どうして襲われていたんだ? やつらはいったい
拳銃からロケットランチャーに持ち帰る。銃弾とは比べ物にならない一回限りの暴力。それを肩に担ぎ狙いを定める。
「逃げろ!」
二人は後ろを向けて走り出すが、逃がさない。
「おらよ!」
引き金を引き勢いよく引き発射されたロケット弾は男たちの足元に着弾、そこから生まれる爆風は二人を吹き飛ばした。大人二人が紙のようにふわりと浮かび地面に激突する。大けがしないように位置は考えたがさすがに苦しんでいる。戦えるはずがなく、勝負ありだ。
「なにもないところから武器を、こいつ、ランクDだぞ」
「くそ、武器を取り出すなんて卑怯だろ」
「これがアークの力だエフェクト諸君、残念だったな。はっはっはっは!」
「すごい! 信也君悪者みたい!」
「くそ!」
「おい待て!」
男二人は立ち上がると逃げ出した。捕まえに行きたいが倒れている女の子の救助が一番だ。悔しい気持ちはあるが信也は振り返り女の子を見る。とりあえず無事なようで安心する。地面に横になる彼女へと近づいた。
「えっと、大丈夫か?」
「そうだよ、怪我とかない?」
「ありがとう」
姫宮が抱きかかえ車いすに移すのを手伝う。どうやら怪我はないみたいでよかったが表情は疲れているようだ。
「どうして襲われていたんだ? やつらはいったい」
「信也君、そんなことより警察だよ」
「ああ、そっか」
学園内のトラブルは警察ではなく生徒会や学園側が対処していたからそういう認識が欠けていた。環境とは恐ろしい。
「いや、警察は止めてくれ」
「どうして」
普通に考えれば警察のはずだが当の彼女がそれを拒絶する。なにか後ろ暗いことでもあるのか。彼女は気まずそうでなにやら言いにくそうにしている。
その口が、小さく開いた。
「記憶が、ないんだ」
「え?」
その発言に信也の方が記憶を失ったように思考が一瞬真っ白になる。
記憶喪失。初めて出会ったことに動揺してしまう。
「記憶がないって、たとえば?」
「どうして私がここにいるのか、私がなに者なのか、思い出そうとしても分からなくて」
「そんな」
それで警察に行くのを嫌がったようだ。まずは自分で自分の状況を整理したいのだろうが。
「それこそ警察に行くべきじゃないのか? もしかしたら行方不明者情報に君がいるかもしれないし」
「そうかもしれないがもう少し待ってほしい。自分が何者なのか、ある程度知っておきたいんだ」
本人がそう言うなら無理には言えないが。とはいえ心配な話だ。
「名前も分からないの?」
「名前……」
姫宮が心配そうに覗き込む。名前、それが分かるだけでも大きい。
聞かれ彼女は考え込む。表情は暗いままだが、その目が小さく開いた。
「名前、そう、名前だ。私の名前は、花崎青華。でも、別の名前でも呼ばれていたような……」
なんだか複雑そうではあるが名前だけでも覚えていたのは幸いだ。記憶喪失の行方不明者を探すにしても名前の有無で一気に容易になる。
「花崎青華さんか、よかったじゃんか思い出せて」
「うん!」
彼女の名前は判明した。なら次は自分たちかと信也は自己紹介していく。
「俺の名前は神崎信也だ」
「私は姫宮詩音だよ、よろしくね」
「ああ、ありがとう二人とも。よろしく」
彼女の顔にも少しだけ明るさが戻る。記憶喪失なんて不安でいっぱいだろうしそこへ知らない男たちに襲われたのだ、とても怖かったに違いない。
しかしその表情に怯えの色はなく、むしろ何か考え込んでいる。
「神崎、信也」
「ん?」
信也の名前になにかあるのか青華は考えているようだがすぐに手放した。
「いや、すまない。なんとなく聞き覚えがある気がして。きっと気のせいだ」
「そうか。でも名前が分かるのはよかったよな、名無しの権兵衛じゃあれだし。自分探しにしたって名前が分かるならすぐ分かるんじゃないか? 手がかりは掴めるだろ」
「とりあえずこれからどうしよう? このままじゃまた襲われちゃうよ」
「それはまずいな」




