最初の世界で、生徒会長が聞き出したようなんだが
「ていうか姫宮はいいのかよ、アイドル部の練習。今日もあるんだろ?」
「だって気になるじゃん! 私だってここの生徒なんだし」
「それはそうだが」
彼女なりにアークアカデミアの行く末を気にしている。それも当然といえば当然と言えた。
第一アカデミアが攻めてくる。これを知っているのは信也と姫宮、そして生徒会だ。今までは天王寺の妄言だと思っていた人も少なかったようだがランク至上主義によって従っていた。今では真実だと思い協力してくれているようだ。これもなんだかんだで彼女の人望なのか。以前の生徒会も使命感や団結力はあった。また部長たちにも事情は話している。戦闘に参加することはなくても協力はしてくれるはずだ。
雨が降って地、固まる。結果的にいい形に収まってくれた。
味方が整ったのはいいことだ。反面敵のことは謎だらけ。それに襲撃に対してどう対抗するのか、それも決まっていない。きっとそれをこれからの会議で話し合うのだろう。
そう考えている内に扉の前にたどり着いていた。
「失礼しまーす」
ノックして扉を開ける。中にはすでに生徒会役員全員が集まっている。それぞれが独特の雰囲気を放ち副会長の藤原時雨は紅茶を飲んで穏やかだが天王寺は入室するなり睨みつけてくる。その背後に立つ宍道琉衣は穏やかな笑みで二人の入室を歓迎し、壁際に立つ真田深優は目をつぶり腕組みして一匹狼の佇まいだ。かと思えば小笠原奏音はソファで横になり携帯ゲームで遊んでる。
(……児童館?)
「遅いぞ」
「だから言ったじゃない、遅れて来るって」
時雨が天王寺に言う。未来観測ですでに知っていたようだ。
「仕方がないだろホームルームが長引いたんだ、牧野先生が悪いって言うのかよ」
「皆さんこんばんはー」
「あら姫宮ちゃん、こんばんは」
「はい、こんばんは。姫宮さん」
「こんばー」
姫宮の挨拶に深優以外のそれぞれが挨拶を返す、相変わらず姫宮の社交性の高さには驚かされる。
「みな、席につけ。会議を始める」
「これで全員なのか?」
「一応な」
信也と姫宮はソファに座る。会長はいつもの席で深優は立ったままだ。そこへ琉衣が紅茶を持ってきてくれる。お礼を言うとニコっと笑ってくれた。良い人だ。さすがの奏音も第一への会議となればゲームの電源を切り座り直す。琉衣も会長の背後に戻りこれで全員定位置についた。
「それではこれから会議を行う。議題はもちろん第一アカデミアのことについてだ」
天王寺が言うことでこの場の雰囲気が一層引き締まる。その様はさすがと言うべきで今まで戦ってきた歴戦の戦士というか、風格がある。今なら分かる、この身が引き締まるほどの存在感は本物なんだということを。それだけ頑張ってきたということも。
飄然としていた信也の心も自然と引き締まっていった。
「まずは話のおさらいだ。これはあくまで私個人が経験してきた知見に過ぎないが、この世界でも訪れる未来もそう大きく変わらないはずだ。まず、これからそう遠くない未来、第一アカデミアが攻めてくる。無差別の殺戮だ」
言葉の深刻さが信也たちの心を重くする。
無差別の殺戮。そんな物騒な言葉普通なら聞くことはない。それが実現した時のことを考えてみる。楽しい学校生活が悲惨な現場になるのは言うまでもない。絶対に起こしてはならない、そんなことは。
「それは私が並行世界で何度も経験してきたからだ。この世界でもまず間違いなく起こる。これの阻止、もしくは対抗して撃退するのが我々の目的だ」
なんとかしなければならない。そのためにもまだ余裕のある今の内に作戦を練っておかなければ。
戦争はすでに始まっているのだ。
「今までの共通事項として時雨の未来視では第一の襲撃を察知出来ない。それが意味するところはやつらが並行世界から来ており現行世界の未来しか見れない時雨では予知できなかったということだ」
「ということは、この世界の第一アカデミアが直接襲ってくるわけじゃない、ということだよな?」
「無関係と切り捨てるのは早計だがな。並行世界にあるいくつもの第一アカデミア、その一つが事を起こしているのは間違いない」
第一は第一でも自分たちが知っている第一とは限らない、ということだ。信也だって第一アカデミアが軍隊を持ってるなんて聞いたことないしどこかを襲撃したなんてあったら大問題だ。それに天王寺が戦ったという第一の者たちだが調べでは所属していない名前の人物が多いらしい。違う学園だ。
「なんでそんなことするんだろ、だっておかしいよ。酷いじゃんか、そんなの」
姫宮が悲しそうな顔で視線を下げる。彼女の意見にはみなが同感だ。
「姫宮の言う通り、酷い話だ。それだけ目的がないとおかしい。やつらの狙いは? 並行世界のアカデミアを、それも何度も襲うなんて異常だ」
「そうね。未来、敵の目的は分からないの?」
時雨が尋ねる。それが分かればこちらも動きようがあるかもしれない。相手の裏をかくのだ。
質問され天王寺は考え込むが、心当たりがあるのか表情を若干歪めた後口にした。
「最初の世界で、生徒会長が聞き出したようなんだが」
「そうなのか!?」




