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メーデー、メーデー! 操縦が利かない! 墜落する!

 天王寺は聞くが答える前に神崎は生徒会室にある大きな窓を目指し走り出した。窓を突き破って外へ出るとワイヤーガンで移動していく。建物から建物へ、まるてターザンのように宙を駆けていく。瑠衣は空閑転移で消え奏音は部屋から飛び出した。


「未来」


 深優は天王寺を見る。


「時雨さんのこと、お願い」

「真田さん!」


 深優も割れた窓から飛び出していった。彼女のアークで跳躍しそのまま地面に着地する。


 未来は時雨とともに残された。反論する余地もなく、背後で怯えている先輩を見る。


「時雨さん、大丈夫ですよ」


 彼女の背中をさすりながら宥める。しかし未来が見える人になんの慰めになるだろう。天王寺は自分の無力さに歯噛みした。なにより。


(私も、戦わなくちゃならないのにッ)


 自分だけ蚊帳の外にいるようで、それが悔しかった。


*


 神崎たちが出て行ったころ、学園長室の窓際で長である賢条幹久は敵の居城を見上げていた。うねりを上げる巨大な悪魔を見るその顔にいつもの笑顔はない。


 扉が開けられる。入ってきたのは牧野教員であり慌てて駆け寄る。


「学園長、第一アカデミアからの襲撃です。現在すでに警備隊が動き出しておりα1もいつでも出動できます」


 これは明らかな攻撃であり犯罪だ。めちゃくちゃとさえ言える。とはいえ敵の狙いはさておき防衛はしなくてはならない。


「いや、α1の出動はなしだ。それと迎撃態勢も通常部隊だけでいい」

「? よろしいのですか? このままですと生徒が死にますが」


 上司からの中止命令に牧野の目が意外そうに曲がる。


「今はまだ出す札ではない」

「了解です。では、我々は?」

「ここは様子を見たい。それに、これほどの行動だ。生徒の独断とは考えづらい」


 賢条は見上げたまま顎に手を添える。


「大いなる実験、か」


*


 生徒会室から飛び出した精鋭はばらけ広範囲に散っていく。着地した深優はそのまま地面を蹴り電光石火の速度で疾走した。


「なんだあれは!?」


 敵から声が上がる。その速度は人のそれではない。第一の連中も見つけるも銃口が間に合わず間合いに入られる。


「遅い!」

「がああ!」


 深優は蹴りを入れ一撃でノックアウトしていく。蹴られた敵は全員吹き飛んでいき地面や壁に激突。そうして深優は新たな敵を探して疾走していく。


「きゃああ!」


 別の場所では木の陰に隠れていた女生徒が第一の兵士に見つかってしまう。銃口を向けられるも恐怖で身動きが取れない。兵士は引き金を引いた。


「させません!」


 そこに琉衣が現れる。女生徒を掴み空間転移を行う。気づけばそこはアークアカデミアの外、町の中だ。人通りの多い場所に出る。


「あ」

「大丈夫ですか?」

「あ、あの」

「礼はいりません、それでは」


 唖然と立ち尽くす女生徒をあとに琉衣は再び学園に戻る。そこには未だに多くの兵士、そして悪魔としか思えない怪物が見たこともない武器で赤い光弾を撃ち出している。


「許せませんッ」

「撃て! 能力者だ!」


 琉衣目掛け一斉に銃弾が放たれる。人一人に撃つには過剰過ぎる弾幕が迫りくる。避けようのない大量の銃弾。

 だが、それは当たらない。


 ランクA+、スペース・ジャンプで敵の背後に回り込みナイフを投げつける。さらに投げたナイフを手元に空間転移、悪魔の側面にワープしその首筋に突き刺した。すぐに離脱する。


「卑劣な輩にもてなすものなどありません」


 まさに一瞬の出来事。複数の敵を瞬殺し琉衣は再度スペース・ジャンプで姿を消していった。


「あーもう! なんなのよあんたたちは!」


 正門とは反対にある門。その道の中央に陣取り小笠原奏音は苛立っていた。


「この学園は自由にゲームできて楽園だったのに! それを襲うとかいい度胸してんじゃない! それにね、なんだかんだここは気に入ってんのよ。大切な人だっていんの! それをあんたたちは傷つけた、人まで死んでる!」


 ここまで怒りを表に出す彼女は珍しい。普段抑えていた分の好意が反発する。


「言っておくけど、手加減しない私はやばいわよ?」


 門から続々と現れる武装兵。それだけでなく壁面から下りてきた悪魔も銃口を向けてくる。


「能力者か、気をつけろ! 撃て!」


 一斉に銃弾が撃たれ無数の弾丸が奏音を襲う。

 しかし、その銃弾は彼女の前で静止した。


「なんだと」

「そんなの許すわけないでしょうがバーカ! 私はランクB、ドッペル・シャドーを発動していたのよ!」


 奏音の周囲には自分の影が広がりその影に触れたため弾丸は動きを止めていた。さらに影は伸びここにいる全員の影と重なる。


「う、動けない……!」

「私は自分の影を自在に操れる。そして私の影と重なった影も操れるのよ」


 奏音は手を上げ、思いっきり下げた。その動作に合わせ兵士たちの顔が上を向き直後地面に思いっきりぶつけられた。その衝撃にヘルメットは割れ意識を奪う。それにより周囲にいた敵を全部一瞬にして無力化していた。


「まだよ!」


 さらに悪魔の影も操り触手が持つ銃口を自分に向けさせる。そのまま発砲し悪魔を自害させた。頭を吹き飛ばされた悪魔の体がばさりと倒れる。


『こちらは第一アカデミアです。あなたたちには、死んでもらいます』

「あーもううっさいわね! なによあの放送ふざけてんの!」


 上空から響き渡る拡声器の音は絶えず不穏な言葉を繰り返している。上空にいる魚はさらに揚陸艇を出しこちらに向かってきている。


「させないわよ!」


 奏音は影を伸ばし揚陸艦の影をキャッチしコントロールを奪取。そのまま地面に急降下させる。


『メーデー、メーデー! 操縦が利かない! 墜落する!』

「落ちなさい!」


 飛行揚陸艇の第二陣、いくつもの船が墜落し爆発していった。炎を巻き上げその中心で影を操る少女は戦意を滾らせる。

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