らしいおねだりポーズはどこへやら。


小鳥遊が、ぷっくり頬を膨らませる。


酒の量なんぞ加減してみたとていまさらだ。


どんだけ飲んでも、翌日に残すような無様な真似はしたこたねえってえのに、コイツは。


なんだかんだと口実をつけ、オレから酒を取り上げようとしやがる。


健康管理と言われちまえば反論もしづれえが、実際のところ。


コイツはオレが酒とじゃれて、テメエを構ってくれなくなるのが嫌なだけなのだ。



「オレは最近、ちゃんとおまえの言いつけ守っていい子にしてただろ?」



年末にちょいとしくじって右手のひらを折っちまい、治るまで小鳥遊に言われるまま、酒を我慢してたんだ。


やっとこ右手の骨折も治り、医者から好きなだけ飲んでもいいとの許可も出たこったし。


久しぶりに存分に飲ませろよ、と言外に含ませれば。



「ぬう。じゃあ、二本。それ以上はダメですう」



小さく唸った小鳥遊が、指を二本立ててみせる。


眉間に皺を寄せ、しぶしぶってなのがどうにも納得いかねえっつーか。



「けちくせえなあ、おい」



治ったんだから痛飲させろよ、と言ってみ たとて、肝臓がどうのとごねて、飲ませてくれやしねえ。


せめてもう一本はつけさせてやろうと口を開きかけ、けれど。



「だってあんた、それ以上飲むと、えっちぃスイッチ入るでしょ!」



むくれて唇を突き出すガキの顔を見るうち、ふと悪戯心がわいてきたのは、小鳥遊の言うところの、えっちぃスイッチとやらのせいだ。



「だぁから言ってんだが、おまえがいいなら二本で我慢しとくわ」



ちょいと目を細め、突き出された唇をつまみ、低く喉の奥で笑う。


バレンタインだっつーて、一週間ほど前に好き勝手やりやがったからだろう。



「え? え? じゃあ、さ、三本……?」



虚を突かれたような顔をして半信半疑。


指を三本立ててみせる小鳥遊の手から、ネコ耳を受け取り、ひょいと頭に乗せる。


馬鹿が。


怪我する前から忙しくて触りっこもしてなかったんだ。


焦れてんのがテメエだけだと思うなよ、くそガキが。


オレだって、それなりにゃあ欲がある。


バレンタインだっつってじゃれた日も、無茶苦茶やらかした割りにゃあ、飛ばしすぎて早々にバテやがったくせしやがって。


なんだってオレがその手の素振りを見せると、意外そうな面して慌てやがるんだかなあ。



「ん~。ま、そんで我慢すっか。んで? コレ乗っけて講習会やりゃあいいのか?」



どうせいまさら。


オレがこんな格好してりゃあ、誰かに遊ばれてんだと思われて終わりだ。


ちぃとばっか恥をかいたとて、周囲から向けられるのは生暖かい同情の視線くらいなもんである。



「あ、どうだろ。そこまで聞いてないような?」



「ま、今日は内勤ばっかだからな。一日つけときゃいっか。晩酌、ちゃんと追加で三本つけてくれよ?」



誰も見てないのを確認してからひょいと小鳥遊の唇を盗み、ひらひらと手を振って講習会の打ち合わせに向かう為に背を向ける。



「一日……ってそれ、カエラ部長に怒られません?」



なんつって声が追いかけてきたが、悪いのは長谷川だ。


よしんば一緒くたに怒られたって、こんなことで装備が手に入るならやすいもんだ。



「怒られたら後でおまえが慰めてくれるんだろ?」



振り向きざま、意味深長に親指の腹で唇をなぞってやりゃあ。


意味を察した小鳥遊の、円やかな頬がぽんと赤く染まる。


本音のところは、味をしめた雌豹どもの用意してた衣装よりゃあマシだったからだなんぞとは言う必要のねえこった。


真っ赤になった小鳥遊をその場に残し、ほてほてと会議室へ向かう途中で出くわした連中にそろってギョッとされた後に同情の眼差しを向けられたが――……。


講習会に出てたガキどもにやたらめったらウケたのは、まあ。


小鳥遊にゃあ言わんでもいいだろう。
















※だんだんコスプレへの拒絶反応がなくなってゆくウサギさん。朱に交わればなんとやら。ではなく、麻痺してるだけだったり(笑)※








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