「「ガンスリンガー!」」
校舎前の広場で神崎とヴィクターは向かい合う。まるで決闘のように。神崎の真剣な目つきでヴィクターは笑ったような眼差しを向ける。
「そこの小娘が別の次元に逃げるっていうのはいただけねえなあ、不確定要素は排除すべきだ」
「てめえは? 狙いはなんなんだ?」
仮面に隠れた素顔、その全身から放たれる邪悪な雰囲気は只者ではない。
「第一アカデミア生徒会、トライリッター、ヴィクトリアン。長いからヴィクターでいい」
「トライリッター?」
「うちらの生徒会上級役員のことさ。その三人の内の一人が俺ってわけ」
この男こそ真田を殺害した張本人。神崎にとっても仇の男だ。
「お前さんは?」
「アークアカデミア生徒会会長、神崎信也」
「へえ! 生徒会会長かよ! ヘェ〜、そうなんだ〜」
ヴィクターは興奮気味に、おどけた様子で話しかけてきた。
「ガンスリンガー、ランクDだな。銃器を取り出すアークか。それだけなら移動できる武器庫だがお前は腕がいい。百発百中も能力のうちか? いいねえ、誇らしいぜ」
「てめえの誇りなんざ知るか、気色悪いんだよ」
「ギャハハハ! そりゃそうだ、俺たちは敵同士。馴れ合う間柄じゃねえ。それじゃ始めようか」
空気にスイッチが入った。戦闘の再開の合図に天王寺も起き上がっており鞘に手を添える。次は不意打ちは食らわない。おまけにニ対一。倒せる。倒す。この男を、ここで。
「腕のいいランクDと経験不足のランクA、凸凹だかいいコンビだ。でもなあ、それでも俺には勝てねえよ」
天王寺は周囲を警戒する。いない、敵はこの男ただ一人。なのにヴィクターは余裕だ。
会長と天王寺を前にしてもなお、この男は勝てる気でいた。
その根拠は自信、自分なら勝てるという強さへの信頼。
それを、ついに発揮する。
「俺は! ランクA並行世界・他者融合発動! 並行世界にいる他人の能力をコピーする。もらうぜ、お前の力!」
「なに」
「こいつもコピー能力者!?」
三人の男の中にもコピー能力者はいたがあれはランクBだった。だがこの男は違う、次元に干渉するコピー能力。
ランクA、オルタナティブ・フュージョン。並行世界にいる他人の能力をコピーする男。
ヴィクターの能力を聞くなり神崎が動いた。
「「ガンスリンガー!」」
同時にヴィクターも動く。両者は二丁拳銃に持ち替え連射する。いくつもの銃声、そこに別の音が混じる。
「銃弾同士がぶつかってる!?」
二人の弾道はまったく同じ。銃弾が空中で衝突し攻撃と迎撃を行っていた。
次にアサルトライフルに持ち替えると円を描くように走り引き金を引く。二人とも同じ動きであり相手の射線を躱していく。
天王寺は二人の流れ弾をもらわないよう姿勢を低くする。
加勢するか? 伊吹の場合は視認した相手をコピーする能力だったためあえて隠したがこの男もそうだとは限らない。それなら自分も参戦すべきだ。なによりまた見ているだけで失うなんて嫌だ!
「パラレル・シフト!」
天王寺は抜刀した。奇しくも同じ並行世界を扱う者としてその力を見せる。並行世界の攻撃をこの次元に重ねるという不意打ち。空間を超越したまさに高次元からの攻撃だ。
だが、ヴィクターは天王寺が抜刀すると同時に跳んで回避していた。
(読まれた!?)
さらにヴィクターは跳ぶとワイヤーガンで神崎の攻撃もやり過ごす。手を放し二丁拳銃に変え着地するなり銃撃してくる。神崎は走って避け天王寺はディメンション・エスケープでかわす。同じランクAとはいえこちらは+、その分アドバンテージがある。
天王寺はヴィクターの銃弾をかわし再び現れる。
「!?」
直後、周辺を爆風が襲ってきた。
(手榴弾!? 面制圧?)
ピンポイントな銃撃では天王寺に逃げられる。そのためヴィクターは手榴弾を周囲に投げたのだ。その爆発に当てられ倒れてしまう。
「くう!」
「天王寺ぃ!」
手榴弾の爆発により土煙が漂う。それで互いの姿がわずかに遮られた。
天王寺はすぐに起き上がる。ただ爆発に煽られただけだ、まだ戦える。
「大丈夫です!」
相手の機転は凄まじい、だが所詮は当てずっぽう。運だよりだ。
勝てる。コピー能力は便利だが弱点がある。どれだけ優れていても本人を超えることは出来ないということだ。ならば本人+αが相手になると苦戦するしかない。
そのαこそが自分であると天王寺は理解していた。だから攻める。邪魔をすれば会長が決めてくれる、そのためのアシストでいい。
天王寺は柄を掴む。他ならぬ会長からもらった刀を握り、アカデミアからもらった力と共に振るう。
「はあああ!」
この学園を守るため、失った仲間のためにも!
「え」
(発動しない?)
天王寺の刀は空振り、空を切っただけだった。
ヴィクターの目がにやりと笑う。その手はすでに天王寺に銃を向けていた。
(どうして? なぜアークが発動できないの!?)
ヴィクターの銃が発砲した。
天王寺は倒れ、覆い被さった彼を見る。
「会長!?」
「うおおお!」
神崎はすぐさま振り返りヴィクターに発砲する。銃撃はヴィクターの腹部に当たり、さらに全身に撃ち込んでいく。
「ば……」
血を飛び散らし、ヴィクターはその場に崩れた。
「や、た……?」
慎重からか、実感は薄いが確かにヴィクターは倒れ血を流してきる。起き上がる気配もない。
深優や学園のみんなの、仇を取った!
「やりました、やりましたよ会長!」
被さる神崎から這い出る。敵の幹部を倒した、それもただの幹部じゃない。深優を撃ったトライリッターだ。
この戦いが始まってから初めての大金星だ。ようやく第一アカデミアに一矢報いてやった。
「え」
しかし、喜びは一瞬だった。
「会長、血が」
彼を抱えた手に温かなぬめりを感じる。見れば手の平は真っ赤に染まっていて、神崎の背中も赤いシミを作っていた。
「私を、庇って……?」
ヴィクターに撃たれた時避け切れていなかった。神崎は額に汗を浮かべ、辛そうな表情で笑みを浮かべた。




