『こちらは、第一アカデミアです。あなたたちには、死んでもらいます』
「うおおおおお!」
神崎はワイヤーガンを握り振り子のように移動していた。ワイヤーガンを壁面に打ち込んでは捨て、新しいワイヤーガンを打ち込み学園内を進んでいく。その最中足元にいる敵たちをアサルトライフルで倒していく。銃を撃ち鳴らし神崎は着地した。いくつもの校舎が立ち並ぶ通りにはまだまだ多くの敵がいる。
「てめえら一体なんなんだ!? なぜこんなことをする!?」
「敵だ、撃てぇ!」
「ち」
聞いて答えるわけもなく返事とばかりに返されるのは銃弾ばかりだ。神崎は正確に敵を射貫き悪魔にはショットガンを撃ち込む。
「なんだこれ? こんな怪物までいるのかよ」
こんなものは見たことがない。如何にアークアカデミアが異能という特別な場所でもこんなものは聞いたこともない。
「ぐ、うう」
離れた場所でうめき声がする。まだ意識があるようだ。神崎は倒れた兵士に銃口を突きつける。
「おい、お前たちの目的を言え」
「ふ、ふふ」
ヘルメットで顔は見えないが中からくぐもった笑い声が聞こえてくる。
「おい、聞いてんのか?」
さらに銃口を近づけるが答えるどころか怯える様子も見せない。
「第一の理想のため。それに貢献できないのなら、この身を捧げるまで」
「なに?」
そこで兵士は手りゅう弾を取り出した。すぐにその場を離れ地面に飛び込んだ。
「ランクアップのためにぃい!」
その言葉の後爆発が彼の声と命を消し去った。風と熱を背後に起き上がり背後を見るがすでに彼は絶命している。
「ち、一兵士でも死を選ぶなんて、なんだこの士気は。それにランクアップだと? なに言ってやがる、アークのランクアップは不可能なはず」
異常だ、カルトの信者にさえ思えるほどの忠誠心と熱狂を感じる。
『こちらは、第一アカデミアです。あなたたちには、死んでもらいます』
「ふざけたことを」
いちいち癇に障る。見上げればさらなる揚陸艇がこちらに向かっている。
「お呼びじゃねえんだよ!」
ロケットランチャーを出現させ構える。狙いを定め発射、着陸前に撃墜させた。火を上げながら墜落する揚陸艇を地面が迎え入れる。
「あとどれだけいるんだ」
倒しても倒してもキリがない。こうしている今だって被害は拡大している。
「いたぞ! アークホルダーだ!」
「ちぃ!」
休みことも悩む暇すらない。すぐに新手が現れ銃撃戦となる。すぐに建物の影に隠れ応戦する。
地の利はあるが数で圧倒されてしまう。まずい。このままでは。
さらに敵の増援まで現れる。
「く」
焦燥が銃の引き金を引く指を早ませる。
「うおおおお!」
その時だった。男の怒鳴り声とともに凄まじい衝撃音がこの場を襲った。
「ダブル・サンダー・ヘッド!」
二つの電流が暴れ、うなり、敵兵を吹き飛ばした。
「お前、田口」
突如として現れたのは不良連合を仕切っているいわば生徒会の宿敵だ。神崎も幾度となく戦い手を焼いてきた相手だった。
「お前どうして」
「どうしてだと? ボケ! そんなの当たり前だろ!」
いつも敵対していて相手だ、そんな男の救援は疑問でしかないが、田口に怒鳴り返される。
「俺はこの学園の生徒だぞ! こんなことされて黙ってみていられるか! 指示は聞かねえぞ? そんな俺だと思うか? むしろやってやろうじゃねえか、こいつで暴れさせてもらうぜ!」
学園一の問題児でもここの生徒だ。学園を襲われたとあっては黙っていられない気持ちは同じ。
彼もまたアークホルダーなのだ。
「まったく。避難指示は出てるんだがな」
結局こちらの言う通りにはならない男に苦笑する。
「これだから不良は厄介なんだ、知らねえぞ」
「てめえに気遣われる筋合いなんてないんだよ!」
「言えてる」
まったくもってその通り。所詮水と油、交じり合わないのが道理。
でも、今は正直感謝していた。
「ありがとよ」
「ふん! ここはいいから別の場所行け」
「おう」
神崎は別の場所を目指して走った。まだまだ敵はいる。犠牲者はどんどん増えている。少しでも減らさなくてはならない。その焦りから表情は固く引き締まり苦しそうに歪んでいた。
けど、走る最中神崎の口元は少しだけ緩んでいた。
自分は、一人じゃない。この学園を思い守ろうとしているのは自分たちだけじゃない。気持ちは一つ。
その思いに導かれ、神崎はワイヤーガンを使いスイングしていった。
*
外の振動が窓を揺らす。爆発が起こったことをここにいながらでも感じさせる。
天王寺はソファに座りながら心配そうな表情を浮かべ窓を見つめていた。
気になる。外の状況、みんなの安否。不安ともどかしさで居ても立ってもいられない。
そんな自分に言い聞かせるように隣に振り向いた。未だに怯え俯いている先輩の姿に天王寺は表情を暗くする。どうすればいいのか分からず自分も俯いてしまう。
どうして今こういう状況になっているのか、そこに天王寺は気づいていた。二人の思いを察している。それはここにいて同じ時を過ごしてきたから。前までの自分ならそのまま流されていた。優しさに甘えていた。
でも、今は違う。
「ありがとうございます」
感謝の言葉は別れのあいさつだ。
「未来が見えるのって時に残酷ですよね、怖い気持ち、分からないですけど、理解できます。でも、時雨さんはそれで怖気づく人じゃない。たとえ絶望の未来だとしても最後まで争う意気地を持ってる強い人です。それを、私はこれまでの時間で知っています」
「…………」
天王寺からの言葉に時雨は俯いたまま黙っている。
「それでもここにいるのは、私を戦いの場から離すため。ですよね?」
振り返る。時雨は両手で頭を抱えていたが、その手をゆっくりと下ろした。それは肯定の証だ。
「未来が見える時雨さんはともかく、それを察して即座に私を護衛につける会長もさすがですよね。私最初分からなかったですもん。でも違和感はありました。それで分かったんです。この状況で得をしてるのは誰なのかなって」




