魂
斗馬を異世界に転移させた直後に足音が近づいてくる。
バン!
扉はノックされる事はなく蹴破られる。
蹴破った者は部屋を一瞥すると叫びだす。
「さっきの男はどこですか!」
男は扉を蹴破った事を咎めようとしていたが、あまりの剣幕に素直に答える。
「男?
あー、異世界にバスを持ち込んだボウズのことか?
一足遅かったな。
さっき異世界に転移させたぞ。」
男の言葉に扉を蹴破った者が膝から崩れ落ちる。
「おいおいおい、貴女ともあろう者がどうした。
あの坊ボウズに何か用か?」
扉を蹴破ってきた者は斗馬に声をかけていたおばさんであった。
おばさんは崩れ落ちた状態から数分後にゆっくりと立ち上がる。
「お仕事、お疲れさまです。」
おばさんは立ち上がる時に擬態を解き、本来の美しい美女の姿に戻る。
「お、お疲れさまです女神様。」
男は扉を蹴破ってきた事を無かったかの様に振る舞う女神に困惑しながらも深々と頭を下げる。
「それで彼はどこの異世界に向かいましたか?
あと詳しいプロフィールを見せて下さい。」
女神様が手を出してプロフィールを渡せと言ってくる。
「いや、いくら女神様でもプロフィールはお見せできませんよ。
昨今、プライバシーに厳しくなってて‥。
ちょっと、無理やり奪わないで下さい。」
女神様が斗馬の事が詳しく書いてある資料を奪おうとしてくる。
「大丈夫です。
ほら、渡しなさい!」
「何が大丈夫なんですか!?
勝手に女神様に見せた事がバレたら私が処罰されます!」
女神様に資料を奪われないように力を込める。
「見せた貴方が怒られるなら問題ないです。」
「問題しかありません!
女神様、お願いしますよ。
私実は謹慎明けで‥」
「謹慎明けなら丁度いいではありませんか。
休暇が伸びてラッキーと思いなさい。
あー、もう鬱陶しい!」
男との資料の奪い合いに痺れを切らしたのか、女神様が拳を男の顔面に叩き込む。
「マジですか!?」
男はまさか殴ってくるとは思わず、モロに顔面に受けてしまう。
その後、女神様はダウンした男からプロフィールの書かれた資料を奪い取ると椅子に座り、ゆっくりと資料を読みだす。
斗馬と会話をした後から、彼の顔を何度も思い出してしまう。
気になって仕事が手につかない状態だ。
何だろう、この気持ち。
彼の事を思い出すと、胸が苦しくなる。
彼の事は頭の記憶にはないが、まるで魂が記憶しているような感覚。
女神の勘が彼に逢えと訴えかけてくる。
資料の全てに目を通し終える頃には、気持ちが固まっていた。
「彼に逢いに行こう。」
女神は決心すると動きだす。




