それでは自己紹介をお願いします
姫宮の友達である女の子が教えてくれる。だからみんなざわついてるようだ。しかし普通ではない、季節違いもあるがここはアークアカデミアだ。そこに編入してくるというのは相当変わっている。
「まさか」
「信也君、これって」
「ああ」
姫宮も察したようだ。アークアカデミアなんて特異な学園に編入してくるような特別な人物なんて。
「分からん」
「分かんないね」
まったく分からない。いったい誰なのか。
教室内は転校生の噂で持ちきりとなり最終的にはアークアカデミアの最終兵器なんて話まで出てくる始末だ。それだけ盛り上がりを見せているというわけだ。意味は分からないがみんな興奮している。
時間が来たのでみんな席に着く。信也も席に座り登場を待つ。扉が開かれ牧野先生が入ってくる。今日もキリっとした瞳が眼鏡を光らせた。
「皆さん席に着いていますね。今日は皆に新しいお友達を紹介します」
(おおー)
噂は本当だった。最終兵器か!? そんな期待や怖れから教室内で声がざわつく。みなの視線が入口に集中した。
「入室してください」
先生に呼ばれ転校生が入ってくる。
「ん?」
車輪の回る音がする。車いすと共に水色の髪の少女がゆっくりと教壇の横に移動する。車いすを回し正面を向ける。
その子は他でもない。牧野先生が黒板に名前を書いていく。
そこにあるのは花崎青華の文字。
「それでは自己紹介をお願いします」
「はい」
彼女は落ち着いた様子で話し出した。
「初めまして、花崎青華といいます。異能を扱う学園ということで不慣れなところがあるかと思いますがよろしくお願いします」
小さく頭を下げる。彼女の挨拶のあと皆から拍手が送られる。当然信也も拍手で彼女を迎えた。
「彼女には記憶喪失がありわけあって学園で保護することになりました。そのため彼女にはアークはありません。ですがこのクラスの一員であることに変わりはなく、皆さん仲良くしてあげてください。それでは花崎さん、空いている席へどうぞ」
「はい」
教室には椅子のない席があり青華はそこへ向かっていく。車いすで移動するためみな席を動かし道幅を作ってあげる。
「すみません、ありがとう」
青華は自分の席へと着いた。
その様子を信也は意外そうに見つめていた。まさか噂の転校生が彼女とは、一ミリも予想できなかった。
それからホームルームが終わり授業開始までの空き時間、転校生お決まりの質問タイムに突入する。彼女の周りは女生徒に囲まれいろいろ質問されている。クラスメイトに囲まれる様子は賑やかだが青華は大勢と話すのが苦手のようでちょっと困った感じだ。牧野先生の言うように記憶がなくうまく答えられないし、それならそれで今度は同情されるので苦笑いするしかない。ついには姫宮に助けを求めるように視線を向けていた。
「花崎さん久しぶり~」
それに気づいた姫宮が近づいていく。それで彼女もちょっとホッとする。彼女としても顔見知りの方が話しやすいだろう。
「姫宮さん花崎さんのこと知ってるの?」
「ちょっとね~。実は花崎さんと話したいことあって、いいかな?」
「ええ~」
「ごめ~ん!」
「じゃあね花崎さん。またね」
「うん、ありがとう」
姫宮の機転のおかげで囲っている女子たちも席に戻っていく。彼女たちも悪気があったわけではないのだが。
「ありがとう姫宮さん。ちょっと、私は人付き合いが苦手のようだ、特に大勢で来られると」
「気にしなくていいよ。最初は緊張しちゃうしね、大丈夫大丈夫。そういうことならみんなだって分かってくれるよ。ね! 信也君!」
「なんで俺!?」
このタイミングで呼ばれてびっくりする。
「だって信也君だって花崎と話したいことあるでしょ? 聞きたいこととか」
「それはまあ」
それは確かにある。あれからずっと彼女のことは分からなかったから聞きたいことはある。姫宮なりに気を使ってくれたのか。
「よう。元気そうでよかったよ。それに転校生で会うなんて驚きだ」
「あの時はありがとうな、神崎君。今でも感謝しているよ」
あの時はどうなることかと思ったが無事な姿を見れて良かったなと思える。それに彼女の制服姿も新鮮だ。




