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ぎゃはははは! いよいよだ、次のアカデミア戦争が栄えある百回目

 深優はまだジャッジメントにやられたダメージが残っている。頭には包帯が巻かれガーゼが当てられている。それでも彼女の目は真剣で信也を鋭く睨みつけてきた。


 彼女を守るめ、自分の怪我も顧みず彼女は戦う気だ。


「なぜお前がここにいる? なにもするなと命令したはずだぞ!」

「…………」


 そんな彼女を、天王寺ただ一人が冷たく突き放す。


「なんで」


 他ならぬ、彼女のために来てくれたのに。


「なんでそんなことが言えるんだ! こいつは、あんたを心配してたんだぞ? あんたのためになりたいって、いつも一人のあんたの支えになりたいって頑張ってたんだぞ!」


 深優と話したのは少ない時間だったけれど、それでも彼女がどんな気持ちで戦っているのかは知っている。


「だからどうした、それで私の足を引っ張ってなんになる」

「あんたには人の気持ちが分からないのかぁああ!」


 なんで? 天王寺だって深優のことを大切に思っているはずなのに。なぜそんなことが言える? 


「止めろ」


 怒るが、それを止めたのは深優自身だった。


「なんでだよ、あんなこと言わせてていいのかよ? どうしてあんたは会長を庇おうとするんだ?」


 不思議だった。普通自分のことをぞんざいに扱う人物を守ろうなんて思わない。それが上司だとしても戦ってまで庇おうとはしない。


 だから聞くが、


「そんなの、私が知るか」

「なに?」


 答えはさらに不思議なものだった。


「そんなの知らないよ。でも、そうしたいってどこかで思うんだ」


 深優の顔がどこか吹っ切れて、自分でも馬鹿なことを言っていると分かっている風だ。


「なんでだろうな。初めて会った時他人とは思えなかった。こいつが語る未来も別にすべてを信じてたわけじゃない。でもさ」


 深優は半歩足を出し構えを取る。いつでも飛び込める体勢を取り、顔を引き締めた。


「こいつは私の友達なんだ。だから、これは私の勝手だ。気にするな、イレギュラー」


 戦う気だった。相手がどう思っているかなんて関係ない。ただ自分がそうしたいから。


 出所不明の心の声に従って、彼女は天王寺の前に立っていた。


 それだけじゃない。


「一人だけいいかっこしてんじゃないわよ」

「すみません会長、遅くなりました」

「はあ、はあ。いや、視えてはいたのよ? ただ分かっていても対処できないことってあるじゃない? これでも最速で来たんだからね?」


 小笠原奏音。宍道琉衣。藤原時雨。他の四天王も続々現れ、天王寺を庇うように立ち塞がった。


「なんで」


 その光景を、誰よりも驚いていたのは天王寺だった。ランク至上主義で無理矢理従わせてきただけの部下。この世界の天王寺にとって彼女たちはそれだけの関係のはず。


 なのに彼女たちは来てくれた。仲間を守るために。


「どうして……」

「ごめん、未来」

「え」

「今まで、苦しめて」


 彼女の疑問に、深優は振り返ることなく言い返す。続けて時雨たちも答える。


「一人で全部背負わせちゃって、ごめんさいね。先輩として不甲斐なわ」

「私も同じ気持ちです。ですが会長、その分働きますので命令してください」

「いやー、説明だけされてもにわかに信じられなかったけどこうして目の前に出てきたらねー、信じるしかないし。ま、私も本気でやるわよ」


 それは実際に敵が現れたということもあるだろう。だけど彼女たちの言葉に宿る思いはそれだけじゃない。


『安心しな、未来。私たち、ずっと友達でしょ?』

『もう、ほんっと未来ったらお子様ね』

『未来、あなたはもっと自分に自信を持つべきです』

『任せなさい。私は先輩なんだから。困った時はいつでも頼っていいのよ?』


 かつて言ってくれた言葉が蘇る。仲間としての友情がそこには込められていた。


「みんな……」


 それは、天王寺にも伝わっていた。


「どうして」

「無駄なんかじゃなかった、ってことだろ」


 それがなぜなのか、それは分からないけれど信也も感じていた。


「俺もな、正直思ってたよ。他人とは思えないってな」


 初めて彼女を見た時から、既視感のようなものを覚えていたのだ。


「そうだったの?」

「うん」


 姫宮や周りには言っていなかったが。


「う、うう」


 天王寺は泣き出した。要らないと捨てたもの全部。


 だけど、本当に欲しかったものたち。


 それが戻ってきたのだ。


「天王寺」


 彼女が諦めたもの、それは本当なら捨ててはならないものだったけれど。


「俺は諦めないぜ! 仲間を信じることを。たとえそれがどんなに困難な道だったとしても! 諦めなければ夢は叶う。自分を信じる心、それが、人間の可能性なんだ!」


 彼女の戦いは一度離れた絆を結びつけ、この世界で結実する。


「そんなこと言ったって……」

「なんで話してくれなかったんだ?」

「え」


 この世界には信也がいる。みんながいる。


「どうして、俺には教えてくれなかったんだ。第一アカデミアが襲ってくるって」

「だって、そんなの言っても信じてなんて」

「そんなのやってみなければ分からないだろう!」


 彼女はもう一人じゃない。


「俺がいただろう。俺に一言いえばいいじゃねえか、助けてくれって!」

「信也……」

「力になってやるよ、いくらでも! そして今度こそ勝つんだ。第一アカデミアに!」


 そして、今度はみなで戦うのだ。真の敵と。


「守るんだろ、この学園を。みんなで」

「うん……」


 天王寺を仲間たちが囲む。絆は終わらない。たとえ世界を隔てても。苦難の道でもその先できっと交わる。


 これからはもう一人ではない、みんなで戦う番だ。


 本当の敵、第一アカデミアと。

*


 聞こえる、笑い声が。この次元とは違う遥か彼方で。勝利に狂い、勝利に酔った哄笑が。


「ぎゃはははは! いよいよだ、次のアカデミア戦争が栄えある百回目」


 聞こえる、笑い声が。この次元とは違う遥か彼方で。勝利を求め、勝利に憑りつかれた喝采が。


「そんじゃ勝たせてもらおうか、第三アカデミアさんよぉ。ぎゃっははははは!」


 笑い声の主は言う、勝利を。勝利を。我らが頭上に栄えある勝利を。

 その先に、真の栄光を掴むため。


「アカデミア戦争の、はじまりだ」

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