斬新
目を開けると個室の中にある椅子に座っていた。
今まで見てきた異世界物ではいきなり草原に転移させられたり、敵がいたりなどのパターンがあったが個室なのは初めてだ。
「ふぅ。」
とりあえず個室という事はどこかの街などの中だと分かったので安堵の息を吐く。
さて、此処はどこたんだろう。
個室に椅子。
そして手の届く場所に紙が重ねて置いてある。
うーん‥‥考えるまでもなくアソコだよね。
いやぁ、なかなか斬新だ。
まさかトイレからのスタートするとは‥。
◇◆
さて、気を取り直してやる事をやろう。
異世界に来て、まずやる事といえば‥。
そう、ステータスの確認だ。
自分のステータスが分からないなど愚の骨頂。
「ステータス、オープ‥」
ドン!ドン!
ステータスを開こうとすると扉がノックされる。
完全に油断していたので小さく悲鳴を上げてしまう。
ガチャガチャ
ノックの主は扉を開こうとしている。
「あっ、開けますから待って下さい!」
鍵を無視して無理やり扉を開こうとしている人物に慌てて声をかける。
カチャ
簡易的な鍵を外す。
「悪いな、漏れそうなんだ。」
スキンヘッドで顔にキズのある男が俺を押し退けてトイレに入る。
「危ねぇ危ねぇ。」
男の声が大きいので聞きたくもない情報が耳に入る。
ん?
ここである事に気がつく。
あっ、言葉がわかる。
「ふぅ。」
安全な場所への転移、そして異世界人と言葉が通じて二度目の息を吐くのであった。
◇◆
トイレから出てしまったのでステータスの確認は後でする事にする。
ってか、何処で誰に見られるかもしれないので不用意にステータスなど開けるわけもない。
とにかく、此処が何処なのか調べないと。
俺は建物中を観察する。
木造だが、かなり広い。
カウンターのような物があって、女性などが働いている。
人はかなり多く、活気がある。
「おい。」
俺がキョロキョロと見ていると背後から声を掛けられる。
え?
声の主の気配を全く感じなかった。
いや、この声はさっきの男声だ。
すぐに振り返りたいが、男からのプレッシャーが凄い。
正直、かなり怖い。
どうする?
武器がないから戦うのは無理だ。
そもそも背後を取られているから逃げるのも無理そうだ。
詰んだ。
異世界に来て、まだトイレにしか行ってないのに‥。
俺は覚悟を決め、ゆっくりと振り返る。
「おー、すぐに出てくれてありがとう。
危うく漏らすとこだったよ。」
どこぞの世紀末に出て来そうな男がニッコリ微笑むのであった。




