逆さまの国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
メルは地面を空から眺めていた。
シドも空を走っている。
さっきまで地面を走っていた気がするのに、今は天井にいる。
「逆さまだね。メル。」
「う〜ん……あの地面に国があるのになぁ……困った。」
「あそこは天井じゃないの?」
「どっちも地面かもね。」
その頃、国では小さな騒ぎが起きていた。
1人の子供が空にスーパーマンがいると母親に伝えたところから始まったらしい。
様々な人が空を眺める。
ある人は、「あの少女は我々を支配しようとする宇宙人だ!空を歩ける、それが証拠だ。きっと我々の子供を攫って解剖研究でもして見た目を真似たんだろう!自転車のように見えるあれはU.F.Oだ!」と、メルを宇宙人だと主張した。
ある者は、「あの少女は天使よ。きっといずれ起こる災害を知らせにきたのよ。ああ、我が神、シリカ様。どうすればいいのでしょうか!」と、メルを天使だと崇めた。
ある子供は、「きっとスーパーマンのたいちょうだ!ぼくたちの中からえらばれしヒーローを選ぶんだ!だからいい子にしてないと!」と、メルをスーパーマンと見立てた。
と、人の数だけメルが何者かの考えがあった訳だが、数十分もすれば幾つかの、一つの考えを支持する集団が出てきた。稀に論争が起きたり、別の考えの者を自分と同じ考えに引き入れることもあった。
が、誰1人メルがただの旅人だと言うことに気が付かなかった。
その頃、なんとか国に入る方法を探していたが、諦めたメルとシドは、あの天井に浮く国と人々が何かを想像していた。
「メルはなんだと思う?」
「宇宙人とか。」
「あの国は宇宙船?なるほど。それなら天井を歩けるのも納得だね。」
「まあただの妄想でしかないし……それに、向こうもそう思ってるかもよ?」
「なんか騒がしいしね。」
と、話していると地面が夕暮れ色に染まっていることに気がつく。
夕方ということなのだろうか。
「あ、見てメル。向こうに月があるよ。」
シドの見る方向には、地面に描かれたような月が出てきていた。
「へぇ〜やっぱりこっちは空なんだ。」
「でも地面を走ってきたよ?」
「じゃあどっちも空でいいんじゃない?空なんて勝手に決められたことだしね。」
平面の空はいずれ星々が輝き始めた。
メルは、今が夜なのか朝なのか疑い始めた頃には瞼が重くなってきたようだ。
空にテントを張り、その日は眠りについた。
○
翌日の昼、国はたった二つの意見に分かれていた。
昨夜この国に来て強盗殺人を行ったメルは、本物か、偽物か。
そんな話も知らずに、メルは空を走って別の国を目指した。
議論は面白いものです。
議論をしている人も含めて。




