そうだ! 青華ちゃんも入ってみない、アイドル部?
そこでクラスメイトから突っ込まれてしまう。しかしそういう言い方をされるといかがわしく聞こえるから止めて欲しい。
「神崎君アーク使っていいから俺たち全員で戦おうぜ」
「ちょっと待ってくれよ、さすがにバスケでそれは無理だって! ヤバいって! 嘘だろ~!?」
なんかよく分からないまま一人対みんなのバスケになってしまった。
噂の転校生は記憶はないけど勉強はすごく出来て、アークはないけど運動神経はいい、そんな最終兵器の名に恥じないスペシャルな転校生だった。
学校の日程は終わり放課後、青華の席に信也と姫宮は集まり興奮気味に姫宮が喋っている。
「青華ちゃんすごかったね! もしかしてバスケしてたんじゃない?」
「どうだろうな。それに詩音だってすごかった。運動してるの? 正直驚いたよ。あんなに動けるなんて思ってなかったから。それに真剣な詩音初めて見たからさ、かっこよかったよ」
「え~、そうかな~」
「ちょっと意外だったけどね」
信也も女子の試合はたまに見てたけど(たまにね!)姫宮はダンス練習の一環でトレーニングはしているので実はスポーツが上手い。普段の雰囲気と比べるとキリっとしてるっていうか。彼女にはそういうところがある。
「面白キャラでおちゃらけてることも多いけどガッツはあるんだよ、姫宮は」
「えっへん!」
「へえ」
姫宮は両手を腰に当て鼻を高くしている。それに青華は意外そうにつぶやいた。
「意外か?」
「というよりも、君がそう言うことがさ。二人は本当に仲がいいんだなっと思って」
「ん?」
「彼女のことをよく知っていないとそうは言えないだろ? そういうことさ」
「腐れ縁みたいなものだよ、思えばここに来て初めて会ったのが姫宮だったしな」
「私は最初じゃないけどね」
「なんでそういうこと言うの?」
「ふふふ、ほんとに仲いいな」
青華は楽しそうだ。それはそれでなによりだ。
「そう言えば話してなかったっけ? 私アイドル部に入ってるんだ」
「アイドル部?」
「うん。そこでアイドルになるためにボイトレとかダンスレッスンとか練習してるの」
「そうか、それで体力が。アイドル、なるほど。詩音ならきっと立派なアイドルになれるよ」
「ほんとに~? ありがと。私がんばるよ」
「俺はコメディアンの方が向いてると思うけどな」
「ひどい!」
「ははは」
「そうだ! 青華ちゃんも入ってみない、アイドル部?」
「え、私が?」
「おいおい、姫宮」
まだ転校初日、アークアカデミアだって不慣れだろう。そこへいきなり部活の勧誘というのは熱心だが相手に嫌がられるかもしれない。廃部寸前でもあるまいし。
「いきなりは困るだろ」
「えー。でも青華ちゃんきれいだし私はいいなと思うんだけどな。ねえねえ、どうかな?」
「どうかなって、そうだな」
青華は少しだけ考えてくれてるようだが答えは初めから決まっていたようだ。
「お誘いは嬉しいが、止めておくよ。私はそういうのに疎いし。それにそういうのは向いてないと思うんだ。可愛げのある性格じゃないから」
その答えに信也も内心で頷いた。いきなりアイドル部はどう考えても敷居が高い。誘われて行くのはかなり少数派のはずだ。
「関係ない! 行こう!」
「聞けよお前!」
なのになんでそんに自信があるのか。
「だって~」
「だってじゃないだろ、断られたんだから諦めろよ」
「じゃあさじゃあさ、見学でもどうかな? 決めるのはそれからでも遅くないと思うんだよね」
「見学?」
「そうそう! 見るだけ、見るだけだから~」
そう言うと姫宮は青華の後ろに回り込み車いすを動かし始める。
「見学見学~」
「なあ! 本当に見るだけなんだよな? 見学だけで帰れるんだよな!? 詩音!?」
「見るだけ見るだけ~」
「なぜ答えないんだ!?」
「はあ、俺もついていくか」
こうも堂々と拉致をしていく行為が未だかつてあっただろうか。歴史的な目撃者として放置は出来ない。
信也は姫宮に連れて行かれる青華を見守りつつアイドル部の部室へと訪れる。部屋を開けると壁が一面鏡でフローリングの床、ダンススタジオに着替えが終わっている部員たちが準備運動をしていた。




