この班では現在レベル向上を目的として開発を行っています
それは尤もな理由だった。会社創設者の子供が親の会社が作った学園を視察したい。どこに違和感があるだろう。無論このタイミング、突然だというのは不自然ではある。とはいえ今まで姿を見せなかったドラ息子とはいえ息子は息子、その存在感と立場は無視できない。彼にはレオンカンパニーの相続権があるからだ。もしかしたら未来の上司、無下にはいかない。
よって、錬司からの要望を第二は受け入れ錬司は第二アカデミアの応接室へと案内されていた。普段はしない社交用のスーツを着込み慣れないネクタイが気になる。伊吹に言われ着てはいる高級スーツだ、今まで着たこともない。上手く着こなせているか自信はないが伊吹曰く似合っているとのこと。馬子にも衣装ということわざ通りここは服装の力を信じよう。
それで待つこと数分、応接室の扉が開けられた。
紺のスーツに身を包んだ四十代ほどの男、理事長という立場だがかなり若く見える。黒い髪をビシッと決めて日本のサラリーマンといった風貌だ。
「ようこそエフェクトアカデミアへ。私は理事長とレオンカンパニー役員を務める小野田と言います。宗作元社長のご子息とご対面できて光栄です」
ソファから立ち上がり錬司は彼から手渡された名刺を受け取る。そこには小野田道弘と書かれている。
「父は知っての通り犯罪者だ、だとしても?」
「痛ましいことです。ですが彼の発明は人類にとっての宝です。原発の開発者によって日本は大きな痛みと悲しみを負いましたが同時にその発明によって生活基盤は大きく発展しました。ようは使い方です。なにより彼の提唱したエフェクト理論は革新的でありましたしその理念自体は今もなお多くの人に根ざしています。その一面を私は今も尊敬しています。あまり人前で言えないところもありますがね、はは」
宗作が作った会社の理事というだけあって彼を尊敬しているようだ。自分よりも詳しそうで嬉しそうに話す。
「そうか。そう言ってもらえて父も喜んでいることだろう」
「そうだといいですね。では錬司さん、学園を案内しましょう。宗作さんの残した功績の一旦をお見せしますよ」
小野田に誘われ錬司は後をついていくことにした。
廊下を歩いていきまずは教室を見て回る。当たり前だがここは学校だ、教室では生徒たちが授業に望むところから別の場所では実際にエフェクトを装着し体験しているところ。一般的な学業に加えエフェクトを中心とした異能学習。他ではお目にかかれない第二アカデミアならではの学校風景が広がっている。運動場では生徒たちは腕や足にパワードスーツをつけサッカーをしている。その一人がサッカーボールを蹴るがそれはすごい威力で蹴った本人や周囲も興奮している。
「どうです? すごいでしょう、彼らはスポーツ推薦で入学したわけではないく一般生徒です。それでも部分的な運動神経はプロ並みですよ」
「全員か?」
「装着している者はすべて。とはいえ扱いに個人差はありますが出力、そのスペックにおいてはまったく同じです」
見ればサッカーの上手い下手はあれど蹴りの威力や走る速度は皆速い。ロボットを装着してする運動風景は近未来的でとても新鮮だった。
錬司と小野田は止めていた足を再開させ次へと移る。
ここではエフェクトの研究も行っている。実験棟ではレオンカンパニー本社にも劣らない施設を備え科学者たちがエフェクトの実験を行っていた。
「彼らがしているのは?」
「この班では現在レベル向上を目的として開発を行っています」
レベル。その言葉は伊吹も言っていた。それぞれの異能はそれぞれの基準がある。アークならランクのように。それに対応するのがエフェクトではレベルということのようだ。そこは後でいい、まずは学園の話だ。
「また別の班では付与する異能自体も開発を行っており、同じレベルでもより効率的かつ効果的な能力を開発していますね。たとえば以前でしたら全身の力を上げるエフェクト開発に取り組んでいましたがそれを腕力に限定することで成功しました。同じランクDではありますがレベルはそこからさらに細分化されるんです。効果が限定的であればあるほどレベルを低く抑えることが出来る。そうした両面からエフェクト開発を行っているんです。別の棟では今ある性能でのエフェクト製品の開発も行っていますよ。うまくいけば業務品として応用も効くでしょう。本社では携帯性や性能向上を主にしているでしたか」
「一定の成果は出しているそうだ」
「それは素晴らしい。我々も遅れを取らないようにしなくては。はっはっは」
スムーズな案内紹介と話の中に自然と取り入れられる冗談。以前は営業職だったのか話慣れている。賢条とはまだ違った形で外向きの装いが上手い。
「ここはあくまで学園だ。俺のような若い世代に異能を伝えそれが新たな時代を作ってくれればそれでいい。そういう意味でここも意義は果たしている」
「これはこれは、まだ十代だというのにしっかりされている。わが校の生徒たちも見習って欲しいですね、ははは」
笑う小野田をよそに錬司はエフェクトの研究室を見渡す。開発目的は違えど雰囲気は本社のそれとさほど変わらない。白衣を着た者たちが電極で繋がれたエフェクトにコードを打ち込み別の者はパソコンに向かって難しい顔でキーボードを叩いている。きっとエフェクトコードの調整だろう。
どちらも本社のそれと変わらない。ここにいる者たちが裏でエフェクトの軍用化を進めているとは思えない。もししているなら別の場所だ。




