あのフード男、あいつはどうすんのよ
フォースアカデミアの生徒会役員。その上級役員トライリッター、彼女を能力なしで倒すやつだ。そんなのがまだ二人もいる。それに加えておそらく上であろう会長も控えている。
第一の強さ。それはまだ正確には分からないが想像以上かもしれない。天王寺のアークアカデミアもやつらに負けられた。天王寺がここまで張り詰めてるのもよく分かる。
「やつの名前は不明だが自らを勝利主義者、ヴィクターと名乗っている。それと能力は判明している。ランクA、オルタナティブ・フュージョン。並行世界にいる他人の能力をコピーするアークだ」
「オルタナティブ・フュージョン?」
「信也君のアークに似てるね」
確かに。信也が並行世界の自分をコピーするのに対しやつは他人をコピーする能力を持っている。異能がなくても強いのにランクAまで。それに姫宮の言った通り、似ている。けれど違う点もある。
「似ているが、たぶん違うな」
「そうなの?」
一見同じ能力に見える。どちらも無数にある並行世界にいる人物からコピーするのだから変わらないように思えるが微妙に違ってそれが大きく異な。
「俺の能力は並行世界にいる自分の能力と姿をコピーする。いいか、能力をコピーすると能力と姿をコピーするは全然違うんだ。やつは姿までコピーは出来ない。よって、健康な姿をコピー出来ない。怪我を負っても無傷な状態をコピーして全回復、とはいかないわけだ」
「そうか!」
それが違い。これは大きな差だ。どんな怪我をしても瞬時に治せるのは心強い。これがあるとないとでは大きな違いだ。
「信也君すごいじゃん」
「ありがと。でもそれがそうとも言い切れなくてさ」
ここだけを切り取れば信也の方がすごいんだろうが相手が上手な面もある。
「俺は並行世界の自分をコピーできる。それだけでかなり汎用性が高いが、あくまで自分だけだ。それに比べやつは他人。幅がさらに広い。例えば俺がパラレル・フュージョンを使っても天王寺のパラレル・シフトは使えない。使える俺が並行世界にもいないからだ」
「並行世界って無数にあるんでしょ? 私なんでも出来ると思ってた」
「なんていうかな、並行世界っていうのはそれこそ無限にあると思うけど、すべての可能性があるわけでもないんだよ。たとえば無限の賽の目があるサイコロがあるとするだろ? そのサイコロを振ればどんな数字も出てくるけど三角や丸は出てこない。なんでも出せるわけじゃないんだ」
「なるほどなー」
無数とか無限とか表現はいろいろあるが、それは全部を意味しない。
「だがやつなら出来る。これはかなり危険だ」
「そうだ」
天王寺が同意してくれる。天王寺はヴィクターと戦ったことがある、彼の危険性は彼女が一番分かっているはずだ。
「どんな致命傷を負っても一瞬で元に戻るふざけた耐久性ではそこの男が勝るだろうがやつの汎用性はこいつをすら超える。強力なアークホルダーだ。とはいえ無条件で使えるわけではない。能力を視認する、もしくは別の条件はあるようだ」
「ふざけてねえよ」
「なるほど、さすがに最初から全部は無理か」
「現状確認が取れているのはガンスリンガーのみ。候補としては私のパラレル・シフト、スペース・ジャンプ。他にも使用可能なアークはあるはずだ。異能への洞察力や戦闘力の高いやつだ、完璧に使いこなしてくるはず。気を抜くな」
天王寺が並べた異能だけでもう最強に見える。一対一は危険だ、出来れば三人、最低二人は欲しい。それだけの強者だ。
「それと第一の生徒会長だが現在は不在のようでトライリッターの一人が代理を務めているようだ。これが私の知っている内容だ」
「なるほどな」
今まで知らなかっただけで天王寺はそんなのと一人戦っていたのだ。なんだか知れば知るほど彼女のことがすごく思えてきて信也としてはなんか嫌な気になる。なんというか悔しい。
天王寺が語った敵の内容。まだ謎は多いが脅威なのは十分理解できた。
「そんなやつがどうしてアーク大運動会に襲撃してきたんだ? 目的はなんだったんだ?」
「おそらく、我らの分断だ。あのままことが進んで全部長が生徒会に合流、体制が強化されるのを防ぎたかったんだろう。勝利主義者を名乗るだけあって用意周到なことだ」
「てことは、俺たちの動きを監視してる?」
「だろうな。だからこそ次の標的はこの次元だ」
なんてことだ。強い上に隙も無い。計画性を持ってるなんて完璧過ぎやしないだろうか。少しは手加減して欲しいくたいだ。
でもそれだけ相手も本気ということ。本気で戦争をしているのだ。
アカデミア戦争。その言葉の重さを感じる。
「敵の大部分がフル装備の兵士と怪物、さらに仮面ヤローと同じ生徒会役員が十一人。これは手ごわいな」
正直彼我の戦力差は明らかだ。みんなそれを痛感しているんだろう、天王寺の話の後会議室は無言になる。突破口の見えない迷宮にここは重苦しい雰囲気になっていた。
「そういえばなんだけど」
そこで琉衣が口を開いた。
「あのフード男、あいつはどうすんのよ」
「あ」
忘れていた。




