家族がいるなら捜索願とか出してるはずだけどな。なに、すぐに見つかるさ
映像データにあった指示を出していた声。不鮮明で聞き取りづらかったが声紋なら割り出せる。真相を解く鍵は社長になるだけじゃない。
錬司はこれも想定して準備をしていたのだ。
錬司が実験映像と会議の音声データを再生する。同時に聞こえる音声から一致するものを割り出していく。
するとヒットしたものが出てきた。
「そんな」
それも一つ二つではない。いくつもの声紋が一致していく。
「半数近くの人間があの場にいたってこと? これじゃ会社ぐるみと言われても否定できないわよ」
「役員はあくまで部外者だ。とはいえまずいことに変わりないがな。これでうちも無関係ではいられなくなった」
役員の半数近くが関わっているのが分かった以上レオンカンパニーも同罪だ。
思っていた以上に闇は大きい。これがどこまで繋がっているのか不気味な空気が漂う。
「なぜ第二がエフェクトの武装化をしているのか、その目的が知りたい」
「役員に聞いてみる?」
「素直に割れるなら楽だがな」
「工夫がいるわね」
ようやく尻尾を掴んだのだ。ここで下手に動けばその尻尾を放しかねない。それはまずい。なにか手を打つ必要がある。
「男二人組が襲ったという車いすの少女」
そこで思い出す最初の事件。加害者から事件を探っていたが観点を変えてみるのも時には大事だ。
「まずはそこから探ろう」
次は被害者から。なぜ彼女が襲われたのか、彼女の素性が分かればそこから導けるかもしれない。
錬司は机に両肘を立て顎を手に乗せる。その目は鋭く実験映像のエフェクトを見つめていた。
「そういえばさっきなにか言ってなかったか?」
「いえ、別に。気にしなくていいわ」
*
朝に小鳥がなぜ鳴くか、早朝の空気はなぜ新鮮に感じるのか。早起きすればなぜ三文の得なのか。朝にはいいことがいろいろあるけれど。だけど確かに言えることがある。
眠い!
「ふわあ~」
「大きなあくびだね信也君、あんまり寝てないの?」
「最近変な夢見ててな、夜中に目が覚めるんだよ」
「今朝のニュース見た?」
「なんで無視した!? 俺に興味ゼロ!?」
いつもの登校風景、通学路を信也と姫宮は一緒に歩いている。眠いけれどいつも遅刻ぎりぎりで走っているわけではないのだ。とはいえまた大きなあくびが出る。
「ニュースといえば花崎さん、あれからなにか聞いてるか?」
そこで気になることを聞いてみる。
花崎青華。第二地区でエフェクトを付けた男たちに襲われていた彼女は今アークアカデミアで保護されている。そこらへんは生徒会に任せっきりで後のことは聞いていない。特に騒ぎがあったわけではないし無事だとは思うが問題は彼女には記憶がない。保護して終わりってわけにはいかずどうしているのか心配だ。
「私も聞いてないな、どうしてるんだろ青ちゃん。お家見つかるといいけどね」
「家族がいるなら捜索願とか出してるはずだけどな。なに、すぐに見つかるさ」
「そうだね」
姫宮はにこっと笑い頷く。そう深刻に考えなくてもいい方向に進んでいくだろう。
むしろ気がかりなのはなぜ襲われていたか、だ。
そんなこんなで二人は学校に着き教室に入る。なんだかざわついてる。なにかあったのだろうか。
「ねえねえどうかしたの?」
「あ、姫宮さんおはよう。実は転校生が来るみたいだよ?」
「転校生!?」
「転校生? アークアカデミアに?」




