これはまだ見本だろうけどこんなものを目指しているなんて
「確認するがいつもこうかのか?」
『ずいぶん厳重ね、うちもセキュリティには力入れてるけど常時警備員は置いてないわ。甘いかしら』
「突破する。他の警戒を頼む」
『了解、気を付けてよね』
ここが重要なエフェクト保管庫というのは理解しているがこれは明らかに厳重が過ぎる。それだけあそこにはなにかある。あれではあそこに大事なものがあると告げているのも同じだ。
必ず確認しなければならない。
錬司は廊下の壁をノックする。
「ん?」
「なんだ?」
「確認してくる」
警備員の一人がこちらに歩いてくる。それを待ち受け、曲がり角から来たところで口を抑えて回り込む。そのまま首を締め上げる。男はもがくも次第に意識を失っていった。
「どうした? なにかあったのか?」
警備員を廊下に寝かせ錬司は透明なままもう一人の警備員に向かう。背後に回り込み同じように口を押さえつけ意識を奪っていった。
『手際がいいわね、普段からしてるの?』
「くだらない冗談を言うなら閉じていろ。こっちは完了だ」
さきほどの意趣返しか、根に持つタイプのようだ。
『大丈夫、警報はなし。まだバレてないわ』
警備員を寝かし錬司は入口前に立つ。目の前にはエレベーターの扉のような分厚い金属製の扉がある。壁の右側に埋め込み式パネルがありそこで承認を行うようだ。
「開けれるか?」
『私を誰だと思ってるのよ、コンピュータの魔法使いよ? こんなのちちんぷいぷい……っと』
最新鋭のセキュリティを誇るはずの第二アカデミアの扉だが彼女の呪文にかかればあら不思議、簡単に開いてしまった。
「古いな」
『うるさい』
彼女の助けを借りながら錬司は禁止エリアへと侵入する。ここからはまったくの未知の世界だ。ここに第二が隠しているなにかがある。
真実の扉、それが開かれた。
『ちょっとちょっと、聞いてた話とずいぶん違うじゃない』
「予想通りか」
そこは保管庫ではなかった。研究室だ。さらには置かれているものが異彩を放つ。
天井から伸びるアームで固定されているのは片腕のエフェクト。その前腕にはアサルトライフルの銃身が装着されていたのだ。腕の外側に銃身がくっ付いている。
明らかな兵器だ。それに銃を持って戦うのではなくこれは装着している。手は空手のま
まだ。
錬司の予想は当たった。第二アカデミアはエフェクトを教える学園の裏側でエフェクトの兵器利用を目的とした研究、開発を行っていたのだ。
『これは、そんな。嘘でしょ』
「なにがだ」
特にショックを受けているのは伊吹の方だ。同じエフェクト研究の、さらにレオンカンパニーと繋がりの強い第二がこんなことをしていたのは残念だろう。だがその驚きようはそれだけではない。研究対象そのものにも驚いている。
『エフェクトそのものを兵器化してる。分かる? このアサルトライフル、弾倉がない。エフェクトで銃弾を作ってそれを発射する構造なのよ』
「可能なのか?」
『無理。レベルの限界を超えてる。宗作さんは作っちゃったけど』
「なるほど。親父の再現か」
ここでもレベル。エフェクトにとってそれだけ重要なものらしい。
それで改めて見るがこのエフェクトには弾倉がない。弾がないのだ。それをエフェクトで作り出しそのまま発射する。無限ということはないだろうがエフェクトが働く限り撃てる構造だ。
『聞いた話だと犯人はエフェクトで腕力を強化して通常の兵器を利用していた。でもこれは違う。エフェクトが武器も、その運用も兼ねてる。完全なる兵器よ。エフェクトは有機金属。細胞分裂と同じで自己再生が出来る。それを利用して銃弾を生産し発射する。悪名高きマザーオブエフェクトはそれでミサイルを撃ちまくってたしね。工場を兼ねた空中要塞だったから』
恐ろしい話だ、こんなものが悪用されれば大勢の犠牲者が生まれてしまう。
『これはまだ見本だろうけどこんなものを目指しているなんて』
伊吹の怒りが声から伝わってくる。
錬司は別の部屋へと行く。そこにはいくつものコンピュータが並びその一つを起動した。当然本人認証が求められ画面にパスワード入力を求められる。
「魔法使い、出番だ」
『魔法使いなら帰ったわよ、古すぎるからね』
「おい」
『分かってるわよ』
伊吹のハッキングによりロックを解除、錬司はUSBメモリを差し込む。ファイルを漁ると同時にコピーしていく。
すると気になるファイルを見つけた。開いてみるとエフェクト実験の映像記録のようだ。
『なにこれ』
「再生する」
錬司は真剣な面持ちで再生ボタンをクリックする。




